アダム・オンドラ いよいよヨセミテへ向かう 「学校が終わり。そして今、ドーン・ウォールが僕を呼んでいる」(2)
――ヨセミテ渓谷でどのくらい過ごすつもりですか?
そうですね、一ヶ月半といったところでしょうか。実際どのくらい登れるかは、まだわかりませんが。
――キャンプ4に滞在するのですか?
少なくとも最初はキャンプ4で過ごして、ヨセミテ特有の雰囲気に慣れるつもりです。その後、寒くなってきたら、それはその時ですね。
――ヨセミテでのクライミングを視野に、何か特別なトレーニングをしましたか?
ヨセミテをターゲットにしてのトレーニングと呼べるものは、チェコに砂岩を登りに行った一日だけですね。オフウィドスを何本か登ったのですが、いや~、かなり面白かったですね。最初はひどくまごついたのですが、最後にトライしたルートでは、そのエリアの最難の一本だったのですが、ちょっとしたコツをつかむことができて、少し自分の納得できるクライミングができました。最初はあまりにも力だけで登ろうとしていたのですよ。
――最近はノルウェー、フラタンゲルで5.15の花崗岩ルートを登りながら多くの時間を過ごしたわけですが、そこでの経験をヨセミテの壁にうまく活かせると考えますか?
必ずしも、そうはいかないでしょうね。全く違うものだと考えていますよ。例えば、同じ花崗岩だからといっても、フリクションも同じだとは言えないでしょうね。ノルウェーの花崗岩のフリクションは申し分ないものですが、ヨセミテの岩のフリクションは、特にエル・キャップのそれは、あまり期待できないのではないでしょうか。もちろん鋭いエッジは使えるでしょうが。
――どんなルートにトライすることを楽しみにしていますか?
もちろん最初にトライしてみたいビッグな一本は“The Nose(VI 5.14)”ですね。次に“The Salathé(VI 5.13b)”。そして“The Dawn Wall(VI 5.14d)”です。そのなかで私にとって最も重要なルートは“The Salathé”です。ワンデイでのオンサイトを狙っているのです。そのためにも、先ずはもっともクラシックな一本、“The Nose”をトライしておくのは賢明でしょうね。
――マルチでの経験はありますか?
アルプスとかマダガスカル島とかで、マルチピッチ・ルートを登ったことはあります。でも、ハンドジャムとかフィンガーロックとかを使うトラッドなマルチとなると、それほど経験はないですね。でもそのようなテクニックも、なんとかすぐに身につけてみますよ。
――平山ユージが1997年にサラテのオンサイトに挑戦していますが、彼に何か事前情報をもらいましたか?
それはもちろんユージとはサラテについて話したことはありますよ(笑)。例えば、ヘッドウォールはワンピッチではなく2ピッチで登ったほうがいいとか、ロープの流れが悪くならないようにどのスリングを長くすべきか考えながら登らなくてはならないので、オンサイトにはかなりの用心が必要だとかいったことを教えてくれました。そりゃ悔しいでしょ、ロープがドラッグしてオンサイトを逃したりしたら!
――エル・キャップで最初のオンサイトクライミングに成功することは、あなたにとってどのような意義を持つのですか?
その点については、あまり考えたことはありません。まあ、そこに面白そうな岩があって、どうせロープをつけて登るのなら、オンサイトが最良のクライミングスタイルなのだから、それを狙う、といったところでしょうか。で、そうと決めたら、有名ルートをターゲットに選ぶのも、まあ自然でしょう。しかし実際、モンスターオフウィドスだけは大変恐れています。