【インタビュー】アダム・オンドラ、世界初9a+フラッシュを語る(2)

FC
なぜ、他のルートではなく、このSupercrackinetteをフラッシングを試みるルートに選ばれたのですか?

アダム
9a+のフラッシングは、長い間私の目標でした。たしか15才の時だったと思いますが、セユーズに行ってBiographieを見上げた時に、次のような考えが脳裏をよぎったのです。
「ちょっと待て、今はこのルートに手をつけるべきではない。このルートは、いつかフラッシングするためにとっておくべきだ」と、考えたのです。そのような難易度のルートもフラッシングすることができるようになると、その時すでに考えたのです。で、数年後実際にそれを試みましたが、失敗してしまいました。
そしてスペインのサンタ・リーニャでSelecció Analのフラッシングに失敗した時、もう対象とすべきルートが残っていなかったのです。主だった9a+ルートは、すでにフラッシングを試みたか、レッドポイントで登ってしまっていたのです。ですから、新しいルートが開拓されるまで数年間待たなくてはなりませんでした。

そんな時、2015年だったでしょうか、あるルートが、その時はまだプロジェクト・ルートでしたが、私の注意を引き付けたのです。ある岩場のローカル・クライマーたちが、「多分9aぐらいにはなるのでは」と話しているのを耳にしたのです。でも実際には少し後にアレックス・メゴスが初登して、9a+とグレーディングしたのです。
それはもう素晴らしいニュースでした。なによりも、アレックスによって9a+とされたルートだったのです。その時以来、このSupercrackinetteのことは、常に私の頭のなかにあったのです。

 

FC
ルートの説明を、もう少ししていただけませんか?どのようなルートなのですか?

アダム
信じられないほど素晴らしい岩、30度ほどに前傾したパートと、それに続く、終了点目指して次第に傾斜を落としていくパートからなる、滑らかな手触りの壁、といったところでしょうか。私にとって、理想的なタイプのルートでした。短くもなく、長くもなく…。実際うまい具合に、登るに事足りる数のホールドがあったことも、信じられないくらいです。

 

FC
トライの最中、すでにルートの上部に達した時、ひょっとしたらフラッシングに成功するかもしれないと考えられましたか?それとも登ることに完全に集中されていましたか?

アダム
Crackinetteに合流した直後、例のポケットに指を入れるのに少々手こずってしまいました。それである意味、無心な状態から現実に引き戻され、成功の可能性など余分なことに考えがいってしまったのですが、なんとかそんな頭の回路のスイッチをオフにして、最後のムーブに集中することができました。まさにその時、成功への道筋が開かれた、と言ってもいいでしょうね。

 

FC
どんな些細な点がオンサイトとの違いだったのでしょうか?何が昨日のフラッシング成功のキーとなったのですか?

アダム
フラッシングでのトライだったのですが、もう考えるべき余地はほとんどないも同然、あたかも数回のトライの後のレッドポイント・トライみたいなものでした。開拓者のクァンタンにはひとつひとつのホールドについてできるだけ詳しく教えてもらいました。
例えば、ホールドがインカットしているかそうでないかとか、片腕を一瞬でもシェイクできるかできないかとか、なんでもかんでも聞き出そうとしました。ですから、事前に読んだマニュアル通りに登っていったようなものです。左を見たり右を見たりとキョロキョロすることもなく、すでに何度かこのルートに手をつけたことがあるかのように登っていったのです。
唯一の違いは、それらのホールドに実際に私自身が触れたことがなかったという点です。ですから、ホールドを取った時に、それに自分自身を馴染ませることが必要になってきます。

レッドポイント・トライの時には、すでに事前に全てのホールドに触れていて、例えば実際にどのように保持すればよいかも具体的にわかっているはずです。でもフラッシングの際は初めて触るのです。そのホールドに手を馴染ませるのに必要な時間がホールドごとに0.2秒ぐらいだったとしても、トータルでは、エネルギーの残量を大きく左右することになります。
パワー・エンデュランス系のトレーニングとか、ブロック力を強化するトレーニングとかをハードにこなし、そして素早く手をシェイクする方法などを練習したのですが、それが今回登ったルートのように一定の強度が持続するルートを登り切るのに必要なことだったのです。

 

FC
今回素晴らしい成果を挙げたわけですが、これからの新しい目標は何ですか?

アダム
ありがたいことに、ここサン・レジェ・デュ・ヴァントゥはもちろんのこと、近くのモラン・シュル・ウヴェーズにも、そしてフランス、世界のあちらこちらに、まだまだたくさんの素晴らしいルートがありますよ。

 

FC
ではまだまだ残っている今回のフランス・ツアーでのプランは?

アダム
サン・レジェを、プロジェクト・ルート無しの岩場にすることですね。さしあたっては、多分9bぐらいになりそうなEagle4を近日中にレッドポイントしたいですね。他の数本のプロジェクトも、そうですが。

※編集部注=このインタビュー2日後の2月13日、アダム・オンドラはEagle4のレッドポイントに無事成功し、そのグレードを9bとした。