最新クライミング用語集

常通の外来語は英語。英語以外はカッコ内に国名を入れた。(俗)は俗語。
イラスト=北澤千絵

*この記事は『CLIMBINGjoy No.2 2009年2月号』掲載記事をもとにしています。

 

【あ】

アイソレーションエリア isolation  area  クライミングコンペでの、選手の隔離場所。

アーケ arque(仏)→クリンプ

アッセンダー ascender ユマール、ブロッカーなど、フィックスロープを登るためのギア。

アッパー upper 靴の上部。底以外の部分。

アブミ →エイダー

アビュー a  vue(仏)→オンサイト

アルパインクライミング alpine  climbing 山岳登攀。ヨーロッパ・アルプスのような大きな壁(氷雪壁を含む)を登って山の頂上に立つ、というのが基本。

RP 「レッドポイント」の略。またはオーストラリア製スモールナッツの製品名。

アレ aller(仏) 「行け !」「がんばれ !」を意味するコ-ル(かけ声)。

アレート arete(仏) 岩の飛び出た部分が縦に長く続いたもの。ドイツ語で「カンテ」と呼ばれることも多い。日本語では凹角の反対で「凸角」。英語ではどちらも「コーナー」。

アンダークリング under  cling アンダーホールドを、手のひらがクライマー側を向いた状態で持つこと。

アンダーホールド under  hold 下側が持てるようになっているホールド。「アンダーカット」ともいう。

 

【い】

EB フランス製のクライミングシューズ。1970年代後半から 80 年代前半まで長期にわたりクライマーに愛用された。いま手にすると、底のあまりの硬さに絶句。  

 

【え】

エイダー aider 人工登攀に使う携帯用の縄ばしご。金属製のプレートがステップになっているものと、テープスリングが縫い合わされたものの 2 タイプがある。

エイト環 8 の字形をした下降器。

エイドクライミング aid  climbing 「フリークライミング」の反対語。「アーティフィシャル・エイドクライミング(人工登攀)」の略。

SLCD フレンズ、キャメロットなどバネ仕掛けのカム。「spring-loaded  camming  device」の略。

エッジ edge 縁、へり、角(かど)。または角のあるホールド。

エッジング edging クライミングシューズの使い方の基本形。特にインサイド(親指側)のエッジングは小さなフットホールドでも安定して立つことができる。ある程度底の硬い靴が有利。

ATC 「air  traffic  controller」の略。リードのビレイによく使われるディバイス。ラペルも可能。

 

【お】

オーバーハング over  hang 垂直以上の壁。単に「ハング」ともいう。

オフウィドゥス off-width ウィドゥス(幅)がオフ(この場合「常識から外れた」の意味)サイズのクラック。フィストより広くてチムニーより狭く、登りにくい。

オブザベーション observation ルートの下見。オンサイトするための重要な作業。コンペでは通常、6 分間が与えられる。もちろん岩場では、誰かが登らない限り、1 時間でも半日でも見ていてかまわない。

オープンハンド open  hand クリンプに相対するホールドの持ち方。指を伸ばした状態(まっすぐに伸ばしているわけではない)でホールドを持つこと。ポケット、外傾ホールドなどで有効。

オポジション opposition 相対する 2 方向の力。

オンサイト onsight 初見。または初見で(テンション、フォールなしに)完登すること。

 

【か】

外傾ホールド 主に、エッジ状ホールドでありながら手前に傾いていて、指の掛かりが悪いものをいう。エッジのないものを「スローパー」と呼ぶ。

解除 終了点に達し、セルフビレイがとれたことを意味するコール。「ビレイ解除」の略。終了点が整備された 1 ピッチのルートであれば、ロワーダウンすることが多いので、このコールの必要はない。

ガストン gaston 縦ホールドを、親指を下にして持つこと。語源は、かの伝説的名ガイド、ガストン・レビュファ。一説には、レビュファがクラックを観音開きで登っていた写真があったことによるらしい。

