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シモン・ロレンツィ、ブロー長年のプロジェクトThe Big Island Sit Startに成功。新たな9A/V17課題の誕生か?!

2021年2月12日

Michael Levy rockandice.com   訳=羽鎌田学

24才になったばかりのベルギー人クライマー、シモン・ロレンツィはフォンテーヌブローで長年のメガプロジェクトであった、そして新たな9A (V17) 課題となり得るThe Big Island Sit Startの初登に成功した。

あるルート、課題を落とそうと目論んだ時、時として単にムーブを読み解き、その手順を覚えるだけでは不十分で、徹底したシナリオ化が必要になる場合がある。そんな攻略法で、今回シモン・ロレンツィはThe Big Island Assis (Assis=sit) と呼ばれていたプロジェクトの初登に成功した。これは世界最難のボルダー課題のひとつ、多分世界で2本目、もしくは3本目 (シャルル・アルベールのNo Kapote Onlyの扱い次第) の9A (V17) 課題と目されている。世界初の9A (V17) 課題は、言わずと知れたナーレ・フッカタイバルのBurden of Dreamsだ。

「最初のパートは要リーチ。猿のように身長の割には手が長くてラッキーでしたね。それに足を長くするためにニーパッドの下に本を一冊挟んでおいたこともよかったですよ」と、Rock and Iceとの独占インタビューの中で、24才の誕生日を迎えたシモン・ロレンツィは言う。彼が話すのは、デイブ・グレアムが初登し当初8C (V15)、その後8B+ (V14) にグレードダウンされたThe Islandのシットで始めるパートのことである。

 
 
 
 
 
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Photo: Gilles Charlier.

2010年、フランス人ボルダラー、ヴァンサン・ポションがデイブのThe Islandに2ムーブ下からのロースタートを付け加えて8CとしたのがThe Big Islandである。そのThe Big Islandのシットスタートは長年に渡り半ば神話化した公開プロジェクトとなっていた。もちろんボルダー界のスターたちが何人もこのテクニカルなスローパー、クリンプ、コンプレッションムーブで構成された課題に挑戦したが、流石の彼らも歯が立たなかった。ジミー・ウェッブとかヤン・ホイヤーとかもこのプロジェクトに手をつけたこともあった。

シモンによれば、新たに付け加えられたシットスタートからのパートは、The Big Islandを抜きにして、それ自体難しめの8B(V13)ぐらいはあるようだ。

「なんかこう不思議でしたね。状態がよくて、ニーバーが楽にきまる時なんか、それほど難しく感じるわけでもないのですが」と彼は言い、説明を続ける。「とにかく状態次第なのです。一度気温が12℃の時にトライしたことがあるのですが、その時は最初のシットで始めるパートだけでもスタンドスタートで始めるThe Big Islandよりもはるかにハードに感じました。いずれにしても今まで登ったことのあるいかなる8B課題よりももっと難しかったですね」

確かに既にシモンはそれなりの数の8B課題を登っている。そもそも彼は2才の時から登っているのだ。やはり生涯クライマーの彼の父親は幼いシモンがしっかり歩けるようになるや否や外岩に連れていったのである。しかしそこでシモンはその後の人生で彼をクライミングから永久に遠ざけてしまいかねない思いをする。

「親父に初めて登らされた時、そりゃもうビビッてパンツの中でおしっこ漏らしちゃったんですよ。初めてのクライミングで、もう最低の体験ですよね」と、シモンは言う。しかし立派に成長したシモンは、すでにその岩歴の中に名立たるリードルート、ボルダー課題の名を書き込むに至っている。例えば、彼の初9a (5.14d)  ルートは、フランケンユーラのAction Directe。初8Cボルダー課題は、クレシアーノのDreamtime。最も誇るべき成果のひとつには、フォンテーヌブローで昨年成し遂げたL’Insoutenable Légèreté de l’Être (8B/V13) のフラッシングが挙げられるだろう。

さてシモンが初めてThe Big Islandのホールドに触ったのは2020年の10月。完登に要したのは、たったの2セッション。2日目の4トライ目でゲット。

「課題が、自分のスタイルにあったやつだったのです」と、彼は言う。「私の身長だと、もう完全にパワー、体幹力の問題になってくるのです。でもまあ短いレジスタンス系のボルダーは得意なほうなので、The Big Islandみたいなタイプの課題を攻める時には有利でした」

※シモン曰く、The IslandとThe Big Islandの間にはその難易度に差はなく、彼自身は、もちろん登る側のクライミング・スタイルとか身長とかに左右されるものの、共に8B+ (V14) だと考えていると言う。

