デイブ・グレアム、Fuck the System(8C+/V16)を第2登

文=デイブ・グレアム  訳=羽鎌田学

4月にティチーノでEuclase(V16)を初登したばかりのデイブ・グレアムが、フィオネのFuck the System(V16)を第2登した。ショーン・ラブトゥ初登の課題だが、そもそもはデイブが設定したラインであった。以下はデイブのフェイスブックより。

6月25日、スイス、ヴァレー州フィオネ村で、ショーン・ラブトゥが初登したエクステンション課題を、5週間ほどのトライの末に、第2登できた。実は、Fuck the Systemは、2013年に私が初登したFoundation’s Edge(8C/V15)のダイレクトスタート版で、当時私自身もトライしていたプロジェクトであったが、実際には登り方を解き明かすことができないでいた。その後は課題から離れていたが、ラインは私の脳裏に焼き付いたままだった。はっきりと刻まれたホールド、抜群のフリクション、そして壁の美しい傾き。昨年、ショーンは、私が背の低いボルダラーならこうやって登れるだろうと想像した方法で見事に初登した。しかし、それは、私の体のサイズ、クライミングスタイルでは、まったく不可能に感じさせられる方法だった。

今年の冬は、ボルダリングのスキルを磨きながら、特にニーバーの練習に励みながら、ティチーノで過ごした。そして、5月にギリシャに向かう前に短期間フィオネに立ち寄った。その時、非常に微妙なニーバーを効かせる私でも可能性のあるシークエンスを見つけることができたのだ。そして16日後、再びフィオネにやって来た私は、思い描く手順でムーブを繋ぎ合わせる作業に入った。すると、驚いたことに、確実に個々のムーブが繋がり出したのだ。快適な気温の下、フットワークとか手のポジションとかに微調整を施しながら5日間集中的なトライを重ね、Foundation’s Edgeの最後の2、3ムーブで落ちるところまで進歩した。課題を登り切ることが単なる夢から現実になりつつあることに気付き、自分でもびっくりして興奮した。

しかし、世の中なかなかうまくいかない。次の2週間は雷雨続きで、岩は濡れ濡れ。でも、なんとか乾かせるパートがあれば、そこだけでもトライした。特に課題上部半分の練習を重ねる。下部のスタート部分のホールドが乾くのを期待しながら。その後の2週間は、今度は熱波。課題のある岩は乾いたが、気温が一気に10℃もアップ。セッション毎に4、5回は、飛びつき気味のムーブで落ちてしまう。そこが私にとっての最大の核心となり、トップに躍り出ることは叶わなかった。そのうちにニーバーで落ちたり、スタートで落ちたりと、下半分で落ちるようになってしまった。希望を失いつつあった。もう本格的な夏も近づきつつある。

そして私にとっての事実上の最終日。気温13℃、湿度95%。2度トライしたが散々な結果だったので、それ以上の無駄な努力をせずに秋まで課題を封印することにした。

で、最後にあまり考えず、よくするトレーニングセッションのつもりで課題に取り付く。すると今までに感じたことがなかったスムーズさで体が動くではないか。例の飛びつきも偶然にも止まる。そして激しいパンプに見舞われながらもワンムーブ、ワンムーブをこなし続ける。最後のトラバースでも落ちなかった。そしてトップに立つ自分。我ながらすっかり驚いてしまった。オー、アイ・ラブ・クライミング。やっていれば、必ず報われるといったところか。ひたすら前進あるのみ!

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