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アダム・オンドラ、アルコ初の9b/5.15b、“Queen line”に成功
訳=羽鎌田学
イタリア、アルコの街に近いラゲーレでチェコのクライマー、アダム・オンドラは、アルコ周辺の岩場で初めての9bとなるルートに成功し、“Queen Line”と命名した。
クライミングで有名な街アルコではあるが、長い間、最難スポートクライミングの最前線に立つことはなかった。しかしながら、今日ここに晴れて9bのルートを擁するエリアとなったのである。その功労者は、ご存じアダム・オンドラ。ヨーロッパのあちらこちらの岩場を巡り、クライミングする彼が、そのツアーごとに欠かさず立ち寄り、何がしかの成果を残していくところが、ここアルコ周辺の岩場である。
今回彼がその20mほどのルートの初登に成功したのは、ラゲーレと呼ばれるセクターである。その被った壁には当初ディエゴとマウロのマッボーニ兄弟がドライツーリングの練習場としてボルトを設置、その後スポートクライミングの場へと転用された岩場である。同セクターには現時点では3本のルートしかないが、今回アダムが登ったラインが“Queen Line”である。そのラインは先ずは真ん中のルートのハードな最初の10mを登り、次に右のルートに合流、終了するものである。アダムは去年短期間ながら何度かトライしたことはあった。この今年24才のクライマーによれば、9bでもその上限に位置する難しさであるようだ。しかしながら真の挑戦は、真ん中のルートを今回のように中間部で右に逃げずに下から上まで登り切ることである。それこそが“King Line”となるはずである。グレードは9b+/5.15c、もしくはそれ以上に(!)なるようだ。
しかしながら、そのスーパー・ハードルートの話をするのはまだ早い。差し当たり“Queen Line”と、その左手にある9a+と目されるプロジェクト・ルートで充分だ。そのプロジェクトには、最近ローカルクライマーとなったステファノ・ギゾルフィがトライしている。彼ギゾルフィは2015年11月にアンドーノの岩場でイタリア初の9bルートに成功し“Lapsus”と名付けている。“Lapsus”はまだ再登者が現れず、そのグレードの追認が待たれている。
さて話をアダムに戻そう。その日“Queen Line”に成功した彼は、それだけでは満足せずにマッソーネのセクターに移動。そこで2016年11月にギゾルフィが初登した9a+のルート、”Ultimatum“を再登して、誰が見ても申し分のない、素晴らしい一日を終えたのであった。ここで忘れてはならないことは、当のアダム、数日前にはドイツ、フランケンユーラで8cルート、”Masters of Universe“のオンサイトに成功していることだ。8cのオンサイトには既に10年以上前の2004年に平山ユージが初めて成功し、今日では最高オンサイト・グレードは9aに引き上げられている以上、ユーラでのアダムの8cオンサイトなど特筆すべきことではないかもしれない。とは言え、フランケンユーラでの8cのオンサイトは、実は2本目なのである。一本目の成功者は、アレックス・メゴス。2015年に”Solitary Man“をオンサイトしている。