カチ(俗) カッチリしたホールド。主に小さめのエッジホールドに使う。

ガチャ(俗)→ギア

カチ持ち(俗)→クリンプ

カチラー(俗) カチに強い、あるいはカチ持ちしかできないクライマーを呼ぶ。

ガバ(俗) ガバッとつかめるホールド。英語では「バケット(バケツ)」。

かぶっている(俗) 前傾している。反対語は「ねている」

カンテ Kante(独) 凸角。アウトサイドコーナー。

完登 登りきること。フリークライミングの世界では、テンションやフォールなしで登りきることを意味している。

観音開き(俗) クラックの場合は、ジャミングを知らないゆえの間違った技術であることが多いが、体の近くにあるふたつの縦ホール。

ガンバ(俗) 「がんばれ」の略。

 

【き】

ギア gear 用具。

キョン(俗) 片足のひざをインサイドに曲げて安定させる。前傾壁で有効。語源はマンガ『がきデカ』のギャグ『八丈島のきょん』。二子山に集まるクライマーによって87年ごろより使われ始めた。「池田(功)ステップ」と呼ばれた時代もあった。英語では「ドロップニー」。

キンク      ロープのねじれ。エイト環を通るとできやすい

均等荷重(可動分散)複数の支点に等しく荷重がかかるようにする方法。支点が不安な場合に使用される。支点が強固な場合には、メイン+バックアップとすることが多くなった。

 

【く】

クイックドロー quick-draw →ヌンチャク

クライムダウン climb  down ロープにぶら下がらずに、自分の力で(フリーで)下りること。ある程度登ってからクライムダウンして、あらためて登り直しても完登であることに問題はない(コンペでは地面まで下りることはできない)。

グラウンドアップ ground  up ラペルによるボルト設置などのルート整備をすることなく、面から未知のルートに挑むこと。開拓、初登のスタイルについて使われる。グラウンドアップによるオンサイトのフリー初登は、フリークライミングにおける最高のパフォーマンスといえよう。「カリフォルニアスタイル」とも呼ばれる。

グラウンドフォール ground  fall 地上への墜落。略して「グラウンドする」などと使う。よく「グランドフォール」と言い間違えてしまうが、これでは「偉大なる墜落」となってしまう。

クラッシュパッド crash  pad ボルダリング用衝撃吸収パッド。昔「はボルダリングマット」と呼ばれていたが、出世して呼び名もカッコよくなった。これの出現によってボルダリングが安全になったことは事実だが、逆につまらなくなったと感じる人々もいる。

グルーイング gluing シカなどのグルー(接着剤)を使って、ホールドを作る、あるいはホールドを補強すること。

クラッグ crag 岩場。ビッグウォールでないものを指す。

グリグリ Gri  Gri ビレイディバイスのひとつで用途は幅広い。トップロープのビレイには最高。リードのビレイには最初、慣れが必要だが、幅広く使われている。アッセンダーと組み合わせると、フィックスロープの上り下りがスムーズにできる。

クリーンクライミング clean  climbing 岩を傷つけないクライミング。主にチョックのみでクラックを登ること。

クリップ clip 主に、ロープをカラビナに通すことをいう。「フィンガークリップ」と「バックハンドクリップ」がある。

クリンプ crimp ホールドの持ち方のひとつ。指の第二関節を曲げ、第一関節は曲げず、むしろ反らせるようにして、指先で支える。小さなエッジに有効。

グルーブ groove 一般に、コーナーより角度の広い凹角。水の浸食などによってできた浅い溝など。

グレード grade 岩場のルートにつけられた難易度。国によってさまざまな表現があり、ややこしい。日本はアメリカの方式を採用していて、かなり定着している。ヨーロッパ帰りのクライマーはフランス式をよく使う。

 

【け】

ケミカルアンカー chemical  anchor ボルトの径より大きく開けた穴とボルトを、2 種混合型のグルーによって接着させる。手間はかかるが高い支持力が得られる。

ゲレンデ Gelande(独) 本来は単に「エリア」のことだが、日本では大きな壁に対して、身近な練習場を指す言葉として使われていた。フリークライミングにおいては、過去にゲレンデと呼ばれていた岩場自体が目的となっているので、この言葉はあまり使わない。

限定ルート フェイスルートの場合、ボルトがおおよそのラインを指定していて、これにクリップしながら登れば、あとはどういうラインで登ってもかまわない。しかし設定者が、使ってはいけない部分を設定することがあり、これを「限定ルート」と呼ぶ。柱状節理の岩などで「左右の凹角とカンテを使わないでフェイスのみで登る」などはわかりやすいが、「常にコーナーに正対して登る」「右奥のホールドは 1 回だけ使うこと」など常軌を逸したものもある。

