横山勝丘・長門敬明がK7 West(6615m)南西稜を初登攀

文・写真=横山勝丘

2017年8月5~10日の6日間をかけて、横山勝丘と長門敬明がパキスタン、カラコルム山脈のK7West(6615ⅿ)山頂から延びる南西稜を初登攀した。


下部岩壁13ピッチ目を登る長門(5.11b R, A1)

単純に南西稜と言っても、その距離は長大で、標高差は2300ⅿを越える。ここには、標高差1500ⅿ以上におよぶ岩壁の新ルート開拓と、長大かつ複雑な氷雪壁やリッジの登攀、さらには未知の壁の下降も含まれる。2014年に横山・長門・増本亮の3人でトライしたこの縦走だが、悪天候や隊員の怪我、複雑なリッジに手を焼いたことなどの理由により敗退していた。

ビッグウォールフリークライミングを目的とした増本と佐藤裕介を合わせた4人で、7月19日にチャラクサ氷河標高4200ⅿにベースキャンプを設営。翌日からの13日間は高所順応と準備に費やす。天候は不安定で、高所順応も標高5800ⅿで一泊することしかできなかった。

8月2日。下部岩壁に食い込むガリー~チムニーを主体とした9ピッチを登攀(5.11cまで)。ロープをフィックスしてその日のうちに下降し、翌2日間をレストに充てる。


24ピッチ目は三ツ星のコーナークラック(5.10c)

8月5日夜明け前にゴーアップ。以降3日間かけてバダルピークまでの複雑な岩稜を、人工登攀や同時登攀も交えて登り切る(新ルート、35ピッチ 5.11c R/ A2)。


高度感抜群の34ピッチ目を登る長門(5.10b)

バダルピークから先は一転、雪と氷に覆われたリッジ登攀となる。ここもルートファインディングが複雑で、技術的難易度は決して高くはなかったが、山を的確に見て正確な判断のもとに素早く行動することが求められた。5日目の午前中に登頂し、その日のうちに北西壁を下降。氷河上でビバークののち、翌10日に対岸の尾根を登り返し、傾斜の緩くなった裏側の斜面を駆け下り、ベースキャンプに戻った。


バダルピーク直下からはミックスクライミングとなる。後方はK7West

ルート全体を通して技術的な難易度はそれほど高くはなかったが、とにかく長大なリッジを、岩・雪・氷のすべての技術を駆使して登り続けることそのものがこの登攀を困難にした。また、登攀中には計6回の懸垂下降も強いられ、そのたびに稼いだ標高を失うという事実も、精神的・体力的に大きな負担であった。


バダルピークから先の複雑かつ長大なリッジ登攀

遠征期間中天候は安定しなかったが、幸いにも登攀の前半は期間中唯一とも言える雲一つない晴天に恵まれた。登頂前夜は一晩中降雪が続いて精神的なプレッシャーも増したが、そのぶん登攀そのものがより味わい深いものになったと感じている。


リッジの最後は広大な氷壁を延々トラバースする

今回の登攀は、これまでの登山経験の中でも一、二を争うほどの困難さとクオリティの高さだったと自負している。ここ数年は、ヨセミテやパタゴニアで岩登りを中心とした活動ばかりしていたが、そういう経験がなければ今回の結果はなかったと思うし、逆に、かつてアラスカやアンデス、ヒマラヤなどでひたすら氷雪壁、ミックス壁を登り込んだ経験がなければ、上部の登攀は困難を極めただろうことは想像に難くない。またそれら以前に、国内における登攀では海外を意識したトレーニングを夏冬通じて行なっていて、そういう、これまでのすべての経験の積み重ねが今回の結果に繋がったと言えるかもしれない。


5日目の朝、K7West山頂に立つ長門(左)、横山(右)

2017年8月5~10日 横山勝丘・長門敬明

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