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ピオレドール2026 受賞チームが発表
写真提供=Piolets d‘Or 事務局
文=和田 薫
2026年9月4日、ピオレドール賞2026が発表され、今年は4つの登攀が選ばれた。
ウルタルⅡ峰(ウルタル・サール)南東ピラー(7388m、パキスタン)
イーサン・バーマン(米国・カナダ)、マールテン・ファン・ヘーレン(カナダ)、セバスティアン・ペレッティ(オーストラリア)
Shooting the Moon (3,100m, M5 WI4)
ウルタルⅡ峰は、カラコルム山域西部のフンザ渓谷に位置する難峰として知られる。カラコルム・ハイウェイから10㎞ほどのアクセスであるにもかかわらず、多くの力のあるクライマーたちのトライをはねのけてきた。1996年に南壁を山崎彰人・松岡清司ペアが初登頂した、日本にも縁のあるピークでもある。 さらに南東ピラーは、10以下の有力隊がトライしてきたが、2011年に佐藤祐介・一村文隆ペアの約6500mが最高到達地点であった。
バーマンら3人は前年の2024年にもトライした上で気温の上がる時間帯を避けることを決め、2025年6月6日から夜10−11時に起床、深夜からの登攀を6日間続けた。核心の6650mからはアイスと岩のミックスが7150mの最終ビバーク地まで続いた。11日の朝9時に登頂するも、下山は悪天候に見舞われたため、夜通し約70回の懸垂下降を繰り返し、BCへたどり着いた。 バーマン自身が『ROCK&SNOW』109号に詳細な記録を寄せてくれているので、ぜひ一読いただきたい。

アイカチェ・チョク(6673m、パキスタン)
北西壁 ジョージ・ポンソンビー(アイルランド)、ジェームス・プライス(英国)
Secrets, Shepherds, Sex and Serendipity (3,000m, M7 A2+ AI5)
ポンソンビーとプライスの2人は英国のヤング・アルピニスト・クラブ(英国山岳会等がサポートする若手クライマーの養成プラグラム)のメンバーで、今回の遠征が3年間のトレーニングの締めくくりとして行なわれた。メンバーらはバルタール渓谷にBCを設置し、2人は1983年に南側から一度登られたのみのアイカチェ・チョクを目標に設定し、10月12日に合計10日にわたるクライミングを始めた。難易度の高いミックスクライミングが続き、満足なビバーク地もルートも見つからず2人は引き返したが、翌朝再挑戦し別のルートから登頂を果たした。同じルートでの下山は現実的でないと判断し、情報が全くないなか、2人は西側へトラバースしてクーロワールを懸垂下降し、2日後に無事BCへ戻った。若い2人が強いコミットメントと粘り強さを発揮した上での登頂であった。
ポンソンビーはこれが初めてのヒマラヤ遠征での受賞となった。

イェルパハー・グランデ(6634m、ペルー)東バットレスの初完全登攀とイェルパハー・スールへの完全縦走
ブル・ブソム、ルベン・サンマルティン、マルク・トラジェス(ともにスペイン/カタルーニャ)
The Essence of Commitment (1400m, 6c+ M6+ 95°)
ペルーで2番目に高い山であるイェルパハーは、かつて1950年に初登頂されたものの、その難度からあまり登られていなかった。3人は壁の左側から取り付き、6c+のピッチが2つ、WI5 M6+のピッチが4つ含むラインを進み、さらに最高6c+の純粋なロッククライミングを経て東稜へ達した。なお、この時点で彼らが持つギアでは到底、撤退は不可能なことがわかっていた。レスキューも期待できないことから、ルート名を「エッセンス・オブ・コミットメント(確固たる決意)」と命名した。その後、懸垂氷河や雪と氷のオーバーハング等を超えて丸3日近くを要して登頂。クライミング開始後5日目に、600mのマッシュルーム状の稜線を超えてイェルパハー・スール(南峰、6480m)へ到達した。その後、東南壁を下降した。

ジャヌー東峰(7460m、ネパール)初登頂
バンジャマン・ヴェドリーヌ、ニコラ・ジャン(ともにフランス)
Le Sommet des Pieux (2300m, M6 WI5)
ジャヌー東峰は、ジャヌー主峰(7710m)から幅の狭い2㎞の稜線でつながっている。何十年間も多くのクライマーがその頂上を目指してきた。
2人は、自身の軽量装備かつスピード登攀という強みを存分に活かせるルートをジャヌーに見出した。10月12日、彼らは壁の下にある氷河上の標高5100m地点から出発、プロテクションの乏しいM6のミックスピッチや急峻な雪面を含め、1100mを初日に登りきった。その後、6900m地点で東稜へ抜け、雪庇の発達した痩せた尾根をたどり登頂した。下山には50回の懸垂下降で1日半を要した。
なお、2人が高所順応のために日帰りで登ったアニデシュ・チュリ(6808m)も初登頂で、今年のピオレドールの「ビッグリスト」(受賞対象候補のリスト)に入っている。
ヴェドリーヌは昨年アルプスやヒマラヤでの登攀やパラグライダー、スキー滑降などの登山に対し、ピオレドール特別賞を受賞した、要注目のクライマーだ。

また、8月26日にはこれらの発表に先駆けて、女性特別賞として、フランスのティフェヌ・デュペリエの受賞が発表された。デュペリエは、2025年6月、ナンガパルバット(8125m)のルパール壁を長年のパートナー、ボリス・ランゲンシュタイン、ダヴィト・ゲトラー(ドイツ)と登攀、スキー滑降で下山した(ゲトラーはパラグライダー)。これまでもヒマラヤをはじめ、世界中の大山脈でのスキー滑降で世界を驚かせてきた。
ピオレドールは女性によるアルピニズムを推進するため、2023年から女性チームの登攀や女性がリーダーの男女混合チーム、または単独登攀を表彰する特別賞を設けている。

生涯功労賞は、オーストリア、チロル出身のペーター・ハーベラー。幼い頃から登山を始め、ラインホルト・メスナーとともに史上初のエベレスト無酸素登頂をしたことでも知られる。84歳となる現在も毎日登山やスキーを楽しんでいるという。

授賞式は、2年ぶりにイタリアからフランスに場所を移し、フランスアルプスのエクラン山塊に位置するサン・クリストフ・アン・オワザンにて10月21日から25日にかけて開催予定。
