アークテリクスのハイエンドシェルがリニューアル。挑戦を支えるしなやかな着心地に注目!
「ハードシェル=着心地が硬い」という印象は過去の話。それはアークテリクスを代表するハードシェルにも同じことが言える。今季、さらに動きやすくなったハードシェルジャケットの重要なリニューアルポイントを解説する。
文=吉澤英晃 協力・写真提供=アメアスポーツジャパン
さらに動きやすく、より強く。人に優しい製品へ
2025年秋、アークテリクスのハードシェルがアップデートされた。雪山における縦走や登攀向けのジャケットで当てはまるのは「アルファ SV ジャケット」「アルファ ジャケット」「ベータ AR ジャケット」。いずれも多くの愛用者を抱える定番かつ人気の高いアイテムであり、リニューアルによってさらに完成度が高まった形だ。
とは言ったものの、従来製品を知っているユーザーからすると、改良点が見当たらないと思われるかもしれない。カラーリングはひと目でわかるリニューアルポイントだが、外見に大きな違いはないからだ。しかし、そでを通してもらえば説明はもはや不要だろう。ジャケットに触れる感覚がその答えを教えてくれる。
従来のePTFEメンブレン(左)と新たに採用されたePEメンブレン(右)の厚さの比較
アルファ SV ジャケット、アルファ ジャケット、ベータ AR ジャケットは、いずれもゴアテックス製品の最高ランクに位置する“ゴアテックスプロ”を採用したハイエンドモデルだ。そのゴアテックスプロのメンブレンが、今季からフッ素化合物を不使用のePEメンブレンに生まれ変わった。“フッ素化合物を使用しない”といった言葉を目にすると、環境には好ましいが、ユーザーが得られる実用的なメリットはないと思う人もいるだろう。
しかし、ePEメンブレンに切り替わったことで、製品の性能に大きな変化がもたらされた。それがしなかやな着心地であり、機能性を維持したままの軽量性だ。
しなやかな着心地の秘密は、メンブレンの厚さにある。ePEメンブレンの厚さは従来のePTFEメンブレンと比べると半分程度に収まっている。素材が薄くなれば生地は柔らかくなり、それに比例して着心地も向上する。
さらに、メンブレンが薄くなったことで表面の素材に厚みをもたせる余裕が生まれた。結果、厚みのある表地を組み合わせた耐久性の高い生地が重さを変えずに作れるようになり、それがプロダクトの強さに直結している。
昨今、フッ素化合物は人体の健康への悪影響が指摘されており、自然環境で分解されることがなく、残留性の高さも問題視されている。
世界の潮流が環境に配慮したモノ作りに舵を切るなか、ゴアテックスもほかの製品と同様に変革を迫られることになる。
フッ素化合物不使用のePEメンブレンの誕生にはそのような背景があり、人体への悪影響を防ぐ目的が開発のきっかけにある。フッ素化合物不使用=環境へ配慮した製品で間違いないが、根本には人と自然の安全を守ろうという意識があり、ePEメンブレンを採用したゴアテックス製品は、人と自然に優しい製品と言い換えることができるだろう。
これからも、しなやかな生地でより動きやすく、さらに強く、そして人に優しい製品に生まれ変わったアークテリクスのハードシェルジャケットに期待したい。
ベネフィットを引き上げる効果的な選び方
左からアルファ SV ジャケット、アルファ ジャケット、ベータ AR ジャケット
リニューアルされたアルファ SV ジャケット、アルファ ジャケット、ベータ AR ジャケットは、それぞれの得意とするシチュエーションが異なっている。各ユーザーのニーズに見合うジャケットを見極めるために、まずは主な用途を見ていこう。
アルファ SV ジャケットは、アルパインクライミングのなかでも最も過酷な環境を想定して開発されたアークテリクスが誇る最上級のジャケットだ。プロテクション性能は3モデルのなかで最高ランクに位置している。
アルファ ジャケットは、プロテクション性能こそアルファ SV ジャケットに及ばないが、軽快さを追求した着心地に強みがある。強度と軽さのバランスを理解し、環境変化への対応力を備える玄人向けといえるだろう。
ベータ AR ジャケットはほかと異なり、ハイキングシーンを想定した開発された。さらに、無雪期の山でも活躍する汎用性を備えている点もほかと違う個性といえる。一年中使えるコストパフォーマンスの高さに注目だ。
