驚きの薄さと軽さで再設計されたアークテリクスの万能アルパインジャケット

文=小川郁代

軽さはハードシェルの重要な要素だが、クライミングでの使用を前提とすると、耐久性もそれ以上に高く意識せざるを得ない。相反する2つの要素の、どちらを優先しどちらを妥協するのか、その難しいバランスの見極めは、製品をつくるうえで大きな課題となる。しかし、もしかしたらそれは、もう過去の話なのかもしれない。

クライミング用ハードシェルのロングセラー「アルファ AR ジャケット」が、「アルファ ジャケット」と名前を変えた。ブランドのウェブサイトに倣ってあえてこう表現したが、リデザイン(再設計)で生まれ変わったライトな姿は、名前の変更というには、従来モデルとあまりに印象が違う。「幅広いアルパインコンディションで使える」というコンセプトに、思わず戸惑いを覚えるほどだ。

胸元で素材を切り替えたハイブリッドスタイル。岩や雪との断続的な摩擦にさらされる、肩や腕、背中の上部からフードには、高い耐摩擦性能を備える「ゴアテックス プロ モストラギッド」を使用。摩擦よりも引っかけのリスクが大きいボディには、超軽量で非常に高い引き裂き強度を誇る「ハドロン™  3L ゴアテックス」を使用した。

驚くべきはその薄さ。モストラギッドとハドロン™ の40D/20Dという組み合わせは、モストラギッド80D/40DだったARジャケットと、印象が違うのも無理はない。この薄さは、液晶ポリマーリップストップ(LCP)糸を細かいグリッド状に織り込んだ、ハドロン™ の圧倒的な強度があってこそ。40Dのモストラギッドも、他のモデルでの実績から得られた耐久性の評価をもとに採用されている。ゴア社との共同開発による飛躍的な素材の進化が、同じ目的で使うシェルを、ここまでの薄さにし、薄さ、軽さ、耐久性のどれも妥協せず、すべて手に入れることを可能にしたのだ。

もたつきやすい腕周りは、脇下にハドロン™ を使用することで、動きやすさが大幅に向上した。立体的なカッティングが施されているにもかかわらず、コンパクトに収納できるので、着脱を前提とした使い方にも使用範囲が広がる。雪や氷の寒冷な環境だけでなく、暖かい季節のレイン・ウインドシェルとして、活躍の時期は圧倒的に長くなる。調節機能に優れたヘルメット対応のフードや、脇下の大型ベンチレーションなど、アルパインジャケットとしての仕様は、なにひとつ省略されていない。ゴアテックスの優れた防水透湿性は、あえて言うまでもないだろう。

軽さと引き換えに失ったものといえば、物理的な保温力と安心感だ。冬の八ヶ岳で使用したガイドも「最初はこれで大丈夫かと思ったが、動きやすさは抜群で、耐候性もまったく問題なかった」とレビューを寄せた。もちろん、状況に合わせて適切なレイヤリングを見つける力が、ユーザーに求められることも間違いない。

雪や氷の環境を見据えて作られた機能性は、本来の活躍の場であるアルパイン環境で生かしてほしいところだが、この快適でスマートな一着を街使いするなというのは、無理な注文だろう。販売は直営店と公式オンラインストアのみ。「本当にこれで大丈夫なのか」という前向きな疑いを、ぜひ体感で払拭してほしい。

アルファ ジャケット
価格: 9万2400円
カラー: 4色
重量: 370g(M)
問合せ先: アークテリクス カスタマーサービスセンター/アメア スポーツ ジャパン
arcteryx.jp