キリアン・ジョルネ、エベレストをアルパイン・スタイルで最速登降

 

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文=Rajan Pokhrel thehimalayantimes.com 訳=羽鎌田学

スペインのキリアン・ジョルネが、エベレストの登頂にチベット側から単独で、固定ロープも酸素ボンベも使わずに成功した。

世界的に知られた山岳ランナー、アルピニストでもあるジョルネは、キリマンジャロ、アコンカグア、デナリ、マッターホルン、モンブランなどのスピード記録保持者でもある。今回は、世界で最も高い山に北面のノーマルルートから挑み、5月21日から22日にかけての深夜に頂上に到達したと発表した。

ジョルネは、アタックのスタート地点を標高5100m地点に位置するロンブク僧院跡地脇のエベレスト・ベースキャンプと定め、当地を現地時間5月20日の夜10時に出発した。そして、登頂直後の5月22日午前0時15分には標高6500m地点のアドバンス・ベースキャンプに向けて頂上を後にして下山をはじめたようだ。彼は、ベースキャンプを出発して26時間後の真夜中に山頂に立ったと述べている。

そして出発の38時間後、22日の正午すぎにアドバンス・ベースキャンプに戻った彼は、次のように説明している。

「標高7700m地点までは体調も良く、全ては計画通りに進んでいました。しかしそこからは胃の調子が悪くなり、回復を図りながら登るためにペースを落とすことにしました。それでもなんとか真夜中に頂上を踏むことができました」

“Summits of My Life”と名付けた彼自身のプロジェクトの一環として、トレイルランナーである彼の言葉を借りれば“Fast Known Time(トレイル最速記録)”、登頂の最短記録樹立を目指してベースキャンプから山頂まで一気に登ることを目論んだのである。

ジョルネは、この6年間にわたって世界中を旅しながら各地の代表的な山々でスピード記録を打ち立ててきた。2012年にはまず手始めにモンブラン、続いてマッターホルンに登頂。そしてアメリカ大陸に渡り、北米でデナリに、そして南米でアコンカグアに登っている。

今年は当初、秋に遠征を計画していたが登山許可が下りず、前倒しで春の挑戦となった。今回の遠征に先立ち、彼は次のように語っていた。

「今年は去年(2016年)のときとはだいぶ様子が違うでしょうね。昨年秋の挑戦時にベースキャンプには私たちしかいなかったのですが、今年は人もたくさんいることでしょうね。8月から9月にトライしたいのは、その時期のほうが若干気温が高くて凍傷のリスクが低くなるからです。いずれにしても、季節の差はあれ、去年の経験から学んだことが今回の遠征でも生きてくるはずです」

またジョルネは次のようにも述べた。

「私が仲間たちと一緒にこの挑戦をはじめたのは5年前。そして私たちなりの山に対する価値観、山への取り組み方で挑戦を続け、今に至ったのです。今回の遠征の結果がどうなるかはわかりませんが、ひとつだけはっきりしていることがあります。それは私だけのエベレストではなく、私たちのエベレストであるということです。あらゆる人たちが何らかのかたちでこのプロジェクトの実現に一役買ってくれていることです」

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