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「グレードの基準となるルートを選定する」
ROCK & SNOWテストピースアンケートを実施します
各グレードの基準となるようなルートを決めることができないか?
ボルダリング1級の基準となっている「忍者返し」や「エイハブ船長」のようなルートを――。
そのようなルートを「テストピース」と名付け、クライマーへのアンケートをもとに選定する企画を始めました。そこで、あなたの考える「5.XXのテストピース」を教えてください。このアンケート結果をもとに、3月発売のNo.107で、各グレードのテストピースルートを決定します。
テストピースの条件は以下のようなものです。多くのクライマーからのご意見をお待ちしております。
アンケートはこちらから→ROCK & SNOW No.106「日本のテストピース」アンケート
回答締切:2025年1月5日24時00分
選定にあたっての基準
1)「このルートこそがまさにこのグレード!」と思えるルートを選定したい
2)スポートルート(ボルトルート)のみを対象とする(クラックルートやトラッドルートは対象外)
3)そのグレードにおいて極端にハードだったりトリッキーだったりするムーブがなく、バランスのとれたルートが望ましい
4)あまりに短いルートや実質ワンムーブだけが課題となるようなルートは対象外とする
5)ホールドの欠損などが起こりにくく、できるだけ安定したルートが望ましい
6)マイナーなエリアやルートだと実態を知る人が少なく、多くのクライマーの基準になりにくいので、メジャーなエリアのメジャーなルートが望ましい
7)ルートの質が高く、みなが目標にしたくなるものだとなおよい
8)トポなどに載っているグレードと体感が異なるルートを選びたい場合は、ひとまずは感じたグレードを優先する(その体感が多くの人に支持されるようであれば、それを採用することもあり得ます)
なぜテストピースが必要なのか
現在、クライミングのグレードはかつてないほど混迷しているといえるでしょう。
クライマー人口の増加や世代の交代、岩の経年変化、ジムグレードのバラツキ、海外の岩場のグレードの影響、そんなところが主要因と思われますが、ひとつのルートに複数のグレードが混在して、どれが適正なグレードなのかわからなくなっているケースが珍しくありません。関東の一部の岩場ではフレンチグレード導入の試みなどもあり、場合によっては、ひとつのルートに3つのグレードが存在することすらあります。
本来、グレードというのは基準にすぎません。1メートルはどこにいっても1メートルであるように、基準は統一されているのが望ましいはずです。ただしクライミンググレードは、メートルなどと違って主観的に決められるものなので、そのズレをゼロにすることは不可能です。人によって前後1~2グレードくらい体感が異なることは普通にあり、ブレがあるのが自然なことでもあります。あまりに厳密にしすぎると、かえって現実との乖離を生んでしまうおそれもあります。
とはいえ、現状はブレがやや大きくなりすぎて、クライマーに混乱をもたらすようになってきているとはいえないでしょうか。
そこで、グレードのブレを感じたときに立ち返ることのできる原典となり得るルートを選定することはできないものだろうか。そうしたルートを「テストピース(=試験体)」と呼び、グレード判断のモノサシとして提示する。それが本企画の趣旨になります。
いうまでもなくこれは、ボルダリングの段級グレードではすでに何十年も定着してきた考え方です。段級グレードは、御嶽の「忍者返し」と小川山の「エイハブ船長」を1級と定め、それを基準としてグレーディングを行なうシステムです。段級システムには、不動の基準となる”メートル原器”があるわけです。
リードルートでもこういうものを決めることができないか。しかも各グレードごとに。編集部や一部のクライマーだけで決めるにはあまりにも手に余る仕事ですが、できるだけ多くのクライマーの知見を集めることでそれは可能になるのではないか。すなわち「グレード原器」となるルートの選定が。
多くのクライマーが納得しうるそんなルートを提示することができれば、グレードの把握は今までよりずっとやりやすく正確になるはずですし、グレードに関する議論はこれまで以上に精度高いものができるようになるでしょう。さらなるカオス化を防ぎ、混乱は最小限に留められるのではないか――。
それによって新たにグレード論議が活発化し、次なる時代のカルチャーが形成されていく。この企画がそのきっかけになれば本望です。
*ROCK & SNOW No.106に関連記事を掲載しています。詳しくはそちらもご覧ください