「動かす前に整えよう!」 クライミングでライバルに差をつける姿勢改善のススメ

最近、ボルダリングジムでもTRX(自重トレーニング器具)やゴムチューブ、スラックライン(ベルト型綱渡り)などのトレーニング器具をチラホラ見かけるようになりました。

数年前のイメージなんかでいうと「トレーニングなんて」という風潮もあったように思います。 しかし、ようやくスポーツクライミングの業界にも「トレーニングが必要」だという考え方が浸透しつつあるのです。

ただ一方で、よく耳にするのが「トレーニングはしているんだけど強くならない」という声。 これってなぜでしょうか?

キーワードは、『動かす前に整えよう』

「整えるって言っても、一体何を整えるの?」
その答えはズバリ「姿勢」です。

僕はユースクライマーのトレーナーをしているのですが、クライマーは猫背がとても多い印象があります。 壁に体を引き寄せる動きが多いので、胸の筋肉(大胸筋)を始めとする体の前側の筋肉をよく使うのは当然といえば当然ですね。 しかし、 人のからだは「歪み」が生じてしまうと関節の動きが硬くなり、正しく機能しづらくなってしまいます。

少し試してみましょう。
まず足を腰幅にして立ち、背中を丸めてみてください。 そして両方の腕を前から上にあげていきましょう。

今度は背筋を伸ばして、同じように両腕を前から上にあげていきましょう。

いかがでしょうか?

おそらく後者の方が腕をあげやすいと思います。 体は間違った位置から使うと、筋肉にかかる負担が大きいという証明です。 そして、勘の鋭い方ならお気づきかもしれませんが、姿勢は「リーチ」にも影響します。

背中が丸まっている状態からよりも、背筋が伸びている状態からのほうが腕は伸ばしやすいですよね。 また、姿勢は故障とも因果関係があるといわれています。 これは姿勢が歪むことによって、器用に使える部分と使えない部分を生み出してしまうためです。

運動能力は姿勢という土台の上に立っている

器用に使える部分は意識していなくてもしっかり使えるのですが、器用に使えない部分は意識しようと思ってもうまく使えないまま。 そうすると、特定の箇所だけに身体的なストレスがかかるため、いつしかその箇所に筋肉の緊張感や痛みが生じてきます。 痛みなどが出ると、その部分をかばい余計に姿勢が悪くなってしまいます。 そんな状態で練習やトレーニングをしようとしても、上手くいかないのは想像がつきますね。

運動能力は姿勢という土台の上に立っています。 土台が小さいにも関わらず、上に大きなものを乗せると崩れてしまいます。

「同じジムで、同じ背格好で、同じ練習をしているのに、何故自分だけケガをしやすくパフォーマンスが上がらないのだろう?」

というお悩みを持たれたことはありませんか?

これは運動するための土台=姿勢の問題であるかもしれません。
では、実際にどうやって姿勢を整えていくのか、今回は3つのエクササイズをご紹介します。

1、胸の筋膜ストレッチ

  1. 立って足を腰幅に広げた状態から、伸ばす側の腕を大きく横に広げる。
  2. 広げた手で、柱や壁の角、手頃なホールドをつかむ。
  3. 伸ばした側の足を一歩前に出し、そのまま骨盤からゆっくりとひねりを加える。

伸ばした側の肩が上がってしまわないように、肩甲骨を下げる意識をしましょう。 また、伸ばされている胸の部分を反対側の手で触りながら、そこに空気を入れていくような意識で深呼吸をすると、より効果的です。

2、胸の横側伸ばし筋膜ストレッチ

  1. 立って足を腰幅に広げた状態から、伸ばす側の腕を大きく上にあげる。
  2. 反対側の手で、伸ばす側の手首をつかんで少し上に引っ張る。
  3. そのまま体を横に倒していき、体の側面が弓なりになるように伸ばす。

気持ちいいと感じる程度まで伸びたら、伸びていると感じている部分に空気を入れていく意識で深呼吸をすると、より効果的です。

3、キャットバック

1. 四つ這いになる。

肩の下に腕、股関節の下にヒザが来るようにポジショニングしてください。顎を引いて頭の後ろから背中、骨盤のラインはまっすぐになるように心がけましょう。

2. みぞおちが背中を通って、天井に向かって動いていくイメージで背中を丸める。

おへそを覗き込むようにすると動きが意識しやすいと思います。

3. 今度はみぞおちが地面にくっついていくようなイメージで背中を反らせて行きます。

顔は前方を向くまであげ、背中を反らす動きを意識してみましょう。 これを数回繰り返していきます。

1と2の目的は、胸の前側と横側を伸ばして、背中を引きやすい環境を作ること。
3の目的は、その上で背中の動きをつけることです。

まずは1日トータル10分以内を目安に始めてみましょう。 なお、肩や腰に不快な痛みを感じる場合は、無理せずに中止するようにしてください。

無理な練習やトレーニングで追い込むこともたまにはいいですが、まずは姿勢を整えることから始めてみるのはいかがでしょうか。

 

 

※本記事は2017.06.17に掲載されたものです。

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