懸垂下降 →ラペル

 

【こ】

鯉のぼり(俗) 壁に対して体を真横にするもので、上の手でホールド(かなりのガバ)を引き、下の手で壁を押すという、一種のオポジションである。これに関しては大阪の東秀磯の独壇場であり、力自慢のクライマーであっても通常は数秒しかできないものだが、彼の場合、5 分は楽にできるという。ただ、このムーブを必要とするルートは現在なく、また将来的にもないと思われる。よってクライミング用語とはいえないが、実践するクライマーはけっこう多い。

細かい(俗) ホールドが小さいこと。

ごぼう(俗) ロープをつかんで登ることをいう。もちろんフリークライミングではない。語源は、ごぼうを地面から引き抜く動作に似ているからのようだ。

 

【さ】

三点支持 両手足を四点として、一点を動かすために、残る三点で体を保持すること。こう書くと大層なことのようだが、慎重に登れば誰でもそうなるので、技術というほどのものではない。現代のクライミングではむしろ、三点支持を無視したほうが結果につながることが多い。「三点確保」ともいう。

ザイル Seil(独) ロープ。昔は、クライミングに使うのはザイルで、ロープとは、今でいう補助ロープを指していた。

 

【し】

地ジャン(俗) ボルダリングで地面からジャンプするスタート方法。ボルダリングには、岩に取り付いた状態から始めるという暗黙のルールがあるので、地ジャンの課題は発表の際にそれを明記すべき。シットスタートの場合、お尻の反動で取り付く場合があり「尻ジャン」「ケツジャン」と呼ばれる。

シットスタート sit  start 「シットダウンスタート」の略。ボルダリングで、低い位置から座ったような状態でスタートすること。スタンディングの状態で取り付く課題にあとから付け加えられることが多く、当然、オリジナルよりハードな課題となる。

ジャグホールド jug  hold ジャグとは「水差し」。これの取っ手のようなガバホールドのこと。

ジャミング jamming クラックの中に手や足を入れて安定させるテクニック。痛いことが多い。

残置 岩に人工的に置かれているものの総称。

シェイク shake(俗) 腕をブラブラさせて筋力を回復させること。

シャンク shank 靴底を硬くするために入れる、硬質プラスチックなどの板。

シュリンゲ Schlinge(独)→スリング

シンハンド thin  hand フィンガーより広く、ハンドより狭いサイズのクラック。コズミックデブリ、スフィンクスクラックなど有名な難しいクラックはこのサイズが多い。

人工登攀 岩以外のものをホールドとすること。つまり、フリークライミングでないこと。単に「人工」ともいう。

人工壁 人工的に造った壁。人工登攀のための壁ではない。「クライミングウォール」とも呼ばれる。

人工ホールド FRP などで自然の岩の感触に似せて造ったもの。人工登攀のためのホールドではない。

 

【す】

スクイーズチムニー squeeze chimney 体がスッポリ入ってしまって身動きが取れないサイズのクラック。正常な神経の人間にとっては不快このうえないのだが、ごくまれに愛好者がいる。

スタティック static 静的な。スタティックなクライミングでは鈴木英貴が有名。

スタティックロープ static  rope 伸びにくいロープ。

スタンス stance 本来の意味は「足の置き方」(ゴルフ、野球などでよく使われている)。「立場」を表す一般用語でもある。最も頻繁に間違って用いられている言葉といえよう。正しくは「フットホールド」。

ステミング stemming 開脚。凹角でよく用いられるフットワーク。「ブリッジング」ともいう。

ストレニュアス strenuous 厳しさが続くこと。「ストレニ」と略して使うこともある。

スポートクライミング sport  climbing 従来のフリークライミングから危険性・冒険性を排除したもの。つまり、ラペルボルトによるルート、人工壁でのクライミングを指す。よく「スポーツ」と間違って使われるが、単数なので「スポート」である。反対語は「トラディショナルクライミング」。

