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ヨセミテ エル・キャピタンの「The Nose」を登るのに必要な道具とは? – 共同装備編

2019年2月8日

文と写真 = 石鍋 礼/CLIMBING-net編集部

前回の記事では、The Noseの概要と歴史を紹介しましたが、今回はThe Noseを登るのに必要な道具について、筆者自身が実際のThe Noseの登攀に使用した道具のリストを元に、共同装備の一例を紹介します。


ヨセミテのキャンプ場で各種ギアを整理中の筆者

カム

Black Diamond キャメロット X4 #0.1〜0.4 各2個
Black Diamond キャメロット X4 オフセット #0.1/0.2〜0.4/0.5 各2個
Black Diamond キャメロット X4 オフセット #0.5/0.75 1個
Black Diamond キャメロット #0.5〜4 各3個
Black Diamond キャメロット #5 各2個

今回、我々がThe Noseの登攀に使用したカムはなんと合計40個!クライミング能力が高ければ、数を減らすことができますが、ほぼすべてのピッチで人工登攀に頼らざるを得なかった我々にはこれだけの数のカムが必要でした。これだけ持っていっても、1ピッチが30〜45mと非常に長いので、似たようなサイズのクラックが続くピッチでは、下にセットしたカムを回収しながら、登らなければならないことも多々。

また日本ではあまり使わないオフセットカムが大活躍。ヨセミテでよくかけるの「ピンスカー」と呼ばれるハーケンの打ち跡は、外側に広がっていることが多いため、左右異なるサイズのカムローブが組み合わされたオフセットカムのほうがよく効きます。


オフセットカム 

これだけの数になるため、予算が許すのであれば、カムはキャメロット ウルトラライトなど、なるべく軽量なモデルで揃えたほうがベターです。

それぞれのカムにはカラビナを1つずつセットしておきます。我々は小型で軽量なCamp Nano 22を中心に使用しまいた。カラビナの色をカムの色と揃えておくと、カム選びの際に便利です。

ナッツ、カムフック

Black Diamond ストッパー 1セット
DMM オフセットナッツ 1セット
DMM ピーナッツ 1セット
DMM オフセットブラスナッツ 1セット
Moss Cam Hook 2個

ナッツは、カムよりもセットや回収に時間がかかるので、出番は少なめですが、ナッツしか決まらかったり、カムの数が足らず、ナッツを使わざるを得ないという場面も出てきます。

またチェンジング・コーナーズなど、The Noseの一部のセクションでは幅が1cmにも満たないシンクラックが出てきます。そういった場面で活躍するのが、オフセットブラスナッツやカムフック。これらの道具を幅の狭いクラックにセットして、じわりじわりと前進します。


オフセットブラスナッツ


カムフック

カムフックは日本では販売されていないようなので、米国のメーカーから直接取り寄せました。

ギアスリング

Metolius アジャスタブルギアスリング 1本
Mammut コンタクト ダイニーマ 60cm 1本

合計40個のカムなど、大量のギアを掛けるため、一見マルチループのスリングのほうが使いやすそうにも思えますが、ギアの振り分けがやりやすいシングルループのギアスリングをおすすめします。実際に両方を試したところ、シングルループのギアスリングのほうが自由度が高く、使い勝手がよいです。

Metoliusのギアスリングにカムやナッツ、ダイニーマのスリングにクイックドローやカラビナをかけ、たすき掛けにしました。

ロープ

リード用ダイナミックロープ 60m x 9.8mm 1本
荷揚げ用ダイナミックロープ 60m x 9.8mm 1本
荷揚げ用補助ロープ 18m x 6mm 1本

荷揚げ用に、ロープの伸びの少ないスタティックロープを使うパーティもいるようですが、ダイナミックロープでも問題ありませんでした。また耐久性の観点から、10mm以上のロープを好む人も多いようですが、9.8mmでも特に問題はなかったです。

荷揚げ用補助ロープは、横にトラバースするピッチで荷揚げする際に、ホールバッグが振られないように制御したり、アンカーにホールバッグを固定する際などに使用します。

クイックドロー

Blackdiamond Oz 8本
アルパインクイックドロー 6本

クイックドローもなるべく軽量なもので揃えたほうがよいと思います。アルパインクイックドローは、軽量なカラビナにMammut コンタクト ダイニーマ 60cm を組み合わせたものを使いました。

