より高い次元をめざす アルパインクライミングのために　アークテリクス アクルックス LT ゴアテックス

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小川郁代＝文

アークテリクスのフットウェア「ACRUX」シリーズの第3弾として、3シーズンマウンテニアリングブーツが新たに加わった。2021年にグローバルで発表され、国内では一部の店舗でのみ限定販売されていたが、今季、満を持しての全面展開となる。

軽さとクライミング性能に焦点を当て、テクニカルなアルパインルートに挑むクライマーに向けて開発された、熟練者のための一足だ。

アッパーは、耐久性に優れる「スーパーファブリック」をメイン素材に使用。軽量で程よい柔らかさがあるため、足入れもよく、クライミング時の複雑な動きを妨げることがない。

クライミングシューズのように、爪先近くまで届くレーシングシステムを採用しているが、アッパーに柔軟性があることで、ハードなブーツとは比べ物にならないほど効果的に、繊細な締め加減のコントロールができる。ここぞという場面で、狙った足場を確実に捉えるための、大きなサポートになるだろう。

モールドラバー製のトウキャップも、クライミング時の操作性を意識したデザイン。接地面に対して90度に形成されていることで、足置きの状態を正確に把握できるため、さまざまな状況に合わせた、的確なエッジングが可能になる。

これらのクライミング性能を確実に生かすためには、ボトムまわりの剛性が必須の要素だが、それを担うのが、ソールに内蔵された3㎜厚のカーボンプレートの存在。PUフォームコアと組み合わせることで、軽量性を保ったまま、ねじれやブレの発生を抑えるのに充分な硬さを確保した。

荷重に負けることなく、足の力をムダなく爪先に集中させられる安心感が、小さな足場に立ち込む場面で大きな自信を与えてくれる。

ミッドソールには、密度の異なる2種類のEVAが使用され、適度な弾力性と反発力を確保。ヴィブラムのアウトソールは、厚さを従来の半分にすることで、性能を落とさずに軽量化することにも成功した。

プレシーズンで提供を受けたガイドやアスリートらからは、深めに作られたオリジナルのラグデザインが、岩だけでなく泥にも優れたグリップ力を発揮すると、高い評価を集めている。

ラストは比較的ナローだが、見た目の印象よりも甲まわりのボリュームがあり、足入れもかなりいいので、先入観を排して試してみることをおすすめする。ブーツの中で爪先が泳がない安心感は、高いレベルのクライミングシーンで、確実なアドバンテージになるはずだ。

レーシングの調整幅が大きく操作もしやすいので、クライミング要素が多い場面では締め上げ、それ以外は緩めるという細かなコントロールもしやすい。

他に類を見ないスタイリッシュなルックスに、気軽に使えるしゃれた登山靴だと思って手を出すと、確実に期待を裏切られることになる。初めての一足にも、幅広く使える便利な一足にもふさわしくはない。

この軽さもコンパクトな作りも、アルパインエリアを垂直移動するためのもの。岩場の足運びを身につけた経験者が、さらに高いレベルでのクライミングをめざして、より高い性能を求めたときにこそ、このブーツの価値が評価される。

あと一歩の剛性や安定性、残雪期の不安感を抱えながらアプローチシューズを使っていたなら、高い剛性とクライミング性能を併せ持ち、セミワンタッチアイゼンに対応する仕様は、この上ない魅力となるはずだ。

スマートな見かけによらず、硬派で骨のあるこの一足が、一歩先の世界の入り口を広げてくれるに違いない。

アクルックス LT ゴアテックス⁄アークテリクス

価格:　4万9500円（税込）
カラー:　1色
サイズ　23.0～25.0、25.5～29.5cm （ユニセックス）
問合せ先：
アークテリクス カスタマーサポートセンター/アメアスポーツジャパン
consumerservice-apac-ja@arcteryx.com
https://arcteryx.jp/

※当記事はROCK&SNOW095の内容を再構成し、掲載しています。