オーストラリアのタイパン・ウォール登攀禁止に

planetmoutain.com 訳=羽鎌田学

グランピアンズ国立公園内にあるオーストラリアを代表する岩場、かのパトリック・エドランジェが「世界で最も美しい壁」と評した、タイパン・ウォールでのクライミングが当面の間、禁止となった。

オーストラリア、ヴィクトリア州西部に位置するグランピアンズ山脈の懐に抱かれたタイパン・ウォールは、世界的にも価値のある岩場なのだが、一時的とはいいながら、そこで登ることができなくなってしまったのだ。この極めて残念なニュースは、ヴィクトリア州のクライミング・コミュニティを代表する組織、オーストラリア・クライミング協会ヴィクトリア(ACAV)によって、ヴィクトリア・パークス(ヴィクトリア州自然公園管理局)が最近発令した暫定的保護令を受けて流された。

タイパン・ウォールと同様に重要な、スパート・ウォールとバンダレアのエリアも含むこの最新の動きは、昨年来ヴィクトリア・パークスによって課せられてきた一連の広範な禁止令の一環でもある。公式には一連の禁止令は先住民文化遺産の保護を目的としているが、ACAV側は議論すべき複雑な問題の存在を指摘している。また同時にACAVは、ヴィクトリア・パークス側にクライマーを代表する組織との事前協議をする意思が全くないこと、および絨毯爆撃的に発せられる禁止令に関して譲歩の余地なしという現状に遺憾の意を表明している。

ただヴィクトリア・パークスの報道発表によれば、今年度末には関係者がグランピアンズ国立公園のこれからの管理方法についてそれぞれの見解を述べることのできる、正式な協議の場を設けるとのことである。しかしながら、いかなる新しい管理計画もその効力を生じるのは早くとも来年のこととなる。それゆえに今のところは、クライマー、公園訪問者共々、該当する一帯への侵入行為を問われ罰金、30万オーストラリア・ドル(約2300万円)を課せられることを何としても避けるべきであろう。

2019年3月に既にレポートしたように、グランピアンズ国立公園内でのクライミングは大きな危機に瀕している。現在のところ実質的な立入禁止令によって、アボリジニー語ではガリワードと呼ばれるグランピアンズ国立公園内に存在するスポートクライミングルート、ボルダープロブレム等の3000以上(全体の38%相当)が既に登れなくなっている。そしてその数は今後も増え続ける宿命にあるかのようだ。


オーストラリアで最も質の高いルートと言われるSerpentine(5.13b)などを擁するタイパンウォール
Simon Carter

 

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