スメアリング smearing スメアは「こすりつける」という意味。主にスラブで用いられる足の置き方。

スラブ slab 主に、傾斜の緩いツルッとした岩。前傾壁中心に登っている最近のクライマーは 90 度以下の壁をすべてスラブと呼び、さげすむ傾向がある。

スリング sling テープやロープを短く切って、ループにしたもの。あらかじめループとして縫い付けられているものを「ソウンスリング」と呼ぶ。

スローパー sloper→外傾ホールド

 

【せ】

正対 体の正面が壁に向いている状態。高難度ルートになるとこの体勢では登れないことが多い。初心者はこの状態のままで登ろうとする傾向があり、いつになってもそれが抜けない場合、「正対クライマー」という不名誉なレッテルが貼られる。

セカンド second  2 番目に登る人。フォロー。主にマルチピッチのルートで使われる言葉。

セルフビレイ self  belay 自分自身を確保すること。主に、取付が平らな地面でない場合や壁の途中において、ロープやスリングでアンカーと本人のハーネスをつなぐこと。

【そ】

ソール sole 靴底。

 

【た】

タイインループ tie-in  loop ハーネスのロープを結ぶ部分。現在、フリー用に使われているハーネスのロープを通す部分。現在、フリー用に使われているハーネスのロープを通す部分はループになっていないものがほとんどなので、タイインポイントのほうが理にかなっている気がする。前側に付いているテープの輪は「ビレイループ」と呼ぶ。

タイオフ tie-off スリングで木やピトンの根元に絞り込むこと。

ダイク dike 岩の硬い部分が飛び出て帯状になっているもの。花崗岩では、よく石英質のダイクが見られる。

ダイノ dyno →ランジ

ダイヒードラル dihedral 岩の凹角。「オープンブック」「インサイドコーナー」とも。フランス語では「ディエードル(diedre)」。

ダブルダイノ double  dyno 両手ランジ。

ダブルロープ double  rope  2 本のロープを使うリードの方法。プロテクションの位置が登るラインの左右に離れてしまったり、ライン自体がまっすぐでないことが多いアルパインやトラッドでよく使われている。フリークライミングでも、直角のハングを越えていくような、シングルではロープドラッグを起こしてしまうルートで有効。また、たぐり落ちの距離を短くすることもできる。

タンデュー tendu(仏)→オープンハンド

 

【ち】

チキンヘッド chicken  head(俗) ニワトリのトサカのように飛び出たホールド。

チッピング chipping 岩を削ること。「チズリング」も同じ。

チップトホールド chipped  hold チッピングによって作られたホールド。「チョップドホールド」は間違い(ボルトを切り落とすことは「チョッピング」という)。

チムニー chimney もとの意味は「煙突」。クラックのなかで最も幅広いもの。ステミング、バック・アンド・フットなどで登る。

中継 中継ホールドの略。それだけでは体を支えることができない小さなホールドで、次の、より掛かりのいいホールドへデッドポイントするためのもの。

チョーク chalk 滑り止めの粉。専用のチョークバッグに入れて携行する。

チョック chock クラックに使うプロテクションの総称。

チョックストーン chock  stone クラックに詰まった石。

 

【つ】

つるべ(俗) マルチピッチのルートをふたりで登る場合に、ピッチごとにリードを交代する方法。しかし冷静に考えてみると、ぜんぜん似てないような……。「つるべ」じゃあ、いつになっても上へ行けないのでは……?

 

【て】

ディセンダー descender 下降器。ビレイディバイスと共用となっているものが多い。エイト環は本来、ディセンダー。

ディバイス device 器具。

ディフィカルティ difficulty クライミングコンペのカテゴリーでオンサイト・リード方式のもの。スピード競技ではないという意味で名づけられ、長らく使われてきたが、2005 年より「リード」に変わった。これは、区別すること。

テンション tension→ハングドッグテン(俗)テンション」の略で、「ワンテン」といえばテンション 1 回で登ったということ。

 

【と】

トウフック toe  hook つま先(トウ)でホールドを引っかけること。よく「トゥーフック」と間違って表記される。

トップダウン top  down 上部からロープを垂らし、ボルト設置、掃除などを行なう「グラウンドアップ」の反対語で「フレンチスタイル」とも呼ばれる。

トップロープ top  rope 終了点でロープが折り返り、2 本(実際には 1 本だが)のロープが地面に垂れている状態。主に練習用に使用される。リードルートをトップロープで登っても、登った(レッドポイントした)ことにはならない。これを「ホワイトポイント」と呼ぶようだ。

