東京五輪スポーツクライミング注目選手

文=北山 真  写真=山本浩明

2021年8月3日~6日、東京・お台場の青海アーバンスポーツパークでスポーツクライミング競技(3種目コンバインド)が開催される。世界選手権で選出された選手、プラス4大陸で開催された(本来5大陸だがアジアは未開催)各選手権で選ばれた選手男女20名ずつが参加する。

ワールドカップなどでおなじみのトップ選手たちが注目されるのは当然だが、日頃目にすることがあまりない、オセアニア代表、アフリカ代表の選手たちにも温かい声援を送りたい。ここでは日本人選手4名を筆頭に男子7名、女子6名の注目選手を紹介する。

競技は全日スピード→ボルダリング→リードの順で行われ、成績は順位の掛け算となる。たとえば、1位×2位×4位であれば8ポイント、2位×3位×2位なら12ポイントで数字が小さいほうが上位となる。

[競技日程]
8月3日(火) 17:00~22:40 男子予選(20名)NHK BS1
8月4日(水) 17:00~22:40 女子予選(20名)NHK BS1
8月5日(木) 17:30~22:20 男子決勝(8名)NHK Eテレ
8月6日(金) 17:30~22:20 女子決勝(8名)テレビ東京系

男子注目選手

楢﨑智亜(日本)

器械体操で培ったフィジカルを武器に、クライミングを始める。国内コンペ初出場後わずか5年で世界の頂点に。ボルダー特にコーディネーション系では他の追従を許さない力を発揮する。2019年瑞牆山でV14をフラッシュ(世界タイ記録)。自然の岩場でもコンペの能力が発揮できることを証明した。スピードでは5秒72の日本記録を持つ。金メダル最有力選手。

1996年6月22日生まれ、栃木県出身

2016年世界選手権優勝(B)
2016年WC年間チャンピオン(B)
2019年WC年間チャンピオン(B)
2019年世界選手権八王子優勝(B)
WC通算優勝回数=4(B)
2018年世界選手権コンバインド=5位
2019年世界選手権コンバインド=1位
スピード自己ベスト=5秒72

原田 海(日本)

小学5年でクライミングを始める。自宅に近いクライミングジムには滑りやすいホールドが多く、自然に保持力が付いたという。得意なホールドは“カチ”。

1999年3月10日生まれ、大阪府出身

2018年世界選手権優勝(B)
2019年WC呉江2位(B)
2019年WCクラーニ2位(L)
2020年ボルダリングジャパンカップ優勝
2018年世界選手権コンバインド=4位
2019年世界選手権コンバインド=4位
スピード自己ベスト=6秒34

アダム・オンドラ(チェコ)

現在世界最強の戦闘能力を持つクライマー。コンペ、スポートルートはもちろん、ビッグウォール、トラッドルートといったほとんど未経験のジャンルにもあっという間に適合し、世界最高レベルの結果を出してきた。その登りは決して美しいものではなく、常に岩との戦いを思わせるアグレッシブなものだ。その感情をむき出したクライミングを目の当たりにすれば、クライマーであればもちろんのこと、一般観客も必ずや心奪われるであろう。

1993年2月5日生まれ、ブルノ出身、185㎝、70㎏

2009年世界選手権2位(L)
2009年年間チャンピオン(L)
2011年世界選手権2位(L)、3位(B)
2012年世界選手権3位(L)
2014年瀬麻衣選手権1位(L)、1位(B)
2015年年間チャンピオン(L)
2016年世界選手権1位(L)、2位(B)
2018年世界選手権2位(L)
2019年年間チャンピオン(L)
2019年世界選手権1位(L)
2018年世界選手権コンバインド=2位
2019年世界選手権コンバインド=18位
2019年コンバインド予選=2位
2021年WCマイリンゲン1位(B)
スピード自己ベスト=7秒46

ヤコブ・シューベルト(オーストリア)

リードのプロフェッショナル。コンペで圧倒的強さを見せるが、自然の岩場でもPerfect Mundo(5.15c)完登を筆頭に、5本の5.15b、7本の5.15aを手中にしている。ボルダーでもV15を達成、V14のフラッシュにも成功。リードでは確実に上位に入ってくるであろう。

1990年12月31日生まれ、インスブルック出身

2011年WC年間チャンピオン(L)
2012年世界選手権優勝(L)
2014年WC年間チャンピオン(L)
2018年世界選手権優勝(L)
2018年WC年間チャンピオン(L)
WC通算優勝回数=18(L)
WC通算優勝回数=3(B)
2018年世界選手権コンバインド=1位
2019年世界選手権コンバインド=3位
スピード自己ベスト=7秒00

アレックス・メゴス(ドイツ)

2012年、世界初の9aのオンサイトに成功し、一躍注目される。アダム・オンドラとともに世界で2本だけの9c(5.15d)の1本、Bibliographyをセユーズで初登している。圧倒的保持力と”元祖トレーニングの国”ドイツで培われた体幹が武器。リードがメインだがV15のボルダー課題も10本ほど完登している。

