安藤真也、クリス・シャーマのプロジェクトを初登

いささか古い記録となるが、重要なものなので掲載させていただく。

昨年12月27日、安藤真也が笠置山・電波塔尾根にあるクリス・シャーマのオープンプロジェクトを登った。トライはのべ7日間で、すべてグランドアップ。以下の安藤による記録の中で、四段というグレードが提案されているが、頭痛、伴奏者より難しいということであれば、少なくとも四段+以上であると思われる。

「12月27日、ラストトライと心に決め、最後に登れたのはもはや奇跡だったと思います。風の強い日でしたが、スタートしようと準備すると風が止み。指先がヌメる頃にタイミングよく風が吹き。眩しかった夕陽も雲に隠れたりと、まさに自然を味方につけた瞬間でした。上部突入は初めてで想像より悪く指先の悴みもパンプもありましたが冷静でした。何か見えない力が働いてたのではと……。ゾーンだったのかな。不思議な感覚でした。

自分の組み立てたムーブは複雑ですが、それ以外いいムーブは浮かばなかったです。使えそうなホールドは他にもあるが足との相性が悪い。一見スラブに見えるが、取り付くと全くスラブには感じない。即ちスメアができない。足技だけでなく、指先の保持力、バランス感覚、柔軟性、下半身と上半身との連動する動きも必要でした。シワを繋いでいくので、もしかしたらもっと良いムーブやホールディングが見つかるかもしれないし、リーチがあると楽に感じたりもするかもしれません。

グレードを決めるのは本当に難しい。笠置山には比べられる同じような課題がない。これまで登った小川山の垂壁からスラブ課題で考えると、頭痛、地獄変、闇の絵巻、伴奏者よりは難しく感じ、不眠症とは同じか少し難しいかなと感じました。総合的に判断しグレードは四段が妥当ではないかと思っています。あくまでも私見なので暫定です。再登者が現れたら嬉しいですが、課題的に地味だし人気は出でそうにはありませんが…。

課題名ですが。色々な要素のクライミング力が要求され、上部ではメンタルも必要であった。岩のコンディションや、指皮やフィジカル的なコンディションももちろん必要だった。そして何よりあの不思議な感覚はなんだったのか。あの瞬間、タイミングよく風が吹いたり雲が流れ夕陽が隠れたりと自然との調和を感じました。自然の一部として登る事を受け入れられたように、リズムよく導かれたそんな不思議な体験でした。比喩するならば古代ギリシャの円形劇場やオーケストラが演奏するホールの真ん中にいるようでした。ある意味自分は一表現者として登っただけで他の何か一つでも欠けていたら完登出来なかった気がします。

そんな意味を込めて課題名は ”シンフォニー” としたいと思います」

 

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