The Big Islandに成功した日、極悪のシットスタートのパートに目をやるものの、実際に手を付けることはなかった。そのかわりに、他の8A+ (V12 ) や8B (V13 )の課題を登り込むことにしたのである。しかし彼は言う。

「そのシットスタートのことは、絶えず頭の中にありましたよ」そして「実にハードでトリッキーな素晴らしい課題になるのは間違いない」とひそかに考え続けたのだ。実際スタンドスタートのThe Big Islandをあれほど短期間で落とせた彼にとって、そのシットスタートが新たなプロジェクトに打って付けになることに、自分自身気づいていたのだ。

新たなプロジェクトに取りかかった時、自身の予想が見事に当たっていたことを実感した。それは途方もなくハードでトリッキーな課題だった。身長168cm弱の彼、かつてそのシットスタートを試みたボルダラーたちとは違うムーブを組み立てなければならないことを思い知らされた。

「そもそも全体を通して登った時にも核心となるThe Big Islandの核心のパートでも、みんながやるように右足のヒールフックを決めて右手をはるか遠くのスローパーに飛ばすのではなく、左手のすぐ下に左足のヒールを効かせて、左手をクロスで一般的な手順では右手を飛ばすスローパーに持っていくようにしたのです。その左手を持っていったスローパーに右手をマッチさせてから左手をクリンプホールドに送り、やっとみんなと同じ体勢に戻ることができるのです。私の方法だともっとパワーが必要になってきますが、さほどリーチには左右されなくなってくるはずです。ただしヒールフックの巧みさは絶対に必要になってきますよ」

トライ開始当初から比較的順調な進展をみせたものの、トライごとに重要な問題に気づき、ムーブの組み立て、手順に微調整が必要になっていった。そしてその一ヵ所の微調整が、水面に投げ込まれた小石が放射線状に広がる波を引き起こすように、次から次へと他のパートへと影響していき新たな調整が必要となっていったのである。それぞれの場面での体の位置とかクライミングシューズのラバーの質とかにまで。たとえば、シットスタートの際に有利になるからと考えて固めのシューズで登ると、そのシューズのせいで最終パートがより難しくなってしまうといった時もあった。突破口が開かれたのは、クラッシュパッドの上で胡坐をかいていた時ではない。それは真夜中の2時、課題のことが脳裏から離れず悶々としていた時だった。

「ある考えがひらめいたのです」と言い、シモンは続ける。「柔らかいクライミングシューズのラバーのほうが課題最後のパートでのヒールやトウに適していたのです。ですからそれを剥がして固いシューズに張り付ければいいことに気がついたのです。そうやってThe Big Island Sit Start用のクライミングシューズが誕生したのです!」

ほどなく、シットスタートから始めて“The Big Island”をほとんど登り切る直前まで繋がるようになってきた。もう一息。それは完登より10日前のことだった。

続く1週間は悪天。しかし彼オリジナルのムーブの組み立てで必要になってくる極端なヒールフックのせいでこわばった腰の筋肉を休めるには好都合だった。かつ最高のラインを完成するためには不可欠になってくるだろう、ムーブの組み立ての最終的な洗練作業に費やす時間ができたのであった。

再び課題の前に立った時、彼は心身ともにフレッシュで、集中力も申し分なかった。そして遂にシモンは、正確に何度トライしたかを言い切る自信はないようだが、およそ25回目のセッションで、念願のThe Big Island Sitの初登を成し遂げたのである。

「それはもう嬉しかったですよ」と、彼は語る。難易度からしても彼にとってパーフェクトなチャレンジ課題の達成であったのは言うまでもないが、おまけに世界で最も有名な課題のうちの一本の初登となれば、彼の嬉しさも容易に想像できるだろう。「岩の上でもう少しのところで涙を流すところでしたね」

さてグレードは?

「それが最大の問題ですね」とシモンは言い、続ける。「他の8C+ (V16) 課題よりは難しいようなのですが、なにしろ比較するための同じようなタイプの9A (V17) 課題が存在しないのです。個人的にはそのあたり、8C+ (V16) と9A (V17) の間の難しさだとは思います。ではやはり難しめの8C+ (V16)?それとも8C+ (V16) と9A (V17) の真ん中?果たして9A (V17)?その問いに私自身ははっきりと答えることはできませんが、トライしたことのある人たちのほとんどは9A (V17) はあるんじゃないかと考えているようです。まあ、そのうちにはっきりするはずですよ」

※この新たなエクステンション課題をシモンは“Soudain Seul”と命名している。

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