Burden of Dreams(V17)、ついにウィル・ボシが第2登

Natalie Berry UKC
訳=羽鎌田学

ウィル・ボシが、フィンランドの首都ヘルシンキの東に位置するラップノールにあるナーレ・フッカタイバルが初登した世界初の9Aボルダー課題、Burden of Dreamsを初めて再登した。

当初はラップノール・プロジェクトとして知られていたこの課題は、3年以上の歳月をかけてナーレが2016年に登り、世界最難ボルダー課題となったものだ。第2登に成功したウィルは、そのグレードを9A/V17と確認した。

 
 
 
 
 
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ウィルは、シェフィールドにある斜度40度のインドアウォールに実物をレーザースキャンして作ったホールドをセットし課題を忠実に再現したレプリカを使って、10日間トレーニング。特に最初のムーブは、滑車システムを組み立て一旦は負荷を軽減して、練習した。彼はYouTubeの動画でトレーニングの進捗状況を共有し、最終的には3月にフィンランドへ旅立つ前に、レプリカ上で課題をほぼ2つのパートにわけ、各パートのムーブを繋げることには成功していた。

フィンランドでの初日、ウィルはまず最上部のムーブをこなし、続いて下のパートのムーブを試み、30分もたたないうちに全部で5つあるムーブを別々にではあるがほぼこなすことができた。彼が課題にトライする最初のセッションは、InstagramとYouTubeでライブストリーミングされ、ピーク時には2000人以上の視聴者を獲得した。

ウィルはトライの合間に、レプリカのムーブより簡単に感じるムーブもあれば、難しく感じるムーブもあるが、全体的に実際の岩のほうがフリクションが良く、ホールドの間隔も実物のほうが近いとコメントしている。また、ある時、彼はスマホのアプリを使って壁に対するホールドの傾きを大まかに測ったところ、40〜44度の間で異なっているようだったという。

やがて、以前課題にトライしたことのある中嶋徹とショーン・ラブトゥもウィルに合流し、一緒に課題に取り組むことになった。また、ウィルと一緒にレプリカでトレーニングしたことのあるステファノ・ギゾルフィも一時仲間に加わった。

3回目のセッションでは、ウィルは中嶋徹の見守る中、上段の3ムーブを繋げることに成功し、最初の核心である初手を2回連続でこなすこともできた。

続く数回のセッションでは、ウィルはトップアウトするムーブを確実にするためのヒールフックなど様々な方法を試した。また、テープを巻いて長持ちさせるなどいろいろな工夫を凝らして、指皮の減りとも戦わなければならなかった。

8回目のセッションでは、ウィルは初手以外のすべてのムーブをこなし、徐々にそれらをいくつか繋げることもできるようになってきた。11回目のセッションでは、事実上の最終ホールドまでムーブを繋げることができたが、右手でそれを確実に保持できなかった。

そして4月12日、ウィルは14回目のセッション、その日の最初のトライでこの課題を登り切った。レプリカと実物の岩の上で費やした時間を合わせると、合計で24日間この課題に取り組んでいたことになる。

完登直後、ウィルは次のように述べた。「今は信じられない気分です!今日は暑くて登れないだろうと考えながらボルダーに来たのですが、ウォームアップではすごく調子がいい感じがしました。完登トライでは、下部のムーブは流れるようにこなせて、前回のトライでは最終ホールドをつかみ損ねて落ちましたが、今回はすべてがうまく行きました!」

グレードについて、彼はこうコメントしている。「この課題は、レプリカを使って練習するところから最終的に完登するまでの経験全体を振り返り、私が今までで登ったことのあるすべての課題からステップアップしているものだと考えます。それは、今までで登ったどの8C/+からも大きくステップアップしているということです。よって、間違いなく9Aに値する課題だと思います!」

ウィルはBurden of Dreamsを、すでにAlphane(9A、第3登)、Honey Badger(8C+、初登)、スポートルートのKing Capella(9b+、初登)などが並ぶ、自身の高難度課題&ルートの初・再登リストに加えることができたのだ。

完登後のウィルへのインタビュー

トライの期間中、指皮がかなり限界に達していたようでしたが、最後の数セッションで、かなり早くまとまっていったようです。セッションとリカバリーの両面で、何か特に工夫をされたのですか?それとも、ムーブを洗練して確実にこなせるようになっていったからなのでしょうか?

