中島正人、Iron Knight(D14+/15-)を完登


Iron Knightを登る筆者

エプティンゲンはチューリヒ空港より、車で1時間程度のバーゼル州の小さな町である。 この町の森林公園の一角にある、世界的には稀なフリークライミングとドライツーリングが共存している岩壁がエプティンゲンの岩場だ。ここに今回の遠征の目的であるロベルト・ヤスパーの世界的に有名なルートIronman(D14+)とヨナス・アレマンが初登したIron Knight(D14+/15-)がある。

Ironmanについては、世界的にも女性で完登者は両手で数えられる程度の中、竹内春子が見事登り切った記事が Rock&Snow097号に掲載されるため、そちらに譲り、Iron Knightについて記録を残しておこうと思う。

このルートは既設ルートのDark Knight(D12-)を登り、Spiderman(D13)に繋げ、それをクライムダウンし、Ironman(D14+)に繋げると言う3つのルートを複合した比較的新しいルートで、2015年にヨナス・アレマンが初登することで、世の中に知られることになった。そのため、Ironmanほどの知名度は無く、記録も多くは無い。


Ironmanのライン


Iron Knightのライン

Ironmanが初手からFigure4/9が連続したムーブに対して、Iron Knightの登り始めは、強傾斜の中で確実にフットホールドを取りに行くクライミングとなった。また3つのルートを繋ぐ(しかも一部クライムダウン)ため、まともにクリップしていくと、とにかくロープが重い。そのため、クリップポイントは結構考えさせられる。結局、ルートの繋ぎ部分の2クリップは飛ばすことにした(それでも最終クリップは、かなり重かった)。

個人的なこのルートの肝は、Ironmanは2カ所のヒールによる大レストが可能な場所があるが、Iron Knightは1カ所に減るため、前半戦でいかに腕の負担をミニマム化し、1回のレストポイントで腕を回復させ、Ironmanの核心部を突破できるかになる。とはいえ正直、終了点直下の垂壁部でムーブを間違え、足が切れた瞬間は、腕の限界は近かったのもあり、詰んだ……と思ったが、今回の遠征で一緒に課題を取り組んだ、春ちゃんと橋本(翼)くんの声援に支えられなんとかRPすることができた。ともあれIronmanの登攀時間が19分に対して、Iron Knightは29分と10分近く長い戦いとなった。

核心は、Ironmanと同じ箇所だったと感じる。ただし、それまでに蓄積した疲労感はIronmanよりもある(ルート長も長いし、上下移動量も多い)。とはいえ、核心部分が変わらないが故のD14+/15-と言うグレーディングと感じた。

今回のスイス遠征では、春ちゃん、橋本くんには本当に助けられ、仲間のありがたさを改めて感じた本当に良い遠征だった。またこのメンバーで次の挑戦に向かいたい! (中島正人)

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