山田・谷ペア、カンチュンナップ北西壁初登攀


日頃からロッキーの山でともに登ってきた力を出し切った山頂

2022年4月23日、カナダ在住の山田利行と谷剛士が、カンチュンナップ(アビ)(6090m)北西壁の新ルートの登攀に成功し、登頂した。

カンチュンナップは、ネパール・クーンブ山域の北部、ンゴズンバ氷河の東に位置する。このあたりの山は、南面は緩やかながら北面が切り立っており、クライマー達の目を引く。山田と谷は、カンチュンナップ北壁からの初登攀を目標としていた。

カンチュンナップの初登頂は、1953年にエドモンド・ヒラリーらが南面から登ったものであるが、北面に手がついたのは遅く、2014年のチェコ隊だった。2019年にはイギリス隊がトライしたが、山頂には届かなかった。2021年にチェコ隊が隣のカンチュンサーの北面を完登し、この一連の山々において、北面からの初登頂となった。しかし、カンチュンナップの北壁は残されたままである。

山田と谷は、4月14日にABCを設営。その後、5600mまでの高度馴化と下降ルートとなる南面の確認を終えた。しかし、当初目標としていた北壁中央のラインは、氷が解けてルートが繋がっておらず、あきらめざるを得なかった。

ふたりが選んだのは、北西壁のライン。2016年に山野井泰史、古畑隆明、遠山学がトライし5650mを最高到達点として引き返したラインであった。

4月22日に登攀開始、5500mでビバークとなった。翌日、11ピッチの氷雪壁を登攀し、頂稜の肩に出た。待っていたのはボロボロのヘッドウォールだった。3ピッチのロッククライミングを経て、頂上氷河へ抜けた。その後、ナイフリッジを3ピッチ超トラバースし、16時に頂上に立った。下降は、東面を目指しカンチュンサーとのコルに降り立つ。2晩目のビバーク後、コルから南面に降りて、24日ゴーキョに戻った。


核心部となったミックスセクションを登る山田

今回ふたりが登った北西壁のラインのグレードは、ED、M5、WI4、900mとしている。
予定より早く登攀を終えたふたりは、次の目標を探すべく、現在、ネパールの山々を歩いている。

写真提供=山田利行・谷剛士(日本山岳会東海支部)
取材・文=柏澄子

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