通気性で快適性に磨きをかける アークテリクスのクライミングハーネス

スタイリッシュで高機能なアパレルがブランドの顔となった今も、クライマーにとってのアークテリクスは、ハーネスのトップブランドとしての存在感が大きいだろう。1989年の創業以来、多くのクライマーが「これ以外は使わない」と口にするほどの絶大な支持を受け続けていることは、 使用経験のないクライマーの耳にもおそらく届いているはずだ。その理由はまぎれもなく、ほかでは得ることのできない、圧倒的な快適性にある。  

アークテリクスのハーネスは、「ワープ・ストレングス・テクノロジー」という、非常にユニークな製法で作られている。高強度ナイロンを縦横 に編み込んだ一本のスリングから、両端を残して 縦糸を抜き取り、残った横糸をウエストベルトの形に幅を広げてラミネート成型するという手法。 こうして作られる、つなぎ目のないベルトが、ハンモックのように体を包み込んで、ぶら下がりやフォール時の圧力を分散する。限界に挑戦するクライマーや長時間のビレイを行なうガイドら、日常的に荷重や衝撃のストレスにさらされる人たちに、長年の愛用者が多いことにも納得がいく。

一方で、気温の高い環境で長時間着用すると、 どうしてもベルト部分の通気性が損なわれ、着用時に蒸れを感じるという声が以前からあった。それを解消するために誕生した新作「スカハ ハーネス」は、従来の路線から大胆に舵を切った。

違いは一目瞭然。ベルトの表面は、以前使われていたフラットな生地から、立体感のあるソフトなメッシュ素材へと変更された。基本的な発想や技術は同じだが、広げたスリングを、ラミネートではなくステッチで形成することで通気性を確保 し、それを最大限に生かすメッシュ素材でカバーリング。ベルトやレッグループの幅をコンパクトにしたことも加わって、蒸れや暑さの大幅な軽減を成し遂げた。衝撃吸収力や快適性が損なわれていないのは言うまでもないが、フィールドテスト で、これまでを超える快適性の評価を受けたことは、さらに期待が高まるところだ。  

細身のストラップやコードの採用により、従来のどのモデルよりも軽量な仕上がり。全体的にソフトな作りのせいか、ベルトの厚みでコンパクト性が損なわれた印象はない。通気性が必要な、ドライな環境でのクライミングを目的とするため、 アイスツール用のスリーブなどはなく、レッグループも固定式だが、ストラップに伸縮性があるため、パンツの厚みの変化にも、ある程度対応する。あまり大きくゆとりを設けず、太ももにフィットさせるスタイルなので、試着をして使用感を確かめてからサイズを決めるのがいいだろう。  

従来モデルの、一目でアークテリクスとわかるスマートで個性的なルックスを、この新作は、さらなる快適性のために迷いなく手放した。以前のモデルを知っている人にも、初めてアークテリクスのハーネスに触れる人にも、本質の部分で受け入れられるという、絶対的な自信の表われであり、自分たちのアイデンティティを、あらためてクライマーに提示しているように見える。この新作の誕生は、アークテリクスのハーネスの歴史に、明らかに名を刻むことになるだろう。

スカハ ハーネス
価格: 2万9700円
カラー: 1色
問い合わせ先: アークテリクスカスタマーサービス センター/アメアスポーツジャパン
arcteryx.jp
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