【東京五輪応援企画】スポーツクライミング 3種目について [ リード・ボルダリング・スピード]

スポーツクライミングの試合観戦をもっと楽しむために、競技のルールについてわかりやすく説明します。

東京五輪でスポーツクライミング競技が追加種目として採用されれば、「リード・ボルダリング・スピード」の3種目が行なわれるでしょう。この3種目が複合競技としてIOC(国際オリンピック委員会)へ提案されたと発表があり、ルールなど独自のフォーマットとなる可能性がありますが、ここではワールドカップなどで採用されている、国際競技団体「IFSC」が発表する国際大会のルールを紹介します。

監修=北山 真

リード:リードで登って/どこまで登れたかを競う競技

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リード競技は専用に設計された十数メートルの高差を持つ人工壁を、ロープで安全を確保された状態でどこまで登れたか(どこで落ちたか)を競う種目。取付から終了までのホールドに番号が振られていて、30番目のホールドで落ちたら、成績は30。31番目のホールドで落ちたら31で、これは30より上の成績となります。

誰もが完登してしまったら競技にならないので、ごく一部のトップクライマーのみが完登できるような難しさにするのが基本です。そのためにルートセッターという専門家がいて、選手の技量を予測しルートを設定します。決勝ではもちろん、ひとりだけが完登するのが理想です。

「オンサイト方式」が基本ですが、近年は選手の増加にともない予選は「フラッシング方式」で行われるのが定番となっています。

オンサイトとは〝初見〟の意味で「自分が登る前に他人の登りを見ることはできない」というもの。他人の登りを見るということは最も有効な情報なので、登る順番があとになればなるほど有利になってしまいます。そこでアイソレーションエリアと呼ばれる隔離場所が設けられ、自分が登る順番まで待機します。

フラッシングは「他人の登りを見たあとに、初めてトライする」というもの。セッターによる〝生の〟デモンストレーションが行なわれたり、登っている映像を控室で流したりします。

*「+(プラス)」の成績…
保持したホールドから重心の移動をともなうムーブをするか、先のホールドを触れた場合に「+(プラス)」として評価されます。例えば40番目のホールドから手をだした場合「40+」となります。

 

ボルダリング:マットで安全確保して/完登できた課題数を競う

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ボルダリング競技は高さおよそ5m以下の壁に複数の課題が設定されていて、いくつ課題を完登したかを競います。ただし、それだけでは同成績の選手が多数でてしまうので、完登数が同じだった場合は、それに要したアテンプト(トライ)数が考慮され、トライ回数が少ない方が上の成績になります。

それでも同成績の場合は、課題の中間付近に設けられたボーナスホールドでポイント数を競います。ボーナスポイントとは、課題の途中でポイントとなるホールドを設定し、そのセクションを通過した場合、またはボーナスホールドを保持した場合に認定されます(1課題につき1回の評価)。完登した課題もボーナスホールドを通過しているので、ボーナスポイントがつきます。

さらにそれでも同成績の場合、ボーナスポイントに要したアテンプト数が少ない方が、勝ちとなります。

*成績が「4t6 5b8」だった場合。これは”4Top(完登)に6回のアテンプト(トライ)で成功。5つのボーナスポイントをゲットし(4完登も含まれる)、それに要したアテンプトは8回(完登に要した6回を含む)”ということを表します。

*最も成績が高いのは、全課題を一撃完登だった場合。ラウンドが5課題だと仮定すると、成績は「5t5 5b5」。

*完登…
色テープなどで指示されたホールドからスタートし、指定されたゴールのホールドを両手で保持すること

 

スピード:トップロープで/完登するまでの時間を競う

スピード種目予選は、タイムを計り速い順に16名が選ばれます。ここから8分の1ファイナルとなり、より競技性をもたせるためにトーナメント方式が採用されています。2人が同時に登り、先に終了点に達したほうが勝者となり、次のラウンド4分の1ファイナル(準々決勝)に進みます。タイム差は関係ありません。

過去にはコンペごとにルートが設定されていた時代もありましたが、現在は壁も、ホールドも、ルートも共通で行なわれます。つまり、世界記録を表示できる唯一のクライミング競技ともいえます。2016年6月時点の世界記録は15mの壁で男子5.60秒、女子7.53秒という驚異的なものです。

現在のところスピード種目に参加する国には偏りがあります。中国、ロシア、ポーランド、ウクライナ、カザフスタンなどが、参加者の多い国です。日本では、本格的に練習できる施設がないのが現状で、オリンピック競技として採用されることになれば、スピードクライミングのできる環境が求められるでしょう。

*動画はDanyl Boldyrev(ダニエル・ボルディヤフ)が世界記録5.60秒を叩き出したときのもの


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