最新シューズを全てテスト&レビュー!Climbing Shoes 2021⑤

写真=山本浩明

「ROCK&SNOW」恒例の人気企画がクライミングネットに登場! 3人のテスターが最新シューズをテスト&レビューします。今回、5つ星を獲得するのは果たしてどのシューズ?

※各ポイント別の総合評価を■で、シューズに対する各テスターごとの総合評価を★で採点。いずれも5つで最高点となります。当記事は「ROCK&SNOW093」の記事を一部編集し、掲載しています

⑤Ocun/Unparallel 編

Ocun BULLIT

山崎 ★★★★★

オーツンのニューフラッグシップ。5つ星をつけるモデルは大概、履いた瞬間に「これはよくできている!」と感じるもの。このシューズもそうだった。OXIにとても似ていると思ったが、それもそのはずで、OXIをベースにしたモデルだそうだ。ソールも含めてほぼOXIと同じ構成。

デザインに若干の違いは見られるが、どこが変わったのか私にははっきりとはわからなかった。ただ、とてもよくできていることは確か。履きやすさと高い拘束力、バネが効いたコシと、指の直下でエッジングする独特の構造など、大変バランスがいい。オーツンなら、これを選んでおけば損はないだろう。

稲葉 ★★★★☆

挑戦的でおもしろい靴に仕上がっている。変わった作りの面ファスナーは、1本以上、2本未満といった拘束力がありながら、トウフックの邪魔をしないようになっている。土踏まずを覆うラバーが甲部分まで巻き上がっていているのが特徴的で、これは爪先の力逃げを防ぐ役割があり、力を一点に集中させ続けることができる。指の付け根部分にあるくぼみは、かき込みをサポートしてくれた。

また、柔軟性がありつつも靴にコシがあり、ランジなどダイナミックムーブの踏み切りも思いきって行なうことができる。総合力の高いシューズでありながら、ハボックほどではないにせよ、足入れは非常によく、インドアに限らず岩場でも使いたい一足だ。

荒川 ★★★★☆

ハボックと比べると若干ではあるが幅広で、甲部のボリュームを抑えたシェイプをしている。これは一本の面ファスナーで2点を拘束するシステムの違いによるものと思う。実際、セパレートタイプのソールとも相まって自由度はより高いが、フィッティングをスポイルすることなく、ハボックとは異なる性格をもっていると感じた。スリングショットのテンションも高めで、履き口もハボックに比べて狭い。

当然ながらシューズ全体がタイトにフィットするわけで、手で触る以上に、足を入れた際には剛性感があるだろう。また、土踏まず部分からアッパーへ伸びる赤いラバーパーツが、土踏まずのアーチにフィットすることにより、足との一体感が高いようだ。

Ocun

山崎 ★★★★☆

快適性に優れたジェットシリーズがベースだけあって、履き心地がとてもいい。マイクロファイバーのアッパーは肌触りがよく、足入れもスムーズ。ダウントウが弱めなので、初心者でも充分に履ける。靴の作りはブリットに近く、性能面もかなり向上していると感じる。

面ファスナーの効きはとてもよく、拘束力は充分。ソールはブリットと同じラバーでグリップが高く、スメアもエッジングも良好。ブリットと違って、爪先は出っ歯タイプでシャープな作り。性能ではブリットに一歩及ばないが、快適性は大きな魅力だ。さまざまなクライミングシーンに対応する優れたオールラウンダータイプのシューズだと思う。

稲葉 ★★★☆☆

とても快適な足入れのオールラウンドシューズ。昨今主流の、柔らかく、爪先とヒールのみ硬いという定番を押さえているので、スメアとエッジという相反する足使いの両方が及第点といえる。ヒール性能はなかなかに上等で、テンションの強いスリングショットが安定したフックを可能にしている。

トウフックは悪くはないが、トウラバーは小さめなのが少々残念で、もう少し広めに貼ってもほかの性能に影響を及ぼさないのではないだろうか。際立った個性こそないものの、一足ですべて解決したいクライマーで、足入れのいいものを探しているのであれば、この靴こそベストだろう。

荒川 ★★★★☆

オーツンのシューズはどのモデルも非常にいいシェイプをしている。適度な幅と顕著なポイントをもち、トウボックスの立ち上がりもしっかりあり、多様な形状の足を受け入れる懐の深さとシューズとしての性能をもっていると感じている。

シューズ前半部とヒールカップの剛性感のバランスがよく、セパレートタイプのソールとも相まって、土踏まず部分を含めたフィット感とシューズ全体の剛性感が非常にいい。また互い違いに締まる面ファスナーシステムにより、シューズの屈曲を含む動きがセパレートソールと好相性で自由度が高い。やはりクライミングシューズにも軽量化の波が押し寄せているようだ。

