中国の10才の少女、5.14aを登る

刘闯(リウ・チュアン)記 climbing.com 訳=羽鎌田学

2021年5月5日、11才になる誕生日を3ヵ月後に控えたその日、李美妮(リー・メイニー)は中国南部、広西チワン族自治区桂林、陽朔(ヤンシュオ)にある白山(バイシャン)の岩場で、5.14aとグレーディングされたスポートルートをレッドポイントした。これにより、彼女は黄伟君(フアン・ウェイジュン)と肖婷(シャオ・ティン)に次ぐ同ルートをRPした3人目の中国人女性となった。また同時に、14ルートを登った中国最年少クライマーともなった。

 
 
 
 
 
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美妮はこのルートを登るために、3月13日(土)からの週末を手始めに2ヵ月間、ホームタウンである隣の広東省中山(ジョンシャン)から家族と共に計5週末、岩場のある陽朔に足を運び、37回のトライを要した。

彼女が登ったルートの名前はChina Climb、中国名は“中国攀岩”。設定は2006年10月。オーストラリア人クライマー、ローガン・バーバーの手による。初登は2年後の2008年、中国人クライマー、刘永邦(リウ・ヨンバン)が達成した。通称“阿邦”(アーバン)の彼は、当時働いていたクライミングクラブの名を取ってルートに命名した。

私が美妮に初めて会ったのは、やはり同ルートにトライしていた何川(ホー・チュアン)が3月にRPに成功し、皆がそれを祝福している時だった。その場にいた私の友人のひとりである王亮(ワン・リィアン)が、美妮は最初のトライですべてのムーブを解決してしまったとコメントしたのだった。私も中国攀岩のRPを目指しトライを重ねていたので、そのルートを登り切るためには、それはもう膨大な時間と努力が必要であることが身に染みてわかっていた。おまけに私はある日のトライの際に左手薬指の腱鞘を酷く痛めてしまっていたほどだ。

4月中旬のある日、美妮の母親が私にコンタクトを取ってきた。次の週末に再び“中国攀岩”を登りに行くので、娘のトライの模様を撮影して欲しいと言うのだった。当日、彼女の登る姿をファインダー越しに見つめ続けていた私は、彼女の感情の動きを自らの肌で感じ、また彼女の粘り抜く姿を目の当たりにすることができた。フォールするたびごとに泣き叫び、それでも登り続けていく彼女。その後の週末も、目標とするルートでウォーミングアップを済ませ、1日に3度から4度のトライを重ねていく。今年の4月と5月、陽朔は焼けるように暑かった。そもそも壁が主に南向きの白山は冬に適した岩場だった。5月に入るや早々に、気温は30℃をゆうに超える有様だった。ただ幸いにも中国攀岩のルート全体が直射日光に晒されることはなかったが、それでもやはり壁の中は暑かった。そのような条件の下で“中国攀岩”のような高難度ルートにトライすること自体が、既に大いなるチャレンジであった。

美妮がを遂に登り切るまでの数日間、私は彼女の家族とのやり取りを通じて、美妮にとって家族の支えがいかに重要であるかを垣間見ることができた。中国攀岩のRP、美妮にとってはほんの始まりにしか過ぎない。

※補足 
今回の李美妮の5.14aは、世界的には10歳の2番目の記録となる。フランスのテオ・ブラスが10歳の時(2020年)、モンペリエ近郊の岩場で5.14bであるSouvenirs du Picをレッドポイントしている。また、11歳ではあるが白石阿島が、さらにワングレード上、5.14cのSouthern SmokeとLucifer(2012年10月、レッドリバーゴージュ)を登っている。ボルダーでは白石は10歳でV12を登った。10歳でV12の記録はわが国にもある。2019年に吉野惺太が武庫川の冷酷(四段/V12)を登っているのだ。いささか強引だがV12をルートに換算すれば5.14a以上と言えよう。(ROCK&SNOW編集部 北山)

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