The Noseのフリートライでは様々な困難がありました。各核心ピッチ自体が難しいのはもちろんですが(例えるなら核心に入ってからのボルダームーブはGreatRoofがニ/三段、Changing Cornersが三/四段ほど。特にChanging Cornersの足さばきは小川山の不可能スラブのスラブ課題・頭痛に匹敵)。
The Noseは年間で取り付くクライマーが世界で最も多いビッグウォールルート(大半がエイドパーティ)でハイシーズンではルート中に渋滞が出来るほどです。実際、1ピッチ中に3パーティ同時に取り付くという光景も目の当たりにし、トライ中に上部から人が降ってくるなど肝を冷やす経験もしました。また、各核心ピッチ(特にGreat Roof)はシーズン中に一度でも大雨が降ってしまうと染み出しが酷くトライすらまともに出来ない(昨年、アダム・オンドラも染み出しがある中で3度トライしたが完登できていない)など困難度を高める外的な要素が多く、良い条件を掴むのが非常にシビアです。
初めてビッグウォールに取り付き、何もかもが不甲斐なかった1年前。Changing Cornersの終了点にクリップした時、当時の記憶が走馬灯のように蘇り雄叫びと歓喜の涙でいっぱいになりました。 The Noseをフリーで登ると決めた日から2年間。昨年の大敗退を経て以来、この日のために努めた1年間だったと言っても過言ではありません。今年も様々な困難がありましたがようやく、ようやくこのクライミングを成し遂げることができました。