フランコ・クックソン、9a+(5.15a)のスラブ、The Dewin Stone初登

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訳=羽鎌田学

10月26日、英国ウェールズ北西部、グウィネズ州トゥス・マウルにあるスレートの岩場で、イギリス人クライマー、フランコ・クックソンが、長期にわたるスラブ・プロジェクトであったThe Dewin Stoneを初登し、9a+(5.15a)とグレーディングした。

グレードが9a+ということなら、The Dewin StoneはスイスのCryptography 9b(アレッサンドロ・ゼニ初登)に続き世界で2番目にハードなスラブルートとなるだろう。

ジェームズ・マカフィー初登のThe Meltdown(9a)と同じ壁に位置する新ルート、The Dewin Stone(Dewinはウェールズ語で『魔術師、達人』という意味)は、下部はクラック・システムに沿って登り、その後当岩場を象徴するThe Meltdownの核心部へダイレクトに合流し、上部は右に逸れるThe Meltdownを横目に、やはりそのままダイレクトに登り続ける。

プロジェクト開始当初、フランコはこのルートを「The Meltdownのハードなパートを、そのうちの一手を除いて、すべて登り、それにもっとハードなイントロとエンディングを付け足して創りあげた『スレート・エンデューロのモンスター』だ」と描写している。

The Dewin Stoneは、フランコがThe Meltdownに追加した2本目のバリエーションとなった。当時いわゆるスポートルートで8台のグレードを1本も登ったことがなかった彼は2022年3月にオリジナル・ルートを初登して9aとグレーディング。そして1ヵ月後にはそれに9a+となるダイレクト・フィニッシュを追加した。

その最初のバリエーションであるThe Meltdown Direct(9a+)は、先ずはオリジナル・ルートを辿り、その核心のパートを通過した後、最後のトラバースに入らずに終了点目指して直上する。The Dewin Stone完登の翌日、フランコは「2本のルートを比べた場合、より多くのハードなムーブが連続することになるThe Dewin StoneのほうがThe Meltdown Directよりも難しい」と私たちに語った。

フランコは、The Dewin Stone完登後、インスタグラムで「最高にハッピーです」と述べ、「完登までとても長い時間が、またとても多くの労力が必要でしたが、私は今、まさに魔法のようなその結果に満足しています」と続けた。

「ここ何年も、私はスラブ・クライミングを極限まで追求するという考えに完全に取り憑かれてきました。そしてジェームズ・マカフィーのThe Meltdown(9a)は、エンデュランス系のスラブ・クライミングが必要とするもの、そして将来の可能性を示唆するものに私の目を開かせてくれたのです。

他の高難度スラブ・ルートにトライして、基準となるものを理解しようと海外にも出かけてみましたが、ここ北ウェールズ、大変身近なところに最高のものがあることがわかったのです。ここにあるものは、難易度だけではなく、質の面でも世界クラスです。ここは、私にとってお気に入りの場所なのです。

そんな時、The Meltdownと同じ壁に、完璧なプロジェクトとなるラインを2本見つけました。左のラインは一定の難しさが延々と続く実にハードなもので、右のラインは気が遠くなるほどに斬新なものでした。The Dewin Stoneは、この左手のラインを登るルートで、グルーヴ、またはリブを終始辿っていきます。

ルートは4つのパートに分けることができます。最初の8mは簡単で、それが終わると、いきなりハードな12手が続くパートに入ります。そのパートの最後のムーブはルート全体の中で最も難しいものです。私はここで何十回も落ちました。これをこなすと、The Meltdownのグルーヴに入ります。ここでは、The Meltdownの核心ムーブの一手を除いた全て(私の手順では12手のムーブ)をこなすことになります。

The Meltdownのフットピックアップ・ムーブ(足を手でフットホールドに持ち上げるムーブ)の後、右にトラバースせずに直上し、大胆かつダイナミックなムーブを含む、さらに長いパートに入ります。そこには何ヵ所か小さなクリンプを使ったパワフルな引き付けムーブがあるのですが、それが腕がパンプしていると非常に困難になるのです。このパートで17手のムーブをこなした後に頭上のホールドへ飛びつくのですが、そのジャンプムーブまでに、途切れることなく連続的にハードなムーブを、トータルで41手(そしてさらに重要なことに、数えきれないほどの足の動き)をこなしていることになります。

このラインは複雑に聞こえるかもしれませんが、実際はグルーヴに沿ってまっすぐ上に伸びています。特にこのグレードのルートにしては、極めて明瞭なラインです。混乱の主な原因は、The Meltdownが不自然な蛇行ルートであることです。The Meltdownは弱点をついた素晴らしいルートですが、その結果、2本の直上するラインの間を左右に行ったり来たりして登っていきます。

The Meltdownを登った後、The Dewin Stoneのそれぞれのムーブは比較的すぐにできるようになりましたが、このルートの長さの程度はまだ十分に理解できていませんでした。The Meltdownを登った時とは全く異なる、体の中のエネルギー・システムを使っているように感じました。持てるもの全てを振り絞り、力の限りを使い果たし、ルート最後のパートではもうぼろぼろでした。

ムーブは完璧にわかっていて、ルート上あちらこちらで腕をシェイクさせることもでき、極小の滑りやすいフットホールドを見つけてはそれぞれのパートを楽に登れるようになってもいました。どんなクライミングシューズをどんな状態で使ったらいいかといったこともわかっていて、ダイエットも適切で、体調は最高でした。それでもフォールして、また翌日戻ってきてハードにトライを重ねる日々の連続でした。私にとって、The Dewin Stoneは実際に比較できる唯一のルートであるThe Meltdownよりもはるかに難しく感じます。はっきり言って、ワン・グレード以上はハードです。

私はここ数年でこのスタイルのクライミングがかなり上達してきました。このようなルートをグレーディングするのは少しナンセンスなのですが、私は何らかのグレードはつけるべきだとは固く信じています。もちろん、私が今本当に夢中になっていることは、次のプロジェクトに手をつけることですが、グレードはさらに上になるでしょう。まったく、あのムーブはこの世のものとは思えませんよ」

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