中島正人、 フランス・Hell CaveでD15を初登

文=中島正人
写真=Gaëtan Raymond, Adrien Varlez

Hell Caveはフランス南東部、ヴァノアーズ国立公園にある町、オッソワの郊外でアルク川を望む渓谷斜面の中腹にある洞窟で、フランスの山岳ガイドPierrot Boucher氏が2011年から単独で開拓を始めた。彼は生粋のドラツー好きで、100近いルートを開拓してきた。特にHell Cave はDTS(Dry Tooling Style)と呼ばれる、Figure4/9(以下F4/9)を使わないスタイルに特化したルートとして開拓された場所でもある。とは言えF4/9を使って登ることに特に気にすることはないとか。そんな彼がHell Caveに私を誘ってくれた。

今回、初登したPlug me if U can(D15)は、彼が自分にとってチャレンジングなルートとして開拓した一つである。洞窟の最奥部から15mのルーフを抜け、5mの強傾斜と5mの緩傾斜を登る30m弱のルートで、この場所で最も強度が高く、4年前にオープンプロジェクトになった。しかし、序盤の低いルーフに最初の核心があり、グランドするリスクが高く、多くのクライマーからは敬遠されていたとか。遠征2日目にPierrot氏と、友人の山岳ガイドGaëtan Raymond氏(なんと世界初のD15、 A line above the skyの第二登者!)、Adrien Verlez氏と合流し、このルートを教えてもらう。

ビッグムーブが続く。ビレイヤーは洞窟の最奥にいるので見えない

最初のトライは初手から低高度でのビッグムーブにビビり、ガチガチのトライに。結局、最初の核心部となるガストンでムーブが解決出来ずに終わる。明らかな強度の違いを感じた。

その後、幾つかのムーブを試したが突破できず、最後にアックスを残置して次のホールドに移ってからアックスを回収する方法が見事にハマる。とは言え、核心はこの一つではない。次の核心はルート中間部、ルーフから強傾斜に変わる部分でのビッグムーブだ。ただここは、今回一緒に遠征に来た橋本(翼)くんが初日からトライしているHeretik slasher(D14+)と同ルートのため、攻略に時間は掛からなかった。これでムーブは全部バラすことは出来た。


洞窟の最奥から表に抜けるPlug me If U can。
クラッシュパッドがある部分がグランドする可能性がある核心部

遠征5日目。ムーブはバラせているが、疲労感が取れず早々にレストモードに。この日、橋本くんは初日からトライし続けていたHeretik Slasherを30分かけて見事完登。

遠征最終日。しっかり休んだおかげで、かなり回復することが出来た。洞窟に来ると入念にホールドを確認し、トライ開始。が、最初の核心でフォール……気を鎮める時間を取ろうと考えたが、アップをもう一本やった事にしよう!と、気持ちを切り替え再トライ。さっきより一手に時間をかけた。一つ目の核心を無事に越え、二つ目の核心もイメージ通り突破。後はひたすら持久力勝負だ。少しでもレスト出来る箇所では、レストし腕に血流を巡らせた。最後、残り3手で足が切れるも一声叫び、体勢を立て直した。最後の遠い一手もなんとか引き付け切れた!

登れた嬉しさに早々にPierrot氏にSNSで報告すると、「初登だ。おめでとう!」と。マジで?と聞き直した。この時、初めてオープンプロジェクトだった事を知る。海外で初登する経験なんて人生で一体何度出来るものだろうか?この貴重なチャンスをくれた彼には、本当に感謝しかない。

右からAdrien、Geatan、橋本、Pierrot、中島

同一カテゴリの最新ニュース