1993年8月12日生まれ、エンラーゲン出身、173㎝、57㎏。

2017年WCクラニ2位(L)
2018年WCシャモニ3位(L)
2018年WCブリアンソン1位(L)
2018年世界選手権3位(L)
2019年WCヴィラール3位(L)
2019年WCシャモニー2位(L)
2019年世界選手権コンバインド=8位
スピード自己ベスト=7秒57

ショーン・マッコール(カナダ)

ワールドカップ10年選手。常にストイックにトレーニングをこなしパフォーマンスを維持してきた。その明るく聡明な性格から選手はもちろんスタッフ、IFSCメンバーにも信頼され選手委員会代表となっている。コンペティターというイメージが強いが、2009年にはスコーミッシュでクリス・シャーマ初登のDeamcatcher(5.14d)を第2登している。

1987年9月3日生まれ、ノースバンクーバー出身、169㎝、60㎏。

2011年WCクラニ1位(L)
2012年WC西寧1位(L)
2013年WCログドラゴメル1位(B)
2015年WC重慶1位(B)
2016年WCヴィラール1位(L)
2017年WCブリアンソン2位(L)
2018年WC重慶2位(B)
2019年WCブリアンソン5位(L)
2019年世界選手権5位(L)
2019年WCクラニ4位(L)
2019年世界選手権コンバインド=10位
スピード自己ベスト=6秒99

ヤン・ホイヤー(ドイツ)

10歳ですでにリードの国内大会に出場。さらに2008年から2010年にはリードのワールドカップに出場した。2010年、当時世界最難であったAction Direct(9a/5.14d)を完登。2011年からはボルダーに転向。2012年には世界選手権で5位に入賞。2014年にはワールドカップ年間チャンピオンに輝いた。自然のボルダーでも多数のV15を手中にしている。2018年にはマヨルカ島でEs Pontas(5.15a DWS)を第3登。 長身を生かしたダイナミックなクライミングに注目したい。

1992年2月9日生まれ、ケルン出身、187㎝、77㎏

2012年世界選手権5位(B)
2014年世界選手権3位(B)
2014年WC年間1位(B)
2015年WC年間2位(B)
2018年世界選手権コンバインド=3位
2019年世界選手権コンバインド=17位
2019年コンバインド予選=5位
スピード自己ベスト=6秒45

女子注目選手

野口啓代(日本)

小学校5年生の夏に家族旅行で訪れたグアムのゲームセンターでフリークライミングを体験する。帰国後もクライミングへの興味を持ち続け、自宅近くのつくば市にオープンしたばかりのPUMPスポーレクライミングジムに通いはじめる。小学校から中学校に進学する期間の春休みに開催された全日本ユース選手権では中高生を押しのけて優勝し、天才少女の出現と話題になった。ボルダーはもちろん、リードの実力も高い。さらに苦手だったスピードも、全体の中間程度の成績を出せるようになっている。自ら「最後の大会」と宣言しているこの大会で総合力でメダルの獲得に期待したい。

1989年5月30日生まれ、茨城県出身、165㎝、49㎏

2005年~2016年ボルダリングジャパンカップ11連勝
2005年世界選手権3位(L)
2007年世界選手権2位(B)
2010年WC年間チャンピオン(B)
2011年WC年間2位(B)
2012年WC年間2位(B)
2013年WC年間2位(B)
2014年WC年間チャンピオン(B)
2015年WC年間チャンピオン(B)
2016年WC年間4位(B)
2017年WC年間3位(B)
2018年WC年間2位(B)
2019年WC年間2位(B)
2019年世界選手権2位(B)
2018年世界選手権コンバインド=4位
2019年世界選手権コンバインド=2位
スピード自己ベスト=8秒68

野中生萌(日本)

8歳のとき、登山が趣味の父親とともにクライミングジムに連れて行かれたことで、クライミングと出会う。2016年、ボルダリングワールドカップ・ムンバイ大会で初優勝し、同年ミュンヘン大会でも優勝、世界ランキング2位を獲得する。2018年ワールドカップでは初の年間総合優勝を果たす。スピードにも定評があるので、あとはリードでも上位に入りたいところだ。

1997年5月21日生まれ、東京都出身、162㎝、52㎏

2014年WC年間5位(B)
2015年WC年間3位(B)
2016年世界選手権2位(B)
2016年WC年間2位(B)
2017年WC年間4位(B)
2018年WC年間チャンピオン(B)
2019年ボルダリングジャパンカップ1位
2018年世界選手権コンバインド=4位
2019年世界選手権コンバインド=5位
スピード自己ベスト=7秒88

ヤーニャ・ガーンブレット(スロベニア)

7歳でクライミングを始め、8歳でヨーロッパユース選手権で優勝。以来ほとんどの大会で優勝、悪くても表彰台に上がらないコンペはない。2015年にワールドカップデビューし、翌年には世界選手権優勝、さらに年間チャンピオンとなる(リード)。2017年にはボルダーにも参戦しいきなり年間2位。本年度のワールドカップでも圧倒的強さを見せている。リード、ボルダー双方で1位を取れば、苦手なスピードが下位でも優勝する可能性は高い。

