ジェームズ・マカフィー、Yma O Hyd (E10 7a) 初登


印象的なクロスムーブ

Natalie Berry ukclimbing.com
訳=羽鎌田学
写真=Will Rupp

ジェームズ・マカフィーが、北ウェールズのグウィネズ州にあるガスト・アル・オゴッブで、Mission Impossible (E9 7a) のダイレクトスタート・バージョンを初登し、これをYma O Hyd (アマ・オ・ヒド:ウェールズ語読み) と名付け、グレードをE10 7a (8c+)とした。新しいスタートは、先ずは縫い目のように極細のクラックを登り、その後ビュークスのラ・ローズ・エ・ル・ヴァンピールばりのクロスムーブをこなして、最終的にMission Impossibleにその核心部で合流する。

そのMission Impossibleをジェームズは2009年に、ニール・カーソンが1997年に初登してから10年以上経って、初めて再登している。そして昨年、ジェームズの目をとらえたのがMission Impossibleへ合流するダイレクトなラインだった。それは同ルートをトライするエマ・トワイフォードをビレイしていた時のことだった。

「2009年以来行っていなかったので、あそこの岩がどれほど素晴らしいかということをすっかり忘れていました。また壁下半分のムーブも面白いものになりそうでした」と、彼は語る。

その時、ジェームズはエマとベン・ブランズビーのサポートを得て、ダイレクトスタートの「楽観的な」リードにトライしてみた。

「Mission Impossibleに合流できるとわかった時は興奮しましたが、その時はスタートからのパートが大変やっかいで、ギアにも不安を感じました。そのままMission Impossibleを続けて登れるかどうかは自信がなかったので、右隣のE7のHeart of Stoneのラインに入っていく簡単なフィニッシュ・バージョンを試みたのですが、それも素晴らしい8b (E9) でした」

ジェームズは先ずこのプロジェクト‐上部はHeart of Stoneを登るバージョン‐を今年の7月初頭に完成させ、続いて、その後Yma O Hydと命名したリンクルートのトライを開始した。ジェームズはこのルートの完登までのプロセスを「壮大な旅」と形容し、次のように語る。

「7月は絶好調で、かなり進歩を感じました。曇り、雨、湿気、あらゆる気象条件下でトライしました。時々大量発生するヌカカ対策に、ビレイヤーが防虫ネットを頭に被ってビレイしていた時もありました。7月下旬にはひょっとしたら近日中に登れるのではないかという気もしてきたのですが、9月までは実際にやってみる決心がつきませんでした。ルート上でのレストは悪く、本当に容赦ないルートだったのです。」

Mission Impossibleの核心のホールドはよく濡れているので、ジェームズは染み出しを抑えるためにアルミホイルを使ったが、それも完璧な解決方法ではなかった。そして9月13日の金曜日、ジェームズはより乾燥し、より気温の低い状況の下、岩場に戻った。その日彼は無事に完登したものの、きわどかったトライについて次のように語っている。

「それまでの3回のいいトライでうまくとれなかったクリンプホールドを満身の力を込めて握りしめ、次の2つのムーブをなんとかこなし、最後となるシェイクポイントへ。それ以後まともにシェイクできるところはもうなく、後は終了点目指して突き進むだけでした」

グレードに関してジェームズは、比較的プロテクションの良いハードなE10と表現している。彼は次のようにコメントする。

「フィジカル的には、英国で最も難しいE10です。Rhapsodyも同様のレベルのルートですが、強烈なランナウトがあります」

このルートの名前「Yma O Hyd」はウェールズ語で「まだここにいる」という意味で、ウェールズの民謡のタイトルに由来しているという。今回の体験とルートの質について、ジェームズは次のように語る。

「登れて最高に嬉しかったです。スポート、トラッドを問わず、私の中では3本指に入るルートです。ボルトが打たれていれば、英国にある同じグレードのスポートルート中で最高峰の候補になるでしょう。ルート前半は非常に引き締まった感じで、パワーエンデュランスがベースになっています。後半は超高速リカバリーが重要です。Heart Of Stoneのほうに逃げていくTy Pwmpty (ティ・プンプティ:The Pumphouse) も面白いルートです。7月の頭に私がそれを登った日に、エマもMission Impossibleを完登できて、その日は2人にとって最高の一日になりました」

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