ケイティ・ラム、 “再度”歴史に名を刻む
ヨセミテ最難ボルダー課題、The Dark Side(V16)完登

gripped.com  訳=羽鎌田学

ケイティ・ラムが、最近、ヨセミテ国立公園最難ボルダー課題であるThe Dark Side(V16/8C+)を女性ボルダラーとして初めて登った。2023年12月下旬にカルロ・トラヴァーシによって初登されたこの極めてテクニカルで繊細なラインは、キャンプ4横の森に位置するスリラーボルダーにある。カルロは初登まで7年もの歳月を費やしたこのラインを「人生で最も難しいボルダー課題」と呼んでいる。

今回のケイティの成果は、少し奇妙に聞こえるかもしれないが、女性として世界初であるV16課題完登の2度目の快挙となる。彼女は、2023年7月下旬、米国コロラド州ロッキー山脈国立公園にあるダニエル・ウッズ初登のBox Therapyを女性ボルダラーとして初めて完登(通算第4登)した。ただ、このBox Therapy、当初はV16(8C+)とされていたが、ケイティの完登から数ヵ月後の2023年10月上旬、ブルックとショーンのラブトゥ兄妹がやはり共に完登し、V15へのダウングレードを提言。それに対して初登者のダニエル・ウッズも同意し、現在はV15(8C)となっている。ケイティによるThe Dark Sideの完登は通算では、今年の1月初旬に第2登したエイダン・ロバーツ、その後のキーナン・タカハシに次ぐ、第4登となる。

「この課題のフリクションを、登る者がその気まぐれさに左右されてしまい、積極的に働きかけることのできないものとして捉えてしまうことは、容易に罠にはまるようなものです」と、ケイティはインスタグラムで語る。

「でも、私はこの考え方を改めることを知ったのです。フリクションとは、じっくり向き合い、積極的に耳を傾け、理解を深めるために必要ならば助けを求めるべき、能動的に取り組むことのできるものなのです。この世のあらゆるものが摩擦を最小限にするように作られているにもかかわらず、登る者にとっては張り付く瞬間があるのです。大切なのは、万全の準備ができていたかどうかがはっきりするそのような重要な瞬間に、岩に取り付いているかどうかなのです」

Box Therapyを登ったケイティ・ラムとブルック・ラブトゥ以外にも、白石阿島、カッディー・レーマン(独)、石井秀佳、ヤナ・シュヴェツォヴァー(チェコ)、ヤーニャ・ガーンブレット(スロベニア)、マリーヌ・テヴネ(仏)、ミカエラ・キルシュ(米国)といった6人の女性がV15(8C)を完登している。また、ケイティは他に、カルフォルニア、カークウッドレイクでカルロ・トラヴァーシ初登のEquanimity、レイクタホでジミー・ウェッブ初登のFallen Angelという2本のV15課題を、それぞれ2024年8月と9月に登っている。

ケイティは、世界屈指のボルダラーのひとりで、輝かしき経歴の持ち主だ。特に2023年は素晴らしい一年で、年明け早々の2月上旬にはカリフォルニア、ビショップのバターミルクで2001年デイブ・グレアム初登の超クラシックな課題、Spectre(V13)を女性で初めて完登し、個人的なグレードをV14とコメント。そして、同年7月には当時はV16だったBox Therapy(V15)を、9月にはカナダのスコーミッシュでDeadlift(V14)を、続いて10月には瑞牆でDecided(V14/5段)を続けざまに登っている。

また昨年は、5月には、ヨセミテ国立公園で驚異的なV11ハイボール、24 Karatを初登する一方で、8月には、第2登者のジミー・ウェッブが「世界最難のテクニカルボルダー課題候補」と評したEquanimity(V15)を、同年後半には、カルフォルニア、レイクタホでデビッド・フィッツジェラルド初登のEcho Chamber(V14)と前述のFallen Angel(V15)、そしてヨセミテ国立公園でカルロ・トラヴァーシ初登のThe Rookery(V14)を女性初完登している。

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