トップローププロブレム toprope  problem  主に以下の3つの理由で設定される。岩が柔らかくてプロテクションがとれない。ムーブが厳しすぎてクリップができない。スケールがない。

トラディショナルクライミング traditional climbing トラッドルートを登ること。

トラッド trad「トラディショナルクライミング」の略。

トラッドルート trad  route ナチュラルプロテクションで、主にグラウンドアップによって拓かれたルート。反対語は「スポートルート」。

トラバース traverse 横へ移動すること。

トリッキー tricky わかりづらい、独特な。「トリッキーなムーブ」「トリッキーなルート」というように使う。

【な】

ながヌン(俗) 長いヌンチャク。

 

【に】

ニーバー knee bar つっかえ棒の要領で、足先とひざで固定するレスティング技術。凹凸の激しい前傾壁、つらら状の石灰岩などを利用して行なわれることが多い。また、この技術の普及によってグレードダウンされたルートも多い。

ニーロック knee lock ワイドクラックでひざをロックさせること。

 

【ぬ】

ヌンチャク(俗) 2枚のカラビナを短いスリングでつないだもの。カンフーのヌンチャクに似ていることから呼ばれる。正しくは「クイックドロー」。

 

【の】

ノブ(俗) ドアの取っ手のように飛び出たホールド。

 

【は】

ハーケン Haken(独)→ピトン

バックハンドクリップ backhand clip カラビナのゲートが外側を向いている場合の方法。人さし指にロープを載せてカラビナのゲーとに押し付けるようにすると同時に、親指でカラビナの反対側を押さえる。

ハードフリー(俗) 現在行なわれているフリークライミングを過去にこう呼んだ。「ハードな(難しい)フリークライミング」の意味。

ハーネス harness クライミング用の安全ベルト。語源は、馬車馬に付ける革のベルト。

パーミング palming 丸いホールドなどを手 のひら(パーム)で押さえること。

パキる(俗) 主に手の指の関節を痛めるこ と。一流クライマーになるには避けて通れな い(?)。

バックアップ backup もしも、のために別 の安全確保をとっておくこと。

ハングドッグ hangdog(俗) ロープにぶら下がってホールドやムーブを探ったりすること。アメリカでは近年まで反則技だった。

ハンドクラック hand crack 手のひらの厚さから、それよりやや広いクラック。

ハンドジャム hand jam ジャミングのなかでは、いちばん簡単。

バンド band 岩を横切っているもの。レッジが横に長く続いているものをさすことが多いが、エベレストのイエローバンドのような“絵に描いた餅”にも使われる。

パンプ pump(俗) 過度の使用により筋肉がふくれ上がること。「パンプアップ」の略。

 

【ひ】

ヒールフック heel hook かかとをホールドに引っかけるテクニック。昔はハングの出口などでしか使わなかったが、今はバランスを とるために、ちょっと引っかける程度のフックが多用されている。

ピッチ pitch ルートの区切り。フリークライミングでは圧倒的にワンピッチのルートが多い。

ピトン piton 岩の割れ目に打ち込む金属製 の板。割れ目の幅により、ナイフブレード、 ロストアロー、アングルなどがある。もとは フランス語。

ビレイ belay 確保。主にロープによる安全 確保のこと。

ビレイヤー belayer ビレイする人。

ビレイループ belay loop ハーネスのレッグループとウエストベルトをつないでいる輪。ここに安全環付きカラビナでビレイディ ングでつないだもの。カンフーのヌンチャク バイスをセットし、ビレイする。ラペルの際もここを使う。

ピンクポイント pink  point プロテクショ ンをセットしたままの状態でリードし、完登すること。ボルトルートではレッドポイントに含めているので、主にクラックルートで使用される戦術。

ピンチ pinch 親指とその他の指でホールドを挟むこと。「ピンチグリップ」の略。

 

 

【ふ】

プアプロ(俗) 不確かなプロテクションしかとれないこと。イギリスでは伝統的にプアプロのハードルートが多い。または「貧乏なプロクライマー」の略。これもイギリスに多い。

