佐藤裕介・鳴海玄希・山本大貴がセロ・キシュトワール北東壁、初登攀(1500m WI5 M6)

ミック・ファウラーはじめ、マルコ・プレゼリ、トーマス・フーバーら第一線のクライマーらを惹きつけてきたインドヒマラヤきっての鋭峰セロ・キシュトワール(Cerro Kishtwar/ 6200m)。その北東壁に日本チームが新ルートを拓いた。

 

文=佐藤裕介

2018年9月20~23日、セロ・キシュトワール北東壁の初登に鳴海玄希、山本大貴、佐藤裕介の3人が成功した(以下、行動概要。詳細報告は『ROCK&SNOW』82号に掲載予定)。

 

1日目(9/20) 壁の取付4650mの氷河上に設置したABCから、傾斜のない雪のガリーと氷雪壁を登る。高度1000mを稼ぎ、5700m地点でビバーク。

 

2日目(9/21) 天候悪化の兆しがあったので、テントとシュラフを置いて長いサミットデイを狙った。傾斜は一気に高まり難しい氷柱からミックス壁、逆層スラブに張り付く頼りなげな薄氷をたどりながら頂上をめざした。22時頂上到着。すぐさま懸垂下降に移るが闇と霧のため、夜中2時に行動を打ち切り、コル状雪面を切り出し座って短時間のビバーク。

 

3日目(9/22) ビバーク中に降り出した雪は明け方に一旦止んだが、昼から強まり危険なスノーシャワーに(後半は雪崩)。夜中まで懸垂下降し続け、安全な場所でビバーク。

4日目(9/23)  降雪は相変わらず強かったが、安全な尾根上の岩壁帯に下降ラインを取り、氷河へ降り立つ。2日間で氷河上には1.5mもの積雪があり、ABCは完全に埋まっていた。折れたポールを補修して落ち着いたが、背後の谷やルンゼからの雪崩の爆風がABCにも到達して危険だったため、夜に再度行動開始。厳冬期の黒部でも経験のないような猛烈なラッセルで、水平距離200mを進むのに4時間半。夜中1時30分、岩陰でテント設営した。


 

翌日は、晴れるが雪の安定化のため停滞。翌々日の早朝、締まった雪を歩いてBCに帰着。アタック中の3泊すべてを合計しても睡眠時間は9時間。14時間行動後、20時間以上の行動が2回続いて、耐久力が試される厳しい登攀であった。そして合計32ピッチの懸垂下降とABCからの夜間避難が最も困難かつ重要な行程となった。

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