山で亡くなった友への弔いと追憶の旅路。
台湾発のドキュメンタリー映画『雪解けのあと』、東京・渋谷ユーロスペースで公開中

2017年春にネパールのガネッシュヒマールで実際に起きた山岳遭難。高校を卒業してまもない若い台湾人カップルがトレッキング中に行方不明となり、1ヵ月半後に救出された。一人は死亡、一人は水と塩で飢えをしのいで47日間にわたって生きながらえたという特異な事故は、彼らの母国・台湾でセンセーショナルに報じられた。

事故から7年。本作は、台湾人カップルの友人で、本来このトレッキングに参加予定だった監督のルオ・イシャンが、亡くなった友への弔いと追憶の旅に出たドキュメンタリー。遭難した仲間がめざした場所への言及や、なぜ遭難したかについての詳細な検証はない。映画のモチーフは、かけがえのない人を失った者が抱えるトラウマと、その向き合い方に終始フォーカスされる。

文学を愛好していた友は、亡くなる直前まで膨大な記録をつけていた。主人公たる監督は、その風雪にさらされたノートを紐解きながら、友が生きた日々を思い、ひいては彼らの遭難現場まで足を向ける。素朴なカメラワークで捉えられた、ガネッシュヒマールの山並みや照葉樹の森、仲間の足跡をたどる自らの足元……。友が目にしたヒマラヤの山岳風景と対峙しながら思索を重ね、やがてひとつの季節の終わりを受容するまでの展開は、監督自身の成長物語のようでもある。

大切な人を失ったとき、その死や喪失とどのように向き合うか――-そのひとつの答えが描かれる。

***

来日したルオ・イシャン監督(右)とプロデューサーのチョン・ヨンシュアン氏。
6月14日、渋谷ユーロスペースでの公開初日、舞台挨拶にて

『雪解けのあと』
2024年製作/110分/台湾・日本合作/配給:テレザ
原題:雪水消融的季節 After the Snowmelt

 

●公開劇場
東京/ユーロスペースほか、北海道/札幌シアターキノ、長野/上田映劇、愛知/ナゴヤ キネマ・ノイ、大阪/第七藝術劇場、京都/京都シネマ、広島/横川シネマ にて順次公開予定。

同一カテゴリの最新ニュース