1999年3月12日生まれ、グラデック出身、164㎝

2016年世界選手権1位(L)
2016年WC年間チャンピオン(L)
2017年WC年間チャンピオン(L)
2017年WC年間2位(B)
2018年世界選手権2位(L)
2018年世界選手権1位(B)
2018年WC年間チャンピオン(L)
2018年WC年間4位(B)
2019年世界選手権1位(L)
2019年世界選手権1位(B)
2019年WC年間2位(L)
2019年WC年間チャンピオン(B)
2018年世界選手権コンバインド=1位
2019年世界選手権コンバインド=1位
2021年WCマイリンゲン1位(B)
スピード自己ベスト=9秒15

ショウナ・コクシー(イギリス)

クライミングが盛んな国でありながら、コンペで特に女子は目立った活躍をする選手がいなかった英国。ショウナの活躍でそれが一新した。特にボルダーでの活躍が目覚ましい。肩の故障で一時期第一線から遠ざかっていたが2019年から復帰している。

1993年1月27日生まれ、ランコーン出身、163㎝、58㎏

2012年WC3大会で2位(B)
2013年WC1大会で2位、2大会で3位(B)
2014年WC年間2位(B)
2015年WC年間2位(B)
2016年WC年間チャンピオン(B)
2017年WC年間チャンピオン(B)
2019年WCモスクワ2位(B)
2019年世界選手権3位(B)
2019年世界選手権コンバインド=3位
スピード自己ベスト=9秒14

ブルック・ラブトゥ(USA)

名クライマーの子供というのは珍しくないが、父ディディエ・ラブトゥ、母ロビン・アーベスフィールドという父母ともに世界チャンピオンというのは他にいないだろう。まさにクライミング界のサラブレッド。幼少期は常に白石阿島に続くナンバー2であったが、今や押しも押さねぬチームUSAの主力メンバーである。

2001年4月9日生まれ、ボルダー出身、157㎝

2016年世界ユース2位(L)、3位(B)
2017年世界ユース2位(L)、3位(B)
2018年世界ユース1位(L)
2019年世界ユース3位(L)
2019年世界選手権コンバインド=9位
スピード自己ベスト=9秒12

ラウラ・ロゴラ(イタリア)


写真=IFSC

2020年に世界で女性5人目の5.15aの完登、さらに同年女性2人目の5.15bの完登、2本の5.14aのオンサイト、5.14c以上を7本初登と自然の岩場での実力はピカイチ。おそらく国際大会の上位選手で最も身長が低いが、それを感じさせない身体能力を持つ。

2001年4月28日生まれ、ローマ出身、153㎝

2018年世界ユース1位(B)
2018年世界ユース1位(B),(L),(C)
2019年ヨーロッパ選手権2位(L)
2019年WC印西7位(L)
2019年コンバインド予選8位
2020年WCブリアンソン1位(L)
スピード自己ベスト=10秒51

出場予定全選手(決定順)

男子

1  楢﨑智亜
2 ヤコブ・シューベルト(オーストリア)
3 リシャット・ハイブリーン (カザフスタン)
4 原田 海
5 ミカエル・マウェム (フランス)
6 アレックス・メゴス(ドイツ)
7 ルドヴィコ・フォッサーリ (イタリア)
8 ショーン・マッコール(カナダ)
9 アダム・オンドラ(チェコ)
10 バッサ・マウェム (フランス)
11 ヤン・ホイヤー(ドイツ)
12 ユーフェイ・パン (中国)
13 アルベルト・ヒネス (スペイン)
14 ナザニエル・コールマン(USA)
15 コリン・デュフィ(USA)
16 ミヒェル・ピッコルルアツ (イタリア)
17 アレクセイ・ルブツォフ(ロシア)
18 トム・オハロラン (オーストラリア)
19 クリストファー・コッサー (南アフリア)
20 チョン・ジョンウォン(韓国)

女子

1 ヤーニャ・ガーンブレット(スロベニア)
2 野口啓代
3 ショウナ・コクシー(イギリス)
4 アレクサンドラ・ミロスワフ (ポーランド)
5 野中生萌
6 ペトラ・クリンガー(スイス)
7 ブルック・ラブトゥ(USA)
8 ジェシカ・ピルツ(オーストリア)
9 ジュリア・シャヌルディ(フランス)
10 ミア・クランプル(スロベニア)
11 ユーリヤ・カプリナ (ロシア)
12 カイラ・コンディ(USA)
13 ラウラ・ロゴラ(イタリア)
14 イーリン・ソン (中国)
15 アラーナ・イップ (カナダ)
16 アヌーク・ジョベール (フランス)
17 ヴィクトリヤ・メシコヴァ (ロシア)
18 オシアナ・マッケンジー (オーストラリア)
19 エリン・スターケンバーグ (南アフリカ)
20 ソ・チェヒョン (韓国)

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