Unparallel FLAGSHIP

山崎 ★★★★★

アンパラレル渾身の“旗船”。楢﨑智亜氏監修の、コンペに焦点を当てた高性能シューズ。TNプロから大きく路線が変わった印象だ。セパレートソールになり、かなり強いダウントウがついており、押さえ込むエッジングも、スローパーへのベタ置きも大変安定している。

ただし、一つ注意したいのはソール。高フリクションのRSラバーは変形率が高く、新品状態では極薄や極小ホールドなどでエッジ先端が大きく変形して外れてしまうことが度々あった。そのため本領発揮をさせるには、少し使い込む必要がある。大変高性能だが、性能を生かすにはそれなりのスキルがいる。今回は優秀なシューズが多く、自分的にはこれで5足目の5つ星になった。

稲葉 ★★★★★

非常に柔らかく、強めのダウントウにもかかわらず、セパレートソールゆえに変形しやすい。これによってスメアリングに長けている上、コーディネーションやダイノの踏み切り、着地にも違和感がない。爪先とヒールには剛性をもたせており、細かいホールドでのエッジングや、ヒールも、ホールドに負けることなく行なえる。トウラバーはフリクションがよく、内と外に広がる形状がすばらしい。

体の位置から横に遠いフックを掛けにいくときに、非常に利便性が高かった。コーディネーションで一瞬で掛けにいくようなフックも、形状が利いていてやりやすい。なかでも抜群なのはかき込み性能で、一点へ力をかけるとき、指の付け根あたりのシャンクがサポートしてくれる。その名に恥じない、オールラウンドシューズの傑作だ。

荒川 ★★★★★

攻撃的なフォルムをもつ一本締めタイプ。アッパー面積がほかのシューズに比べると長く広い。これはフックの際に有利であることはもちろん、足がシューズに対して極めて自然な形状でバランスよく収まる。このことにより、自由度が非常に高い。フットホールドに対して力の伝達をよくするように、爪先の形状とアッパー部分のボリュームがデザインされていて、実際にその影響を感じられる。

またソールとヒールは完全にセパレート状になり、スリングショットが土踏まずのフィッティングをサポートしているため、動きのなかでシューズが高次元で追従する。ヒールに採用されているラバーパーツの剛性感が高く、フック時にとても安定する。

Unparallel FLAGSHIP WOMEN(LV)

山崎 ★★★★☆

フラッグシップ(FS)のローボリュームタイプ。厚みが薄くなってタイトになった代わりに、FSの包み込まれるようなホールド感が減少した気がした。このシューズは深履きで性能が出るように作られているようなので、FSでダブつきが出るような人以外はFSのほうがいいと思う。

ダブつきが出てフィット感が薄く感じられる人はLVモデルがいいだろう。FS同様に大変高性能なシューズだが、ラバーの特性なども含めて、使いこなすにはそれなりの技量を要求される。個人的には、シンプルな作りながら、エッジングの安定感が高いRHラバー使用のTNプロのほうが使いやすいかなと感じた。

稲葉 ★★★★★

通常モデルよりグッと全体的にボリュームが抑えられており、幅がより細く、トウボックスはより薄い。一番の違いはヒールカップの形状で、かなり浅く直角に作られている。性能面では大きな差異はないが、ヒールのフィット感次第でクライマーによっては通常モデルとのフック性能の差を感じるだろう。

性能に関しての追記となるが、土踏まず部分がかなり柔らかいゆえに、柔軟にフィットするトウフック性能がかなり気に入った。それでいて剛性をもたせた爪先とヒールがあり、柔らかいシューズを使っている感覚では決してないので、柔らかいモデルに抵抗があるクライマーも、ぜひ試してほしい。

荒川 ★★★★☆

通常モデルとの差はズバリ、容積が低いことである。ただ、女性だけに向けたモデルではない。その証拠に、シューズの剛性感や重さなどは、通常モデルとほぼ変わらない。非常にお気に入りのシューズでも「もう少しタイトフィットするといいな、とサイズを落とすときつ過ぎる。どうにかジャストフィットしないか」と考えたことが誰しもあるだろう。

フラッグシップは一本締めタイプで、シューズがもつ本来の容積がフィッティングの肝になると思う。シューズの底長を変えるのではなく、あくまでも容積の低いモデルを設定することにより、モデル共通のコンセプトをキープしつつ、多くの足形や好みに対応していると感じた。

▶︎商品情報
Ocun/ロベット lovett-corp.com
Unparallel/キャラバン caravan-web.com

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