スリング

Mammut コンタクト ダイニーマ 120cm 1本
Mammut コンタクト ダイニーマ 180cm 1本
Mammut コンタクト ダイニーマ 240cm 2本

The Noseの各ピッチの終了点には、基本的に2本以上のボルトが設置されていますが、私たちは240cmのスリングを予めクワッドアンカー用に結んでおき、各ピッチの終了点で使用しました。

安全環付きカラビナ (個人用を除く)

以下の通り、安全環付きカラビナも大量に必要です。我々は軽量で使いやすいPetzl Attache 3Dを中心に12枚程度の安全環付きカラビナを使用しました。

各ピッチの出発点、終了点それぞれのアンカー用に各2枚、計4枚
ホールバッグのスウィベル 上下に各1枚、計2枚
補助ロープ接続用 1枚
ホールバッグ固定用 1枚
荷揚げロープ用 1枚
荷揚げデバイス用 1枚
その他予備 2枚

荷揚げデバイス、スウィベル

Petzl マイクロトラクション 1個
Black Diamond ローター 1個

荷揚げにはPetzl マイクロトラクションなどのセルフジャミングプーリーを使用します。また荷揚げ時、ホールバッグの回転によるロープのキンクを防ぐために、Black Diamond ローターなどのスウィベルと呼ばれる道具をロープとホールバッグの間にセットします。


Petzl マイクロトラクションとBlack Diamondローター

ホールバッグ、プープチューブ

Black Diamond ザイオン ホールバッグ 145リットル 1個
Metolius Waste Case (プープチューブ) 1個


ホールバッグ(上)とプープチューブ(下)

登攀中に必要な水や食料、ビバーク装備などはホールバッグと呼ばれる頑丈なバッグに入れて、荷揚げをしながら登っていきます。ホールバッグは荷揚げがやりやすいように、表面の摩擦が少なく、摩耗につよい強化ビニール素材で作られています。今回、我々は145リットルのホールバッグと70リットルのホールバッグを持参しましたが、70リットルサイズでは荷物が収まりきらず、145リットルのものを使用しました。

そして当然のことながら、エル・キャピタンのルート上にトイレはありません。小便については空中に向かって用を足すことが認められていますが、大便については、持ち帰りが義務付けられています。そこで活躍するのが、プープチューブと呼ばれる専用のバッグ。登攀中に用を足す必要がでてきた場合には、まず携帯用トイレを使って用を足し、しっかりと封をします。

そして封をしたものをプープチューブに入れ、下山まで持ち運びます。プープチューブは、登攀中はホールバッグの下にぶら下げておき、下山後、使用済み携帯用トイレを取り出して、廃棄します。


携帯用トイレ- ヨセミテ渓谷内のマウンテンショップ等で購入可能

調理器具

ジェットボイル フラッシュ ライト
調理器具にはコンパクトでカップも一体型になっているジェットボイルを共同装備として持参しました。

 

ちなみに、昨年The Noseのスピード記録を達成したトミー・コールドウェルとアレックス・オノルドが使ったカムやクリックドローなどはたったこれだけ。改めてこの二人の凄さを思い知らされます。

 
 
 
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今回はThe Noseを登るために必要な共同装備を紹介をしましたが、今回紹介したのはあくまで一例です。もっと実力のあるパーティならば、ギアの数を大幅に減らすことも可能です。

次回は個人装備の例を紹介したいと思います。

 

石鍋 礼

1975年生まれ。14歳でクライミングを始め、16歳で5.12a、19歳で5.13cまで登るも、大学卒業後、就職と同時に社会の波に揉まれ、クライミングから疎遠に。。。その後、20年のブランクを経て「ビッグウォールを登ってみたい」という夢をふと思い出し、2016年からクライミングを再開。2018年3月末でサラリーマンをやめ、5月に渡米。現地で1ヶ月半のトレーニング後、6月末に念願のThe Noseを完登。2018年8月からCLIMBING-net編集部にてアルバイト中。

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