モンチュラ ドライツーリング チャンピオンシップ 2019

写真=マウンテンワークス/松内宏之

 

3月16日、17日、長野県川上村岩根山荘アイスツリーでドライツーリングの大会が開催された。2003年に層雲峡で開催された国内初のアイスコンペから今まで、場所やスタイルを変化させながらも大会は繋がれ、大会を楽しみ、目標にしているアイスクライマーも途絶えることはない。


会場の様子

大会には現役のアイスワールドカップ選手から、今日初めてアックスを握るボルダラーまでの総勢29名が出場した。その中には現役クライミング日本代表の小武芽生選手もいた。大会は予選3課題のセッションと決勝1課題のオンサイトで構成され、ルートセッターには現役韓国代表のKwon Young Hye選手が招致された。

ルートは今のワールドカップを思わせる、複雑なフッキングを必要とする設定で、ただ力があれば登れるような単純なものではない。壁の高さやルートの長さこそワールドカップには及ばないが、そこに見える景色はかなり近いもの感じた。

選手は道具の調整や、ルートの構成、ホールド、ムーブなどを本当に研究しており、非常に小さいコミュニティーではあるが、とても熱い集団である。僕には、マイナーな世界の中にある、この少数だが温度の高い集まりがとても居心地が良い。いまや大衆化されたスポートクライミングも、きっと昔はこんな感じだったんだろうと少し残念な気持ちにもなってしまう。

そして彼らとこのクライミングをいかに継続させ、どうやったら良い未来になるのかを朝方までミーティングした。これは飲み会ではない、ミーティングだ……選手の皆さん付き合わせてご免なさい。

決勝には男子8選手、女子7選手が進み、予選より更に複雑になった課題が用意された。選手はしっかりセッターの意図することを理解しており、高度を稼いでいく。その中で、やはりワールドカップに出場している橋本翼選手が唯一完登で男子優勝。女子は竹内春子選手が最高高度で優勝となった。


男子優勝の橋本翼選手


女子優勝の竹内春子選手

今大会で注目の小武はこの大会で初めてアイゼンを履き、アックスを持つものほぼ初めての状態であった。ギリギリで予選を通過したが、結果は6位。アイスクライミングやアイスコンペでは、フリークライミングの能力はおそらく3割程度であり、7割はアイス用の能力が必要となる(奈良調べ)。クライミング能力が高ければゴリ押しでアイスも出来るという訳ではないことを、彼女が証明したのだと思う。しかし小武は高校生の時からアイスクライミングがしたいと言っていたが、しっかりフリークライミングで大成するまではダメだと僕は許さなかった。ポテンシャルも高く、人間的にも成長した小武が今後アイスクライミングをしていくのなら、世界で輝くことは間違いないと思う。


小武芽生選手

今後この大会が、どのように継続され、どのように進んでいくのかは、この世界を大切に思う熱い人達が作っていくのだと思う。クライマーが主体的に動き、作り上げていくこの大会がこれからもアイスクライマーの1つの目標として、いつまでも存在してほしいと心から願っている。

奈良誠之(昔のアイスコンペ選手)

男子

    クリップ 得点
1 橋本翼   Top(11) 11.24
2 森田啓太  10   10.2
3 伊藤権次  9   9.21
4 鷲頭弘明  9   9.2
5 内山紀貴  8   8.15
6 飯田義久  8   8.131
7 松永英知  2   2.061
8 岩瀬草太  2   2.051

女子

    クリップ 得点
1 竹内春子   7 7.13
2 笹川淳子 6   6.101
3 市川倫子 6   6.101
4 橋本久美子 5   5.081
5 橋本喜美 5   5.081
6 小武芽生 3   3.071
7 近藤靖子 3   3.061

 

※小数点以下は到達したホールドによるポイント

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