【インタビュー】アダム・オンドラ、世界初9a+フラッシュを語る

インタビュー_fanatic-climbing.com 訳_羽鎌田学

2018年2月10日、クライミング史上初の9a+/5.15aのフラッシングが、ついにアダム・オンドラによって達成された。彼が登ったルートは、フランスの岩場サン・レジェ・デュ・ヴァントゥにあるSupercrackinette。今ここで彼と共に、彼の偉業を振り返ってみよう。


写真=Bernardo Gimenez

Fanatic Climbing(以下FC)
先ずは今回のフラッシング成功おめでとうございます。一夜明けた今日の気分はいかがですか?

アダム
いやあ、もちろん大満足で、同時にホッとしています。今日はレストですが、明日からのここフランスのすばらしい岩場でのクライミング再開が楽しみで、うずうずしています。

 

FC
最初の質問ですが、フラッシングとかオンサイトを狙っている時には、普通どのような準備をされるのですか?

アダム
もちろんですが、オンサイトとフラッシングは全く異なります。オンサイトを試みるためには、事前にしっかり体調を整え、岩場では十分なウォームアップ、入念なオブサべをして、そして登り出すだけです。そうですね、オンサイトは自分の経験、直感に頼ったもの、全ては私次第なのです。もちろん運も結果を左右するでしょうが。

フラッシングを狙う時には、他のクライマーから貰った登り方についての情報を頼りにすることになります。教えてもらったムーブを自分自身がどのようにこなしていくかを頭のなかで描いてみます。手に入った情報をベースに、できるだけリアルにそれを思い描いてみるのです。教えてもらったホールドの形状に関する情報も活用しながら、登るスピードとかリズムとかまでをも想像するのです。どこのパートは素早くこなすべきかとか、どこのパートはリズムを落として登るべきか、とかいったことまでもイメージしておけるのです。
まあ当然、ある程度のところまでですが。それに、もちろん情報を貰える人に頼らなくてはならないという微妙な側面もありますが。

 

FC
メンタル面で、特に意識して何かしていますか?

アダム
メンタル面では、今回は少し苦労してしまいました。サン・レジェに着いたのは2週間前で、ホールドが乾いているルートは、実際のところSupercrackinetteしかなかったのです。もちろんすぐにでも登ってみたかったのですが、焦って取付くのは賢明でないことも明らかでした。
ここの岩に身を慣らすことが先決だと考え、先ずは他のルートを登り出したのです。ホールドが濡れているルートが多かったのですが、何本かのプロジェクトに手をつけてみました。でも、少しがっかりさせられてしまったのです。はてなマーク付きの9a+だったのですが、ホールドが濡れている状態では、3、4日トライしてもどうしようもなかったのです。自分も強いのだけれどもルートもハードだからなのか、それとも濡れているからなのかとか、自分が9a+に手を出す準備ができていないからなのかとか、ちょっとよくわからない気分になっていました。

そんな時に、カメラマンのベルナルドが撮影のためにやって来たので、私たちはSupercrackinetteの開拓者で、そのルートを良く知っているクァンタン・シャスタニェと岩場で待ち合わせることにしたのです。もう後戻りはできなくなったのです。トライするしかありませんでした。
昨日は、ウォームアップで調子の良さを感じることもできて、これはひょっとしたらうまくいくかもしれないという気が少ししてきたのです。ですから、少なくとも無駄なトライにはならないだろうと自分に言い聞かせました。ただしやはり成功への期待はどちらかというと小さかったですが、少なくとも、状態はパーフェクトでした。

で、私は登り出し、全ては流れるように進み、完登できたのです。

 

FC
実際に登って、どのように感じられましたか?クァンタンが教えてくれたとおりのルートでしたか?

アダム
私の手順では28手になりました。終了点手前の簡単なムーブは別にしてですが。最初の20手は、Supercrackinette本来のもので、その後右方向からくる8cのCrackinetteに合流します。その最初の20手は予想外に楽にこなすことができました。3本目のボルトまでは比較的簡単でそこから次第に難しくなることは最初からわかっていました。でも、3本目のボルトにクリップして難しいパートが始まってからも、簡単に感じ続けたのです。
何か夢でも見ているような気分で、あたかも宇宙からパワーを貰いながら登っているような感じでしたね。それはもう自分でも止めようもない勢いを感じながら、それでもリラックスして、楽々と最初の20手をこなすことができたのです。そのパート自体、8c+か、それ以上はありそうなのですが。

そしてその後に、私の太い指では少々使いにくい鍵穴のようなポケットが2つ出てくるのです。やはりそこでポケットに指をうまく入れるのに予想以上にまごつき、その途端、感じていた魔力も消え失せてしまったのです。
でもなんとか粘り強く登り続けていくと、リンクルートの本当の核心、最後の28手目が目前にありました。運よく、余分なことは全て忘れてムーブに集中し、それを無事にこなすことができたのです。

 

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