ディディエ・ベルト、スコーミッシュで5.14のクラックを初登

写真=Fred Moix

gripped.com
訳=羽鎌田学

6月初旬、スイス人クライマー、ディディエ・ベルトが、カナダ・スコーミッシュのチーフで、昨年来のプロジェクトであった北米最難トラッドにランクされるハードなルートをピンクポイントで初登し、Crack of Destinyと名付けた。ディディエ・ベルトといえば、20年ほど前に世界最難と言われる複数のクラックを精力的に開拓初登、または再登して話題になったクライマーである。

今回、Crack of Destinyをギアを事前にセットしてのピンクポイントで登ったディディエは、「まだ、終わってはいません。レッドポイントという本番が控えているのですから」と、私たちに言った。トラッドでのレッドポイントとは、クライマーがすべてのギアをセットしながらリードで登ることだ。

「5.14bか、5.14cか、はっきりわかりませんが、ただ、5.14aよりは確実に難しく感じます」ともコメントした。このプロジェクトに費やした時間を尋ねると、「昨年は30日、今シーズンは6日」と、彼は答えた。

2003年、ディディエはイタリア北部のピエモンテ州にあるオルコ渓谷でオーバーハングした壁のシンクラック沿いに打たれていた緑色に塗られた古いハンガーボルトを撤去し、それをナチュプロのみでレッドポイントした。そのGreenspit(spitはハンガーボルトの意味)は、史上初の5.14トラッドルートの一本となった。その後、米国ユタ州に渡り、インディアン・クリークで2本のトラッドルート、Learning to Fly(5.13+)とFrom Switzerland with Love(5.13+)を初登。

2005年にはカナダのスコーミッシュに移り、Cobra Crackの初登を目指し、2ヵ月間集中的にトライ。その姿は、ビデオ『First Ascent』に収録されている。彼はトライの最中に膝を傷め、プロジェクトを達成することなしに母国スイスに戻ったが、彼が残したCobra Crackの初登には2006年6月、カナダ人クライマー、ソニー・トロッターが成功し、5.14としている。

一方、ディディエは、2006年、スイスでカトリック系宗教団体に入信し、ハーネスの代わりに修道衣を見にまとい、その生涯を神に捧げる道に入った。しかし2020年、「よりバランスの取れた人生」を追求するために修道院を去り、再びクライミングを始めたという。

そして、2023年、ピンクポイントでの初登3週間後の6月下旬に、彼は当初の狙い通り、Crack of Destinyのレッドポイントに成功したのだった。

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