フィックスロープ fixed  rope 固定ロープ。フリークライミングではおもにルート整備、写真撮影などで使用される。

フィンガークリップ finger  clip カラビナのゲートが内側を向いている場合の方法。カラビナの下を中指で押さえ、人さし指と親指で挟んだロープをゲートに押し込む。

フィンガーチップ finger  tip 極小エッジ。

フィンガリー(俗)細かいホールドが続く、指を酷使するルートを「フィンガリーなルート」という。

フラッギング flagging 片方の足をホールドに乗せずに(流して)バランスをとり、次のホールドを取る方法。体は壁に対して横向きになるので、外側の足を流す場合は「アウトサイドフラッギング」、内側の足を流す場合は「インサイドフラッギング」という。

フラッシング flashing 本来は(オンサイトも含めた)1 回目のトライで完登すること。のちにオンサイトの概念が確立され、区別するために「他人の登りを見たあと、初めてのトライで完登すること」を指すようになった。

フリーソロ free  solo 通常はリードされているルートを、ロープをつけずに登ること。もちろん一般的ではなく、ごく少数のクライマーがたまに行なうだけ。フリーソロを行なうクライマーとしてはジョン・バーカー、ピーター・クロフト、ルネ・ロベール、アレックス・フーバー、ディーン・ポッターなどが有名。

ブリッジング bridging →ステミング

フリクション friction 摩擦フリークライミングにおいては、靴底と岩、ふたつのフリクションが重要なファクターとなる。

フレーク flake 壁に貼りついているような状態の板状の岩。

プロジェクト project 「計画、企画」という言葉だが、クライミングでは「試登中」を意味する。「P」と略して書かれることが多い。トポに、単に「プロジェクト」と書いてある場合は登らないほうがいい。誰が登ってもいいものは「公開(オープン)プロジェクト」と書いてあるはず。

プロテクション protection 安全をプロテクト(守る)するためのもの。ボルト、ピトンのように壁の中に残置されているもの(フィックスドプロテクション)に対して、クラックなどで使う回収可能なものを「ナチュラルプロテクション」と呼んでいる。

プロブレム problem 課題。主にボルダリングに使われる。

 

【へ】

ベータフラッシュ beta  flash ベータとは「情報」のこと。つまり、情報付きのフラッシング。核心部の手順を事前に(あるいは登りながら)人に聞くなど。場合によっては、人の登りを見るより助けとなるかもしれない。ジャック中根に連れられて登りに行き、一撃した場合、必然的にこのベータフラッシュとなる。「ヘッドポイント」ともいう。

 

【ほ】

ボルダー boulder 大きな石ころ。

ボルダリング bouldering ボルダーを登ること。壁の取付などでロープをつけずにトラバース、あるいは安全な高さまで登ることも含む。

ポケットpocket 穴状のホールド。大きさにより、ワンフィンガーポケット、ツーフィンガーポケット・・・、スリー・・・と呼ぶ。

ホールド hold 手がかり、足がかり。

ボディビレイ body belay 本来は「肩がらみ」「腰がらみ」といった、体とロープ(厳密には服とロープだが)がじかに触れるビレイ法を指していたが、現在では器具によるビレイが当たり前になったため、器具をアンカーにつないでビレイするのではなく、ハーネスにつないで行なうことをいう。

ボルトラダー bolt  ladder ボルトばしご。ボルト連打。人工登攀の奥の手、最後の切り札。

ホワイトポイント white  point リードルートをトップロープで完登すること。

本チャン(俗) 「アルパインクライミングの本番」の意味。つまり高い山の大きな壁、またはそこでのクライミングを指す。「ゲレンデ」の反対語。

 

【ま】

マッチ match ひとつのホールドを両手で持つこと。「持ち替え」という意味で使われることもある。

マルチピッチ multi-pitch 複数ピッチのルート。

マントル mantle ボルダーのてっぺんや、ホールドのないテラスに這い上がるときによく用いられるテクニック。正しくは「マントリング」。もっと正確には「マントルシェルビング」。マントルシェルフとは「暖炉の外枠」のことで、両ひじを外側へ直角に張り出す形が似ているから。

 

