マリ・サルヴェセン、Black Mamba(5.14b)を第4登

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訳=羽鎌田学

ノルウェー人女性クライマー、マリ・サルヴェセンが米国ユタ州キャニオンランズでBlack Mamba(5.14b)の第4登を、女性クライマーとしては第2登を達成した。Black Mambaは、2019年にワイドボーイズの2人、トム・ランドールとピート・ウィタカーによって連続的に初登されたルートである。

写真=Pete Whittaker

それは、最初の40mは信じられないほど長いボルダー課題(ロープの必要がない)と言ったほうがいいかもしれない、実にユニークな一本だ。ルーフクラックは長く暗いトンネルの一番奥から始まるが、その大半は地面からわずか数mの高さに位置するのだ。トンネル最後のパートではトンネルの地面が落ち込むので、その前に、クライマーはジャムを効かせて動きを止めて、その間にビレイヤーがクライマーのハーネスにロープを結び、そのハーネスにギアを掛ける必要がある。そして、最後の10mのパワフルなオフィズスをギアをセットしながら登り続けるのである。

初登後に、この最終パートについてトム・ランドールは、「最後の最後、文字通りもう体の中に絞り出すことができるものが何もなくなったような時に、これでもかと言わんばかりのダメ押しのムーブが待ち構えているのです。まあこれも、グリットストーンの短いルートの多くで馴染みのあるものなのですが。そのパートでは奮闘的な登りをしなくてはならないのですが、奮闘するだけでは充分ではないのです。巧みに無駄なく登ることが必要なのです」と語っている。

この最後の10mのパートは、ピート・ウィタカーが以前のツアーの際に別の独立したルートとして初登したもので、The Angry Pirate Finishと名付けられたものだった。

そのピートの完登に際して、ただ単に奮闘的に、且つうまく登るということ以外に、「ヘッドランプを装着してのスタート、クラックグローブの3度の交換、ピッチ途中でのロープのハーネスへの結束、そして上腕三頭筋を保護するためのトイレットペーパー製のクッション」も必要だったと言う。ピートは、自分とトムが「このような一風変わった策を用いたのは、実はルートのことばかり考えていて、岩場にもっと適切なギア、たとえば肘当てやランタンを持っていくのを忘れたからでした」と、語った。

ルートの長さとクライミングの多様性(フィンガー、シンハンド、ハンド、フィスト、最後の核心部分のオフィズスなど)により、特定のパートでは、それほど厳格に手順を組み立てておく必要もなく、その場の判断で即興的に登ることも可能だったが、他のパートでは手順のより詳細な組み立てと、それをしっかり頭に叩き込んでおくことが必要だった。

マリ・サルヴェセンは次のように語っている。

「ヨセミテでビッグウォールやエイドといういつもとちょっと違うクライミングをした後、砂漠エリアでのハードなフリークライミングにはあまり野心を抱いていませんでしたが、キャニオンランズに行くチャンスが巡ってきたので、それを利用してみたのです。そこはこれまでに見た世界とは異なり、別の惑星でドライブしているような感じがしました。

私の友人のサムがThe Angry Pirate Finish(Black Mambaの最終パート)にトライしていたので、私も彼女と一緒にそれをやりました。オフィズスでチキンウィングを多用するルートでした。同じエリアで他のルートにもトライしてみて、もっといろいろ登りたくなったのですが、また来るために必要なパートナーとか4WDとかがなかったので、それほど執着しないようにはしていました。そんな時、フミヤ(この秋にCentury Crackを登った日本人クライマー中村文哉)が、私を砂漠エリアに同行させてくれたのですが、彼こそが私にBlack Mambaにトライしてみるように勧めてくれた最初の人でした」

「ルートの大部分は地面に近いルーフに走る非常に長いクラックで、最後になってやっとロープを使い、ギアをセットしながら登るパートが少し出てくるので、キャニオンランズの他のルーフクラックよりもはるかに取付きやすいルートでした。

メアリー・イーデンが一ヵ月程前に同ルートを第3登していたので、クラックは最高にきれいで準備万端の状態でした。ウォーミングアップがてら何ヵ所かでムーブを試してみると、かなりいい感じだったので、早速トライしてみました。ところが、核心パートで適切なムーブの組み立てができなくなるという罠にはまり、力尽きてしまいました。2、3ヵ所の短いパートでも一応手順をしっかり組み立てて進まなければならなかったのですが、ハンドとフィストがしっかり決まるところもあり、登りながら何とか解決していくことができました」

「別の日に再びトライした時、フィンガージャムを決めるクラックでかなりかかりのいいところを見つけることができたのですが、そのおかげで最後のトリッキーなパートが大幅に楽になったのです。そして次のトライの日に完登することができました。トライを初めて5日目でした。

完登トライの際、全体を通してかなりいい感じで登ることはできましたが、はらはらした瞬間がなかったわけではありませんでした。テープで留めていたクラックグローブが汗で脱げそうになってきたので、登っている途中でなんとかそれを口を使って外さなければならなかったのです。また、The Angry Pirate Finishに相当するパートは少し前にトライして以来、触っていなかったので、あれほどまでに長いルーフクラックをこなした後に、手にテーピングをせずにそれを登った場合、どんな感じになるかわからず少し不安でした。でも実際は、嬉しい驚きだったのですが、前回トライした時よりもずっと楽に感じたのです。チキンウィングをかなり深く決めることができて、抜け落ちる気が全くしませんでした。それがオフィズスのいいところなのです。自分を完全に嵌め込むことができるのです」

ただ彼女は、ルートのグレードについては思うところがあったようだ。

「本当はグレードに関してはあまり触れたくないのですが、Black Mambaは再登者も少ないので、徐々にコンセンサスに達するためにもここで私見を述べるのも悪くないでしょう。確かに初登したトムとピートは5.14bとしているのですが、驚いたことにそれをフレンチグレードにすると8cに相当するのです。そして、その8cは、私が今まで登った中での最難グレードになるのですが、私にとってはそれほどまでには感じませんでした。同じエリアの他のルーフクラック、たとえばThe Crackhouseなどと比べた場合、8b+(5.14a)とするのが理にかなっていると思います。ただルーフクラックは非常に特異な、マニアックなスキルを使うので、グレーディングするのが難しいのです。また、おそらく私がそれがかなり得意なようで、ホームグランドでのスポーティなトラッドクライミングと比較した時、公平な判断を下すのがなかなか難しくなってきます」

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