アルファ SV ジャケット
寒冷地でのハードなクライミングに
視界を遮る吹雪のなか露岩に体を擦り付けるような過酷なアルパインクライミングに対応する、同ブランドのハードシェルジャケットのハイエンドモデル。最高レベルの耐久性を考えて、表地には100デニールの生地が使われている。従来モデルと表地の厚さに変更はないが、ゴアテックスプロのメンブレンが薄くなったおかげで着心地がアップ。生地のしなやかさがそのまま動きやすさに直結している。
高度な縫製技術による立体裁断が見た目以上に秀逸で、そでを通してみると一切の無駄がなく体にフィット。まるでオーダーメイドのスーツを着ているようなフィット感と着心地の良さに感動を覚えるほどだ。登攀時の動きを考え尽くしたパターン設計で、腕を上げても手首が露出しにくく、裾のずり上がりも最小限に抑えられている。
フードはフィット感を調整できるヘルメット対応。襟は口元まで覆う高さがある
ベンチレーションファスナーを脇下に装備。広い開口部でジャケット内の温度を素早く調整可能だ
右腕のアームポケット、2つのチェストポケット、さらに内側に大容量のダンプポケットを2つ備えている
価格: 151,800円(税込)
サイズ: XS~XXL(メンズ)、XS〜M(ウィメンズ)
重量: 492g(メンズ)、420g(ウィメンズ)
カラー: 5色(メンズ)、4色(ウィメンズ)
メンズ詳細: https://arcteryx.jp/products/alpha-sv-jacket-m
ウィメンズ詳細: https://arcteryx.jp/products/alpha-sv-jacket-w
アルファ ジャケット
環境を見極めて軽さを活かす玄人向け
今季から全素材がゴアテックスプロに切り替わり、肩周りと上腕部のパネルには50デニール、身頃には20デニールのハドロンLCPグリッドを使用。高強度で知られる液晶ポリマー繊維(LCP)を格子状に組み込んだ表生地により、薄手ながら高い耐久性を備えている。好天をねらったワンデイのアイスクライミングや素早い行動を意識するアルパインクライミングなどにおすすめできる。
価格: 118,800円(税込)
サイズ: XS~XL(メンズ)、XS~L(ウィメンズ)
重量: 358g(メンズ)、301g(ウィメンズ)
カラー: 3色
メンズ詳細: https://arcteryx.jp/products/alpha-jacket-m
ウィメンズ詳細: https://arcteryx.jp/products/alpha-jacket-w
ベータ AR ジャケット
4シーズンに対応するオールラウンダー
積雪期はハードシェル、無雪期はレインウェアとして活躍する汎用性の高い人気モデル。従来は80デニールの表生地が使われていたが、ゴアテックスプロがePEメンブレンになったことで肩周りと上腕部のパネルの表生地が100デニールに改良され、重量は変わらずに耐久性が向上。製品の寿命が延びより長く着続けられるジャケットに生まれ変わった。
価格: 11万円(税込)
サイズ: XS~XXL(メンズ)、XS~L(ウィメンズ)
重量: 456g(メンズ)、395g(ウィメンズ)
カラー: 5色
メンズ詳細: https://arcteryx.jp/products/beta-ar-jacket-m
ウィメンズ詳細: https://arcteryx.jp/products/beta-ar-jacket-w
購入後のケアをサポート。ReBIRDプログラム
アークテリクスは自社のサステナビリティを推し進める「ReBIRD(リバード)」プログラムを展開中。国内では、東京都丸の内、新宿、大阪府心斎橋、北海道札幌に拠点を置く各サービスで、メンテナンス方法の説明や修理サービスの受付、軽微な故障の即日修理といった対応を行なっている(来店には予約が必要)。購入したら終わりではなく、充実のアフターサービスでユーザーの挑戦を長きに渡ってサポートする。10月30日には新たに池袋東武ブランドストアにも展開。
問合せ先:
アークテリクス ゲストサービスセンター/アメアスポーツジャパン
arcteryx.jp/