世界最難のマルチピッチ、Valhalla 5.15a完成!

planetmountain.com  訳=羽鎌田学

スペインはバルセローナ生まれのクライマー、エドゥ・マリンは、遂にValhallaの初登に成功した。それは中国貴州省格凸河(グェトゥフゥア)にある巨大なアーチに設定された、途轍もないスポート・マルチピッチルートだ。(ROCK & SNOW 83号参照)

彼は、世界で最も被った、そして最も難しいルートであるという折り紙付きのルートを全ピッチ、フリーで登り切ったのである。それは、まさに一年前、このルートのことが話題になった時以来、彼が思い描き続けてきたライン。巨大なアーチをトンネルに例えるなら、その側面の向こう側をスタート地点とし、水平の天井部を手前のトンネル出口まで忠実に縦断し、そしてスタート地点とは反対側の面上部を終了点とする典型的なルーフを突き進むラインだ。全長380m、総ピッチ数14のうち、最難は第5ピッチで、そのグレードは9a+/5.15a。その他、第8ピッチと第12ピッチは8c+/5.14cという代物だ。

2019年、年明け早々、最難ピッチ、9a+の第5ピッチのレッドポイントに成功し、各ピッチのフリー化を一先ず手中にした彼は、今度は全ピッチのワンデイ・フリーアッセントを目標に定めた。そして3月3日の2度目のトライ時には、事実上最後の難関、8c+の第12ピッチを登り切る直前でホールドが欠け、フォール。その時点までに既に10時間も壁に取付いていた彼は、もう一度そのピッチをレッドポイント・トライして、残りの8a+の2ピッチを登り切るにはあまりにも疲れ果てていた。

「あそこまで登っていながら、ホールドが欠けて落ちるなんて、それはもう挫折感も大きかったですよ。でも、人はそんな挫折から強くなると考えることにしたのです。」と、トライを断念した彼は口にした。しかし同時に、雨季が始まる4月も近づき、一旦雨が降り出せば岩が乾くこともないということも彼は充分知っていたはずだった。

そして3度目のトライとなる3月20日。遂に待望の日が訪れた。朝の4時に壁に取付き、“わが生涯の戦い”と心に定めた目標に挑み、9時間にわたる奮闘の末に全ピッチをフリーで登り切ったのである。それは、足掛け2年にわたる努力、度重なる挫折、成功への疑念、全ての思いが凝縮した一瞬であった。

「世界最大のルーフを登り切ったのです」と、エドゥは誇らしげに語る。「数ヵ月にわたる、数々の逆境を乗り越えての努力、悪戦苦闘の末に、それを成し遂げたのです。2年前に芽生えた夢を、今ここに遂に実現することができたのです。今朝の4時、太陽、風、乾いた岩。何も期待せずに、そしてプレッシャーも感じることなしに、トレーニングでもするつもりで、取付きに立ちました。でも、いつもとは違う何かを感じながら。今日が、その日だったのです。今日は失敗しないと予感していたのです」

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