【む】

結び替え 終了点にカラビナがなく、金属製の太いリング(ラペルリングではない)がある場合にり、セルフビレイをとり、ロープをほどいてリングに通し、再び結んでロワーダウンすること。安全環付きからビナを使う方法がいい。

 

【ゆ】

ユマール Jumar フィックスされたロープを登っていくためのギア。カムの働きによって上へは上がるが、下へは移動しない仕組みとなっている。フリークライミングには直接関係ないギアだが、ルート開拓、撮影などに使われる。ユマールは本来メーカー名だが、チャックやデジカメと同じように一般名詞化している。

ユマーリング Jumaring ユマールなどアッセンダーを使ってフィックスロープを登ること。

 

【よ】

ヨーヨー Yo-Yo フォールしたらハングドッグせずに即ロワーダウン。次のトライではそのままのロープの状態で登り(最後のプロテクションまでトップロープ状態)、プロテクションを伸ばす。また落ちたら即ロワーダウンし……というスタイル。これで終了点に達しても、3 ロワーダウンで完登とした時代もあった。今どきのボルトルートでこんなことをしたら変人扱いされるが、ハングドッグしない(つまり、常に未知の部分を残している)という点では意味があると思う。

 

【ら】

ラップ wrap 包むこと。ホールドの持ち方のひとつ。飛び出たホールドを、コップを持つように包み込む。

ラペル rappel 懸垂下降。フランス語が英語化したもの。スペルから「ラッペル」と呼びたくなるが、ラペルが正しい。

ランジ lunge 飛びつき。ジャンプ。ダイノ。

ランニングビレイ running  belay リード中にとるプロテクション。「ランニング」「ランナー」ともいう。

ランナウト run  out ふたつのプロテクション間の距離が長い状態。

 

【り】

リソール resole 靴底の張り替え。

リッジ ridge 岩の長く飛び出している部分。岩稜。

リップ lip 一般にコップの縁などをこう呼ぶが、クライミングの場合、強い傾斜から緩い傾斜へ移る角の部分を指す。

リード lead クライミング本来の登り方。結んだロープが下にたれている状態で、プロテクションにロープを通しながら登る。墜落すると最後にセットしたプロテクションまでの距離の 2倍落ちることになる(実際はロープの延び、流れによってもっと長くなる)。

リングボルト ring bolt 人工登攀用に開発されたボルト。強度はなく、フリークライミングのプロテクションには向いていない。

 

【る】

ルーフ roof オーバーハングの極致で、ほぼ 180 度のもの。言葉の意味からすると、屋根の上はスラブだから違うような気がする。「シーリング(天井)」が正しいのかも。

 

【れ】

レイバック lay  back 手(引く)と足(押す)のオポジションによって体を安定させ、三点支持で登る。主にクラック、特にコーナークラックを登る際に使うことが多い。

レスティング resting 単に休むことだけでなく、休むための技術も指す。

レッグループ leg loop セパレート型ハーネスの足の部分。

レッジ ledge やっと立てるくらいの幅の岩の棚。

レッドポイント red point 2回目以上のトライで完登すること。ドイツのクルト・アルベルトがトライ中のルートの赤丸(レッドサークル)をつけ、完登するとこれを塗りつぶしていたことによる。

 

【ろ】

ロープドラッグ rope drug ロープが流れないこと。ルートが直線でない場合にプロテクションとの摩擦で起こりやすい。

ロープバーン rope burn ロープによるやけど。フォールの際にロープを体に絡めてしまうとでき、足がもっとも多い。なかなか治らずヒリヒリして痛い。

ロープワーク rope woeks ロープの操作。リードやビレイ、懸垂下降などハード面でのテクニックの総称としても使う。

ロワーダウン lower down 支店にロープを掛け、ぶら下がってビレイヤーに降ろしてもらうこと。ルート攻略のスタイルとしても使われる。

 

【わ】

ワイヤーブラシ wire blush 歯ブラシの大きなもので、毛の部分が鉄製となっている。主にルート開拓時に岩の掃除に使う。岩が削れるので、通常のクライミングの際に歯ブラシ代わりには使わないこと。

ワンムーブ(俗) 1ヵ所だけが難しいようなルートを「ワンムーブのルート」と呼ぶ。