スポーツクライミング人気を支える影の立役者クライミング・フォトグラファーの仕事とは?
スイス在住の写真家のブラデク・ズムール インタビュー

構成・文=和田 薫

昨今のスポーツクライミング人気の影には、競技の楽しさもさることながら、SNSなどにあふれる選手や有名クライマーの写真の存在も大きく貢献しているように思われる。インスタグラムで目にした選手の姿に憧れてボルダリングをを始めた、という人も少なくないはずだ。

今回は、スイス在住の写真家のブラデク・ズムール(Vladek Zumr)にインタビューを行った。

ブラデク・ズムール(Vladek Zumr)本人近影

ズムールはスポーツクライミングの国際試合のみならず、アウトドアクライミングでも写真撮影を手がけており、日本人選手にも多くの写真を提供しているので、今この記事を読んでくださっている方は彼の名前は知らずとも、必ずと言っていいほど彼の写真を目にしていると思われる。

ズムールが考える「クライミング・フォトグラファー」という職業とその魅力とは?

元々クライミングをしていらしたのですね?どのようなきっかけで写真を撮るようになったのでしょう?

私はプラハから北の 100km のリベレツという街で生まれました。両親はよく、チェスキー・ラーイ(チェコで「楽園」と呼ばれ、奇岩の絶景地として知られる)に連れて行ってくれました。クライミングには絶好の場所で、子どもの頃からすでに私はクライマーに憧れていました。

実際には、当時つきあっていたガールフレンドの前で格好つけたくて初めてクライミングをしたのですが。それ以来、ロープに触れない週末は思い出せないほどです。

学校を卒業してから4年間、世界中を旅してクライミングを続けましたが、家族や友人に自分の旅先での感動を伝えるために写真を撮り始めました。

そして、私の2つのパッションが現在の私の職業になったんです。写真家兼クライミングコーチ/インストラクターとして、国際および国内大会でも、外岩でも、世界トップクラスのアスリートの写真を撮り続けています。

情熱を注げるものが職業になるとは羨ましい限りです。さて「良い」写真を撮る秘訣とは?

私にとって良い写真の秘訣とは、その瞬間の生の感情とエネルギーをとらえることです。具体的にいえば、クライマーの物語を語る緊張感、集中力、など、その瞬間その場にいて感じたことを伝えられるような写真を撮ることです。光、構図、タイミングも確かに重要ですが、感情が写真に命を吹き込むんです。

スポーツクライミングの国際大会で写真を撮り続けていますね。 キャリアをスタートさせて以来のクライミングシーンの変化やトレンドを教えてください。

まず私のプロとしてのキャリアは、私は 2013 年頃、スイスのナショナルコーチであるウルス・シュトッカーと共同コーチとして働いていたときに始まりました。

スポーツクライミングのスタイルは大きく変わったと思います。以前は可能な限り最小のホールドをクリンプで保持できるかが重視されていましたが、今は、はるかに動的かつ複雑なスタイルへとシフトしました。最近のクライマーは、ボルダリングの問題やルートを解決するために爆発的なパワー、精度、創造性が求められますし、そのおかげで、スポーツクライミングはよりエキサイティングで視覚的にも魅力的なものに発展したと感じています。


ヤンヤ・ガンブレット

2つ目は、SNSの存在です。もはや競技だけではありません。クライマーは独自のブランドを構築し、世界中のファンと世界観を共有しています。

日本をはじめとする国の選手の才能の層の厚さにも注目しています。日本の選手はレベルが高く、優れた選手の数も驚くほど多いため、代表選手として選ばれて国際試合に出場するチャンスは少なくなってしまいます。それでも、ほとんどすべての大会に、新しい日本人クライマーが出場して見事な結果を残していることに感銘を受けています。

競技としての認識のされ方にも変化が見られますよね。かつてニッチなスポーツだったものが、オリンピック競技となった今、メジャー競技として新しいスタイル、戦略、トレーニング方法が導入されました。スポーツクライミングという競技が成長し続け、世界中の人々を惹きつける様子を感じるのは刺激的です。

アウトドアクライミングの撮影もしていますね。ずばり、岩場で写真を撮る難しさはなんでしょう?

アウトドアクライミングの撮影は、それ自体が冒険なんです。クライマーと一緒に壁に登り、ロープからぶら下がって、ショットを撮るのに最適なポジションを探して身を置くことは、スリルがあり挑戦しがいがあります。特に難しい点の 1 つは、完璧な角度を確保しながらクライマーの邪魔にならないようにすることです。安全を最優先しつつ、常に自分の居場所を十分に意識する必要があります。また、屋外の照明は予測できないので、臨機応変に対応する必要もあります。

クライマーを自然の中でうまくとらえ、息を呑むような作品が撮れると、苦労が報われます。


マヨルカ島の岸壁を登るヤコブ・シューベルト

彼の作品は
ウェブサイト:https://www.vladekzumr.com
インスタグラム:https://www.instagram.com/vladek_zumr/
Facebook:https://www.facebook.com/vladekzumrphoto 
などで見ることができる。

選手だけでなく、クライミング人気の立役者でもあるフォトグラファーの活躍も応援したい。

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