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マリ・サルヴェセン、Tazlov(8b/5.13d trad)を初登
© Pete Whittaker
Xa White ukclimbing.com
訳=羽鎌田学
ノルウェー人女性クライマー、マリ・サルヴェセンが、今月初め、自国ソトラ島にある8b tradプロジェクト、Tazlovを初登した。彼女は、この3月下旬に米国ユタ州インディアン・クリークにあるBelly Full of Bad Berries(5.13b)をフラッシュしたが、これは男女不問で2人目、もちろん女性としては初めての快挙であった。そんな絶好調のマリに、Tazlov初登直後にコンタクトを取り、ルート、初登までのプロセス、そして長期プロジェクトを完遂した今の気持ちを尋ねた。
――ルートはどこにありますか?長さは?
Tazlovは、ノルウェー南西部の海沿いの都市ベルゲンのすぐ西に浮かぶソトラ島にあります。長さは約25mから30mで、中間部のルーフを越えるあたりに難しさが集中しています。
――ルートをいくつかのセクションに分けることはできますか?それぞれのセクション、どのような感じですか?
スタートのセクションは簡単で、ノープロで進みます。すると、ルーフにぶち当たるのですが、そのルーフはいつも少し濡れています。でもジャムがよく効くので、ジャムさえ習熟していれば、問題なく通過できるでしょう。ルーフを抜けると、明らかにここだとわかる、強烈な核心が現れます。そこは不自然に左に傾いた強傾斜のコーナーで、ホールドは小さく、フリクションを使った抑え込みに頼るしかありません。
核心の後は終了点まで比較的簡単なセクションが続きますが、ここもあまり満足なプロテクションを取ることができません。このルートの要は、トリッキーなボルダー課題に相当する核心をどのように解決するか、そしてそことその前後のセクションをどのように繋ぐかにあると言えるでしょう。
――どれくらいの期間、トライされていたのですか?
このルートには数年前から取り組んでいたのですが、核心を解決できるかどうか今一つ自信が持てず、かなり気長に捉えてはいました。できるかどうかかなり怪しかったので、時間を無駄にしているのではないかと思ったことも度々ありました。
昨年、古い履き慣れたシューズにしたら、手順を解き明かすことができたので、あとは、それをこなすのに充分な力をつけ、そして岩が充分に乾くのに必要な好天期の到来を辛抱強く待つことが課題でした。12月になって、こんなにも乾いた状態になったのは、信じられないほどラッキーでした。
――あなたが初登したルートで最難の一本ですか?
そのとおりです。私が初登したルートの中で、最も難しいものです。これまでの最難は7cでした。トラッドの8bは今まで経験のないグレードでしたので、グレーディングの際にいくつかアドバイスを貰えて助かりました。
――今年初め、5.13bのBelly Full of Bad Berriesをフラッシュされましたね。世界で最も象徴的、かつ最も困難なクラックの一本をフラッシュされて、より大きな、より困難な挑戦に目を向けられるようになったのでしょうか?
どんなルートでもそれを登るたびごとに、より大きな挑戦やより困難なルートに挑むことを阻む主たるものは、自分自身がその成功に疑いを抱き、全力を注ごうとしないことにある、という考えがいつも脳裏をよぎります。きっと、他の大方のクライマーも、そんな感じなのではないでしょうか。適当にトレーニングをして、ある日偶然に自分にとってチャレンジングなルートを登れることを期待することもできますが、どんなものであれ、先ず目標を設定してそれに向かって意図的に努力するほうがはるかに効率的なはずです。
Belly Full of Bad Berriesのフラッシングは注目を浴びましたが、私はそれを狙って準備していたので、私自身にとっては、他の人たちにとってほど、あまり大きな驚きではありませんでした。事前に、私はできる、と信じていましたから。
――長期的なプロジェクトを達成した感想はいかがですか?
数日間はすごく満足感に浸っていました。でも、そのうちにそれも忘れて、他のことを考えるようになりました。登れた時のビデオでまだ見てないものもありますが、後々それを見て、苦労したことを楽しく思い出すのも面白いでしょうね。
――次の目標は?
春に狙っているものもあるのですが、昨日肩を傷めてしまったので、多分、体は別のプランを求めているかもしれませんね。