ロングセラーが本物の価値を証明する アークテリクスのソフトシェル

小川郁代=文

アークテリクスのアパレルといえば、「アルファSV ジャケット」が頭に浮かぶ人は多いだろう。1998年にブランド初のアパレルとして登場するや否や、アウトドアはもとよりファッションシーンからも熱い注目を受け、20年以上たった今も変わらず支持を受け続けている。それと時を同じくして誕生したのが、「ガンマ MX フーディ」。アルファ SVと双璧をなすロングセラーのソフトシェルジャケットは、もともとはアイスクライミング用のアウターとして開発された。

防風性、保温性、通気性、ストレッチ性など、ソフトシェルの機能は実に多彩だが、何に重きを置くかのバランスで、使用シーンや目的が大きく変わる。「ガンマ MX」は、抜群の動きやすさと耐久性に加え、アークテリクスのソフトシェルのなかでも保温性が高く、寒冷なアルパイン環境下での使用を意識した設計がされている。

素材には、優れた撥水性と耐久性を備えるオリジナル素材「Fortius 2.0」を使用。通気性を備える中厚の生地に、毛足の短いフリースの裏地を張り合わせることで、保温性と通気性のベストバランスを導き出した。驚くほど効果の高い耐久撥水加工と、岩や氷との接触に負けない耐久性。フロントファスナーの内側に備えられたウインドフラップや、内側のすべての縫い目に防水シェルさながらのシーム加工が施されているのは、保温性や防風性、製品強度を高めるための工夫だ。

高めの襟と一体化したヘルメット対応のストームフードは、後頭部と襟の内側のコードで素早く調整が可能。ソフトなひさしが上部からの雨や雪をブロックし、幅広い視界を確保する。手の甲を覆うようにカーブがつけられた袖口は、手首側にのみストレッチテープが配され、手を通すだけで最適なフィッティングが完了。切り替えや付属パーツがないので、レイヤリングをじゃますることもない。

今季「ガンマ MX フーディ」は、フィッティングをややゆとりのあるものに変更した。新旧の差はごくわずかだが、腕を伸ばした状態で平置きすると、旧モデルは袖のラインがほぼストレートだったのに対し、ニューモデルではカーブが現われ、より立体的なカッティングに変更されたのがわかる。目には見えないが、耐久性撥水加工で、有機フッ素化合物を使用しないPFASフリーを実現したことも、非常に価値のある進化といえるだろう。

コンセプトを変えず作り続けられてきたが、素材の進化に伴って「ガンマ MX フーディ」の用途は、誕生時と比べて大きく広がった。より軽く、強く、伸縮性も強化されたことで、バックカントリーやハイキングでも、持ち前の使いやすさを存分に発揮する。ハーネス対応の胸ポケットだけでなく、ハンドポケットもあるのはありがたい。レイヤリングもしやすいので、インナー次第で活躍期間はかなりかなり広げられるだろう。

自然に浸る時間も、気温差が大きい街なかでも、秋冬を通して最も袖を通すのは、ソフトシェルではないだろうか。誰もが知る定番は目新しさや刺激とは無縁だが、手に取ればすぐにわかる着心地のよさや丁寧なつくりからは、本物の価値を見せつけるような説得力を感じずにはいられない。

アークテリクス
ガンマ MX フーディ
価格=6万8200円
カラー=5色
㉄アークテリクスカスタマーサービス
センター/アメアスポーツジャパン
arcteryx.jp/

*当記事はROCK&SNOW105号の記事を一部編集し、再掲載したものです