世界選手権スペイン・ヒホン。安間佐千3位、小林由佳7位。 視覚障害者部門で日本人男子、全階級制覇。

ファイナルで完登目前のラモン・ジュリアン

9月8日から14日という長い期間で、世界選手権(リード)がスペイン・ヒホンで開催された。7日間という長い日程は、参加者数の増大を想定してのものであったが、いささか行きにくい場所(ヨーロッパ以外からは2回の乗り継ぎが必要)ということもあってか、男子リード74名、女子リード49名というワールドカップ並の参加者であったため、ゆったりとしたスケジュールでの開催となった。

8日はパラ(障害者)クライミングのメディカルチェックと、夜は開会式が行われた。参加国は38と、2年前のパリ大会の60ヶ国にはるかに及ばないものとなったが、ネパール、ペルー、トルコ、ポルトガルなどワールドカップでは馴染みのない国からの参加もあった。

ファイナルの会田祥。視覚障害男子、全選手中最高到達点をマークした

9日はスピード予選。
10日は男子予選。日本人は安間佐千と是永敬一郎が通過した。
11日はパラクライミングの予選。日本人は7つのカテゴリーに参加、ほとんどが予選を通過した。
12日は女子予選とスピード決勝。女子は野口啓代、小林由佳、大田理裟の3名全員が予選通過。
 
13日はまず男女準決勝。安間佐千が3位タイ、小林由佳が7位で決勝に進んだ。夕方から行われたパラクライミングの決勝では、視覚障害者の3つのカテゴリー、B1(全盲)、B2(強い弱視)、B3(弱視)において、すべて日本人が優勝した。これはこれまでB2であった小林幸一郎がB1に移動したことが大きい。ライバルであった会田祥はB2のままで、それぞれ2位を大きく引き離しての優勝となった。また、B3では健常者時代には5.14も登り、ジャパンカップでの優勝の経験も持つ蓑和田一洋が優勝した。女子は2012パリ大会では納得できないハンデにより予選落ちとなった前岡ミカが雪辱をはたした。 日本人初出場となった神経障害のカテゴリーには吉田藍香、前田あみの2名が参加。吉田が決勝をみごと完登したが、タイム判定となり2位となった。

14日はいよいよ男女決勝。日本人の“世界選手権では勝てない”ジンクスが破られるか? が安間、小林にゆだねられた。小林は中間部の大きなフレークをつかむ部分でフォール。結果8名中半分がここでフォールしたのだが、カウントバックで小林は7位のまま。キム・ジャインがただ一人の完登で優勝。シンニン、アルコ、パリ、実に3大会の世界選手権での2位を経ての勝利。涙を拭うジャインに大きな拍手が送られた。
 
そして日本人すべての期待をその細い一身に集め、安間が登場。順調に高度を稼ぎ終了点直下でフォール、1位の成績だ。あとは、準決勝を完登している2名、アダム・オンドラ、ラモン・ジュリアンが安間より下で落ちるのを待つ。しかしその期待はアダム(最終ホールドタッチ)、ラモン(その手前保持)には通じなかった。
 
この、2年に一度の大舞台に世界中のトップクライマーが集中してきた。そこでの安間の3位という成績はもちろん祝福すべきものである。我々は多くを期待しすぎたのかもしれない。今は2年後のパリ・ベルシーに向け、一歩を踏み出すべき時である。
(文・写真=北山 真)


安間佐千と小林由佳のファイナル

 

世界選手権リード スペイン・ヒホン大会
◆男子成績
1   アダム・オンドラ
2   ラモン・ジュリアン
3   安間佐千
――
25 是永敬一郎
28 島谷尚季
35 大高伽弥
◆女子成績
1   キム・ジャイン
2   ミナ・マルコビッチ
3   マグダレナ・ロック
――
7  小林由佳
9 野口啓代 
21 大田理裟
◆視覚障害男子B1
1 小林幸一郎
4 岩本謙司
6 前岡正人
◆視覚障害男子B2
1 会田 祥
◆視覚障害男子B3
1 蓑和田一洋
◆視覚障害女子B2
4 青木宏美
◆視覚障害女子B3
1 前岡ミカ
 
◆神経障害女子A
5 前田あみ
◆神経障害女子B
2 吉田藍香
片足男子
9 大槻智志

金メダル4個、銀メダル1個を獲得した日本パラチーム 左から蓑和田、会田、小林、前岡ミカ、吉田

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