ムーブ・体力的ともに基礎ができているがグレードが上らない人へ「保持力向上法」

クライミングのレベルアップにおいて必要不可欠なのがホールドを持つ力、つまり「保持力」。ここでは、保持力をこっそり向上させるのに有効な練習法を紹介する。少し登り方を変えるだけで、トレーニング効果抜群だ!

*この記事は『CLIMBINGjoy No.10』掲載記事をもとにしています。

保持力の必要性とトレーニングについて

クライミングをしていて、あるムーブができない、あるいはうまくいかない、確実性がないなどの最大の理由は、保持力の不足だろう。ガバホールドならできるムーブが、スローパーや小さなカチ、ポケットホールドだとできないのは、そのホールドを保持する力が足りない証拠。だから重心の移動がうまくいかず、次の手を出すときにバランスが崩れて落ちてしまうのだ(クラック・クライミングのジャミング技術は別として)。

クライミングでは常に、次の一手を取るための体勢づくり(準備)が最も大切。デッドポイントなどの不確実なムーブも含め、すべてが準備の連続だ。この、次の一手のための準備を意識して練習しよう。

保持力が十分にあると重心移動がスムーズに行なえる。つまり保持力を向上させれば、ひじを伸ばしての動作も、完全に引き付けて、ひじをロックしてホールドの真下に重心を移動することも、楽に、しかも“美しく”無駄なくできるようになるのだ。

ここで伝えたいのは、これから紹介する登り方(練習法)は必ずしもオーソドックスではないということ。あえて負荷のかかる登り方を自分に課すことで、保持力の強化を狙う方法だと理解してほしい。

保持力を身につける練習をして「美しく」登ることを意識しよう。個々のムーブを「美しく」表現できるようになると「強さ」にもつながっていくはずだ。そしてムーブに対して美しさを意識し、体のブレをなくすこだわりをもって練習しよう。ひとつひとつのムーブの美しい「点」が流れる美しい「線」となり、やがて結果につながることを信じて。

カチ持ちで一度登った課題を、再度オープンハンドで登ってみよう。課題の印象とグレードがかなり異なって感じられるはず。

オープンハンドで登るトレーニングをするときにおすすめなのは、ポケットホールドを使うこと。ポケットを持つと必然的に2~4本指のオープンハンドになるので、保持力強化にはもってこいだ。ただし指を痛めやすいので気をつけて!スローパーホールドも指を立てず、指の腹のフリクションで保持する感覚でトライすること。ガバホールドでも3本指で保持すると、かなりきつい。

あとは次の一手を取る際に、出す(動かす)ほうの手でホールドを止めるだけでなく、残す(体を引き付ける)ほうの手でホールドを止めることも意識しよう。これが、あなたの保持力をより強化する。

オープンハンドが強くなると、逆にカチ持ちしたときにすごく楽に。岩場の課題やコンペなど、トレーニングではなく“本番”では自由にホールディングしてかまわない。