ウィル:ここ2週間かなり着実に進歩できたと思います。おおむね最初の1週間で、指皮は切り傷だらけでボロボロになっていました。ですから、それを治すのに長い時間を費やしました。指皮が回復すると、セッション毎に手ごたえを感じるようになり、完登が近づいて来るのを感じました。大切なのは、指皮の状態を良く保つためにセッションを短くすることでした。

2手目はすべてを完璧にする必要があるとおっしゃっていましたが、2手目をより確実なものにするために何かを変えたのですか?それとも、そのムーブが固まるまで同じことを繰り返し試みただけですか?

ウィル:あのムーブをより確実にする方法を見つけるのに多くの時間を費やしましたが、結局はチャンスをつかむ必要があったのです。最後のセッションでは、そのムーブがうまくできなくなる可能性もありましたが、トライし続けたことで自分が強くなっていたので、少なくともチャンスをつかめる可能性もあったのです。確かに、そのことが僕にとっては間違いなく完登の核心でした。

直近のほとんどのビデオでは、2手目で左足のヒールフックを使わず、当初のムーブで登っていますが、どの時点でそのほうが良いと判断されたのでしょうか?

ウィル:ヒールフックを使うほうが簡単だと今でも思っていますが、成功の確率も低く、スタートから実際に繋げるのは難しいのかもしれません。いつまでもそこで落ち続けることになるかもしれません。最初は、ナーレのムーブはもっと低確率だと思っていたのですが、実は、結局のところ、そのムーブのほうがうまく練習することができるのです。

完登トライ時の感想をお聞かせください。最終的にはとてもスムーズにいったのでしょうか?

ウィル:セッションの最初のトライで完登したのですが、最初のトライということが間違いなく共通項でした。前回、最後のムーブで落ちた時も、最初のトライだったのです。完登トライは、素晴らしかったです。最初の4つのムーブを完璧にこなし、最後のムーブにフレッシュな状態で入っていくことができました。最後のホールドを危うく取り損ねて落ちそうになりましたが、なんとか持ちこたえることができました。まだ信じられません。

完登された時には、誰がその場にいましたか?トップアウトした時の感想は?

ウィル:ショーンとビデオカメラマンが2人いました。まあまあ大所帯ってところでしょうか。トップアウトは、私が経験した中で最も素晴らしいひとつになったことは間違いありません。岩の上に立って、満天の星空を眺めながら、信じられないような思いでいました。

完登まであと少しというところで、ライブ配信は検討されなかったのですか?

ウィル:少し考えてはみましたが、トライとトライの間の休憩時間がとても長く、記録を残すためには適切なカメラもあったので、ライブには意味がありませんでした。

Alphaneとはまったく別の性質の課題で比較できないかもしれませんが、例えば他のハードな課題と並べた場合、Burden of Dreamsはどのような位置を占めることになるのでしょうか?また、他の課題のグレード間で整合性をとるのに役立つのでしょうか?

ウィル:正直なところ、完登後の今、私はかなり混乱しています。以前はグレーディングにかなり自信があったのですが、今はそれほどでもありません。今まで登った課題の中で一番難しいことは確かです。また、9Aというステップを刻むには充分な課題だと思います。Alphaneよりも難しいですが、特別大きな差はないのかもしれません。同じグレードでも、Burden of Dreamsは正真正銘の一本で、Alphaneはソフトな一本という見方もできるでしょう。また近いうちにコメントするかもしれません。

第3登を達成するのは誰だと思われますか?

ウィル:確かに多くの運が必要な課題なので、言うのは非常に難しいですが、ショーンはまだここにいて、強そうなので、彼に賭けてみましょうか。

次の目標は?

ウィル:できれば、アメリカに行って、登りたいですね。アルコにあるExcaliburは、絶対に落としたいルートですが、今はもう暑過ぎます。

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