DVD Review Vol.4

『UFB SEASON 1』『eternally』『pachamama』『ON THE CIRCUIT』『Arnaud Petit climbs“Black Bean” 8b with natural pro in Ceüse』『Tomorrow I Will Be Gone』 

構成・文=榎戸雄一(雪山大好きっ娘。) 

*この記事は『ROCK&SNOW No.57 2012年9月号』掲載記事をもとにしています。

『UFB SEASON 1』 XcALibUR

竹内俊明さんを中心としたXcALibURの最新作。登場するのは、今が旬の瑞牆や恵那、豊田など、どれも日本のボルダー課題で、やはり日本人としては親しみやすい。 見どころは最後に収録されている、竹内さんによる豊田・太刀(三段+)のSDバージョン、鬼の爪(四段+)の初登シーン。かぶった壁に点在するカチをつないで斜上していく課題で、気合の入った連続するクロスムーブが見ものだ。 出演クライマーは岡本圭太、宮本健太、藤原亮さんなど。60分とちょっとしたオマケ映像という構成で、ボリュームは十分。内輪的な雰囲気はあるものの、XcALibURメンバーのはつらつとした感じや、楽しんでる感が存分に伝わってくる。音楽もシンプルながらも攻撃的で、盛り上がる作品に仕上がっている。

『eternally』 Kujira Eizo

www.facebook.com/kujira.eizo

小山田大さんの今年2本目となるDVD。4月に発売となった前作『dai’s video diaries vol.3』はスイスの課題を中心に扱っていたが、今作は国内課題がメインだ。 これまでの小山田作品とは一線を画し、ナレーションを小山田さん自身が務めており、ほのぼのとした雰囲気で進行している。しかしながら、映像はスイス・キロニコのBig Paw(V15)の第2登、豊田・シャンバラ(V15)、恵那・常世(V15)の初登シーンなど、世界最難クラスの課題ばかりで奮闘的だ。しかも、Big Pawとシャンバラは完登が夜となり、これまでに費やした時間の長さもあって、完登したときの小山田さんの表情は非常に印象的。常夜も「これまでで最もすばらしい一本」というだけあって、傾斜の強い壁に走る見事なクラックのラインだ。 長年のパートナーである保科宏太郎さんもいい味を出している。

『pachamama』 Frontier Spirit Production

www.pump-climbing.com/products/sachi/

安間佐千さんに焦点を当てた初めての作品。彼自身2本目の5.15ルートとなったPachamama(5.15a/b)を登るまでを描いている。 Pachamamaはクリス・シャーマが2009年に初登した、スペイン・オリアナにある45mのラインで、長さもさることながら、随所にデッドやランジといったボルダーセクションがある厳しい課題。アダム・オンドラもトライしていたものの、第2登には至っていなかった。 2010年のクリスマスにPapichulo(5.15a)を登った安間さんは、間髪入れずに隣のPachamamaのトライを開始。2011年の12月17日、トータル2週間のトライの末に完登する。このラインをどう攻略していくのか、塩原でのボルダリングやワールドカップの映像に加え、クリス・シャーマやダイラ・オジェダ、伊東秀和さんのコメントを交えて、クライマックスの完登シーンに突入していく。今年のワールドカップでの快進撃を予見しているような安間さんのコメントも見逃せない。

『ON THE CIRCUIT』 PRAK Media

27crags.com/films

アメリカを代表する四大ボルダラー、デイブ・グラハム、ダニエル・ウッズ、ポール・ロビンソン、カルロ・トラバーシが、コロラドの山岳エリアRocky Mountain National Parkで今年春に開拓したボルダー映像をまとめた作品。 最近はデイブが先陣を切って開拓・初登し、追いかけるように、ダニエルやポール、カルロが再登しており、課題はどれもV14〜V15と最難クラスであるにもかかわらず、さくさくと登っていくさまは圧巻。彼らの強さが際立っている。 今作もポールのPRAK Mediaによる制作で、リリースを重ねるたびに完成度が上がっており、今後が楽しみだ。 タイトルの“Circuit”には、道路わきにあるエリアだったり、伝説のボルダラー、ジョン・ギルがかつて設定していたサーキット課題の意味がかかっている。

 

『Arnaud Petit climbs“Black Bean” 8b with natural pro in Ceüse』

www.youtube.com/watch?v=-TeTejh1ebs

スポートルートのメッカ、フランス・セユーズの岩場で、フランスのアルノー・プティが、スポートルートのBlack Bean(5.13d)をナチュプロのみで登ったときの動画。 昨年、平山ユージさんがイタリアで複数のスポートルートをトラッドスタイルでオンサイトしたのは記憶に新しいところだが、近年、このスタイルのクライミングが流行っており、これはその象徴ともいえる映像だ。

『Tomorrow I Will Be Gone』

http://vimeo.com/31326082

イギリスのクライマーチームが南アフリカ・ロックランズへボルダーツアーに行ったときの映像。44分と長編ながらも無料での公開は太っ腹。爽やかでスピード感ある編集で、あっという間。 制作したイギリス・UTCR OP FILMSは前号で紹介した作品『Life On Hold』と同じ制作会社で、今後の作品に期待が高まる。