アダム・オンドラ、Bon Voyage(E12)第2登

Xa White  ukclimbing.com
訳=羽鎌田学

 
 
 
 
 
View this post on Instagram
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

A post shared by Adam Ondra (@adam.ondra)

2月中旬、フランス、アノの岩場で、アダム・オンドラが、ジェームズ・ピアソン初登のE12ルート、Bon Voyage(9a)を初めて再登し、「トラッドでは(フィジカル的に)世界最難ルートになりうる」と評した。

このラインはジェームズが2023年初めに初登したもので、2017年にやはり彼が初登したルートであるLe Voyage(E10、8b+)と最初のパートを共有し、Le Voyageから分かれた後は一見何もないフェースを浅いポケットを使って左方向にトラバースし、最後にはテクニカルなカンテを登って終了するものだ。

初登当時、ジェームズはBon Voyageにグレードをつけることをためらい、「先ずは、自分のレベルをより正確に評価するために、さらに何本かのハードなスポートルートにトライし、また他のハイレベルのクライマーと一緒にアノで登ってみたい」と述べるにとどまっていた。

そして、ヤーコポ・ラルケル、セバスティアン・ベルト、イグナシオ・ムレーロらのクライマーたちとBon Voyageで時間を過ごした後、昨年12月、ジェームズは、なぜこのルートのグレーディングが自分にとってこれほど難しいのかについての詳細な投稿をし、その中でBon VoyageのグレードをE12とした。

年が明けて2月初旬、アダム・オンドラがアノを訪れる。そしてジェームズからルートについての情報とサポートを得て、Bon Voyageにトライ開始。初日、アダムは、先ずはルートの核心パートを試み、その後ルート下部、Le Voyageと共有する最初のパートに手をつけ、そこを効率的に登る方法を探る。

その後、天気がぐずつき、アダムはスポートクライミングを目的に一旦短期間アノを離れ、ニース近郊の渓谷、ゴルジュ・デュ・ルーにあるデヴェルセの岩場を訪れ、唯一乾いていたという2002年に小山田大が初登した8c+/9aルート、Ingaを瞬く間に登り、続いて、かつてはクライミングのメッカであった南仏の岩場ビュークスの新しいセクターに移動し、8b+と8cのルートをオンサイト。

再びアノに戻り、トライ2日目。早々にアダムはリードで登り出す。そしてトライ3日目、一度は最終パートであるカンテの最初のムーブで落ちたものの、その日のうちに再登に成功した。

「このジェームズ・ピアソンの傑作を第2登できたことを、とても嬉しく、誇りに思っています。私はトラッドクライミングのエキスパートではありませんが、このルートは(フィジカル的に)世界最難のトラッドルートになることでしょう。完登までに3日間のトライが必要で、それはまさに真剣勝負でした。

このルートはさまざまな点でチャレンジングな一本だったと言えます。凄くランナウト(たぶん安全)することを別にしても、極めてハード(そして変則的)なムーブが幾つかあり、これを登るためには実に多才なクライマーでなくてはなりません。このルートは間違いなく、私がこれまでに登った中で最高の一本であり、あのような壁を登るのに最低限必要なホールドと、ランナウトするにしても安全を確保するための必要最小限のギアをセットできる場所があったのは、まさに奇跡です。

グレードについてですが、もしボルトが打たれていれば、難しめの9aルートになるとは思います。実際にはギアをセットしながら登るのですが、それによってフィジカル的にもう少しハードに、かつスパイシーさが加味されることになります」

アダムが再登に成功した直後のukclimbing.comとのやり取りの中で、ジェームズは次のように述べている。

「アダムが時間を割いてアノに来てくれ、Bon Voyageにトライし、そしてそれを完登してくれたこと、また、そのルートがおそらく彼が予想していた以上の素晴らしい経験を彼に与えてくれたことに、私は有頂天になっています。たとえば、アダムは私に、完登トライの際のルート最上部での奮闘的なクライミングが本当に忘れられない経験となった、と言いましたが、まさに私も同じことを感じたのです」

「彼が来て、ルートを再登して、そして私が想像していた以上にハードに感じたことにとても興奮してはいますが、それよりも、彼がルートをトライするために足を運んでくれ、ルートにトライしながら素晴らしい時間を過ごしてくれたこと、そして彼がBon Voyageのラインは母なる自然がもたらした本当の奇跡だという私の意見に全面的に同意してくれたことが、より一層嬉しいのです」

クライミング史に彼の名が刻まれることになった世界初の9b+ルートと9cルートの初登、他の誰よりも多数の9b+の再登、そして自国チェコのモラフスキー・クラスにある8C+ボルダー課題、Terranova(同課題は再登の暁にはほぼ確実にアップグレードされると思われる)の初登に加え、今回アダムが達成したBon Voyageの第2登は、史上最も偉大なクライマーのひとりとしての彼の(すでに確固たるものになっている)地位をさらに強固なものにすることだろう。

関連リンク

同一カテゴリの最新ニュース