実践!クライミング語 ~基本編 Chap.2~
| ジロー | よう! スネ太。 | 
| スネ太 | どうも、ジローさん。最近、どこで登ってるんですか? | 
| ジロー | T県の野○岩ばっかり。カラバンジアって課題が落とせ①そうなんだよ。 | 
| スネ太 | あそこのルーフ②にあるやつですか? | 
| ジロー | うん。ポケット③ばっかりだから得意なんだけど、ストレニ④系だから最後で力尽きるんだよ。レスト⑤もできないし、すごくパンプ⑥しちゃう。
 あとはアンダー⑦からリップ⑧にランジ⑨して、マッチしたらマントル⑩を返して終了なんだけどな~。  | 
| スネ太 | あ~、ジローさんはタンデュー⑪強いっすもんね。でも、あの課題って一本指とかでしょ?パキッた⑫りしないんですか? | 
| ジロー | したことないな~。いつも一本指キャンパシング⑬で鍛えてるし、大丈夫! でも、上のスラブ⑭がけっこう怖いんだよ。一歩だけ微妙なスメア⑮があって、足がミシン⑯踏んじゃう。 | 
| スネ太 | えっ……ミシンって、なんすか? | 
| ジロー | 生まれたての小鹿みたいに足が震えることだよ……。 | 
イラストレーション=橋尾歌子構成・文=ロクスノ太郎
*この記事は『CLIMBINGjoy No.3』掲載記事をもとにしています
用語解説
 ① 落とす 
レッドポイントすること。ルートは落としても、ビレイ中にクライマーを落としてはならない。
 ② ルーフ  
言葉に反して、天井のような壁。初心者に「わ〜すご〜い」と言われたければ、これを登ろう。ガバさえあれば、公園にある雲梯と変わらない。
 ③ ポケット  
穴状ホールドのこと。小山田大を知ってクライミングを始めた人も多いことだろう。小山田といえばポケット。憧れるのはいいが、安易に一本指でぶら下がると普通の人は壊れる。
 ④ ストレニ(ストレニュアンス) 
疲労が徐々にたまるような性質。この手のルートは、ワンテン地獄(どうしても、途中で一度テンションをかけてしまうこと)に陥ることが多い。「ここからなら余裕でできるのにな〜」と嘆いても、登れていないことには変わりない。
 ⑤ レスト  
主に腕の疲労(パンプ)を回復させるために行なう。しかし、レストポイントにいるからといって、回復してこなければレストとはいえない。
 ⑥ パンプ 
腕がパンパンになって、ホールドを持っていられなくなること。または、デスワー総統こと内藤直也氏が経営する大手クライミングジムのことを指す。
 ⑦ アンダー(~クリング、~ホールド)
腰のあたりで持つと安定する下向きホールドとその持ち方。重いタンスを持つイメージで。
 ⑧ リップ 
特に書くことがないので、CLIBMING-net クライミング用語 ら行 参照。
 ⑨ ランジ(ダイノ) 
ジャンプ、飛びつきのこと。セユーズにはあのアダム・オンドラもできなかったという、
 ⑩ マントル 
這い上がりムーブ。「水面に逆さに浮かべた洗面器を水中に沈めるように返すんだ」とわかったような顔で教えると、初心者には尊敬されるかもしれない。
 ⑪ タンデュー 
指を伸ばしたままホールドすること。これが強い人は、だいたい指が強い。要注目だ!
 ⑫ パキる 
ざっくり言えば、指を激しく傷めること。「パキったこともなくて、なにが『がんばっている』だ!」と、以前、センパイが語っていて感動したことがある。しかし、パキらないに越したことはない。
 ⑬ キャンパシング 
「キャンパスボード」というものを用いて行なうトレーニング方法を指す。現在では、クライミング中に足が壁から離れた状態(足ブラ)から、上半身の力だけで次のホールドを取りにいくムーブのこともいう。
 ⑭ スラブ 
普通は垂直以下の壁を指すが、最近は垂直でもスラブ(スラビー)と言ったりする。人工壁でバリバリ登っているクライマーも、外岩のスラブでは初心者のようになることが多い。これを得意とするクライマーを「スラバー」と呼ぶ。
 ⑮ スメア 
エッジがないようなところに、ベタッとソールを押しつけるように置くこと。だいたい、滑りそうで怖い。
 ⑯ ミシン(~を踏む) 
クライミング中、足がガタガタと震えること。しかし今どき、足踏みミシンを知っている人も少ないので、これを使うと「ジジイ、なに言ってんだ?」という視線を向けられるだろう。
登場人物
*登場人物は架空です。





