バルバラ・ツァンガール、ベス・ロッデン初登のMeltdown(5.14c/8c+)再登

Nick Brown ukclimbing.com
訳=羽鎌田学

10月28日、オーストリア人女性クライマー、愛称バプシ・ツァンガールが、ヨセミテ渓谷のアッパー・カスケード・フォールズでMeltdown(5.14c/8c+)の第4登に成功した。滅多に再登されることのないこのルートは、2008年に米国人女性クライマー、ベス・ロッデンによって初登され、しばらくの間、アメリカ合衆国で最もハードなシングルピッチ・トラッドルートであっただけでなく、当時、女性クライマーによって初登された最難トラッドルートでもあった(我々の知る限り、現在もそうである)。


Ben Neilson / Black Diamond

バプシは2016年に初めて、エル・キャップへの挑戦の合間に数日間このルートに触れたが、昨年2022年11月にはMeltdown再登を目標にヨセミテを再訪。しかしその後、渓谷を襲った吹雪のせいで一旦トライを断念しなくてはならなかった。そして今秋、10月中旬にヨセミテに戻り、再びトライを開始。彼女は今回の経験について次のようにコメントしている。

「私にとって、それはまさに精神的な戦いでした。核心に到達できる確率が常に低かったので、パワーを温存するためにギアを最小限に切り詰める必要がありました。足がフットホールドにしている極小エッジから外れるか外れないかは、五分五分に近かったのです。事実、何度も何度も足を滑らせてしまいました。

完登の日、この困難なシーケンスを無事乗り越えた時、『今がチャンスだ。落ち着かなくては』と、自分に言い聞かせました。実際、そこで終わりではなかったのです。ルート上部はまだ非常にハードで、最後のマイクロナッツをセットするところが極めて微妙だったのです。最後のハードな2手で、ほとんど落ちそうになりました。とても象徴的なラインであり、インスピレーションを与えてくれたベス・ロッデンに大いに感謝します。あなたはレジェンドです!」

フィンガーロックとレイバックを多用してシンクラックを辿るこのルートは、その昔、かのロン・カウクのプロジェクトだった。特に危険なラインではなかったが、ギアは小さく、扱いにくく、セットが厄介だった。ベス・ロッデンの初登の様子は2008年公開の今や古典的なクライミング映画シリーズ『Dosage』第5巻で取り上げられたが、米国人クライマーのカルロ・トラヴァーシが第2登に成功したのは、2018年になってからだった。

2018年の再登時、カルロはルートの質とベスの初登の両方を以下のように称賛している。

「10年前にこのラインに命を吹き込んだベス・ロッデンのビジョン、粘り強さ、そして驚異的なクライミング能力に心から感謝する。このラインの初登はクライミング史の中でひとつの輝く指標となり、私がここ数十年間で思いつく限り最も印象的な成果のひとつだ。彼女に大いなる敬意を表する」

バプシはまた、Meltdownは彼女がこれまでに登った中で最難のトラッドルートであり、そのグレードの中では難しい一本であると感じたと述べている。彼女は高難度クライミングの経験が豊富で、ここ数年では、トラッドでは南仏アノの岩場でジェームス・ピアソン初登のLe Voyage(E10 7a)、スポートでは地元オーストリア、ローリュンスの岩場で彼女のパートナー、Meltdownを昨年11月に第3登しているヤコポ・ラルケル初登のSprengstoff(9a)、そしてアルパインではカラコルムのトランゴ・タワー(6240m)南壁でEternal Flame(VI 7c+/5.13a、650m)などを再登している。

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