映画『人生クライマー 山野井泰史と垂直の世界 完全版』 スペシャルシアタートークを実施

国連が定める「国際山岳デー」の12月11日(日)、ドキュメンタリー映画『人生クライマー 山野井泰史と垂直の世界 完全版』のスペシャルシアタートークが、満席の東京・角川シネマ有楽町で実施された。本作の武石浩明監督と、山岳ジャーナリストで山野井泰史さんと親交の深い柏澄子さんが登壇し、お互いの山野井さんとの思い出やエピソードを語り合った。

作品内で大きく取り上げられるマカルー西壁での敗退について、柏さんは、「あまり本人から言葉として聞いたことはなく、今回映像で観ることができてよかった。

悔しい気持ち、どこにもぶつけられない気持ちがあったと思う」と述べ、武石監督も「山野井さんのギリギリの体験だったからこそ、あんまり他の人に話していない」と語った。

武石監督は「ギャチュン・カンで山野井さんが指を切断した後に再起の登山としてポタラ北壁が出てきましたけど、実は柏さんがすごく関わっているんですよね?」と話題を振ると、「そうですね。ポタラの横に牛心山というぽてっとした山があって、山野井さんがこれなら柏さんも登れるんじゃない?って(笑)。

それで翌年、ベースキャンプを共有して行きました」と当時を振り返った。

印象に残ったシーンについて柏さんは、「すごく細かいんですけど、クラックに指を2本入れるシーンです。以前『ギャチュン・カンで失ったものは?』というのを山野井さんに聞いたところ、『5本指があって岩を掴んで、その感触が腕を伝わって体に来て、脳にも来て、掴んで登っていく。

その感覚が俺は好きなのに、もうそれを二度と味わえない。それがギャチュン・カンで失ったものだ』と言ったことがすごく印象的で。それを武石さんも映画で描いていたんだなと思いました」と、山野井さんの言葉を交えて答えた。

最後に柏さんは、「とんでもない登山家と同じ時代を生きているんだというのをあらためて感じました。泰史さんの姿が皆さんの心に残ればいいなと思っております。武石監督、ありがとうございました」と述べた。

武石監督は「観てくださった方の言葉の中に、『やりたいことがあっても諦めてしまうことが多いけど、眠っていた自分に燃えるための酸素をもらえた』ということを言ってくださった方がいて。そういう人が一人でもいたら、この映画を作った甲斐があったと思います。本当にありがとうございます」と熱い思いを語り、会場は盛大な拍手に包まれた。

■作品概要
語り:岡田准一 監督:武石浩明 製作:TBSテレビ 配給:KADOKAWA
2022年/日本/109分/©TBSテレビ

同一カテゴリの最新ニュース