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ヨセミテ エル・キャピタンの「The Nose」ってどんなルート?

2019年1月21日

文と写真 = 石鍋 礼/CLIMBING-net編集部

アレックス・オノルド、トミー・コールドウェルペアによるスピード記録の更新、倉上慶大氏によるオールフリー第5登など、近年クライミング界のニュースでよく耳にするヨセミテ エル・キャピタンのThe Nose、このルートは一体どんなルートなのでしょうか。

今回はThe Noseの概要と大まかな歴史を紹介します!

エル・キャピタンとは?

エル・キャピタンは、花崗岩の一枚岩でできた巨大岩壁で、米国カリフォルニア州のヨセミテ国立公園内にあります。

ヨセミテ国立公園は、年間430万人以上の人が訪れる一大観光地で、サンフランシスコからは車で約3時間半、ロサンゼルスからは約6時間。

エル・キャピタンの高さは約900m。東京タワーの高さは332.9m、東京スカイツリーの高さは634mなので、東京タワーの2.7倍、東京スカイツリーの1.4倍弱の高さです。

エル・キャピタン(El Capitan)という名称はスペイン語で、英語だと「The Chief」もしくは「The Captain」という意味ですが、ネイティブ・アメリカンがこの岩壁を現地語で「部族の長」や「酋長」を意味する言葉で呼んでいたことから、エル・キャピタンと呼ばれるようになったようです。

世界には、エル・キャピタン以外にも巨大な岩壁がたくさんありますが、他の大岩壁と最も異なるのは、なんといってもアプローチの近さ。エル・キャピタンの中央に位置するThe Noseの取り付きには、車を降りてからわずか15分程度の徒歩で到着します。ヘリコプターのチャーターや、長期にわたるキャラバンなしで、これほど簡単に取り付きまでたどり着ける巨大岩壁はエル・キャピタン以外には存在しません。

エル・キャピタンは、そのスケールとアプローチの近さから、エル・キャピタンそのものを目標とするクライマーはもとより、エル・キャピタンでトレーニングを重ねて、ヒマラヤやパタゴニアのビッグウォールを目指すクライマーなど、世界中の大勢のクライマーを惹きつけています。

The Noseはエル・キャピタンの初登ルート

現在、エル・キャピタンには70以上のルートがあると言われていますが、数々のルートの中で一番最初に登られたルートがThe Nose。(The Nose以前に、エル・キャピタン東端にあるイースト・バットレスというルートが登られていますが、長さも短く、頂上に直接抜けるルートではないため、一般的にThe Noseが初登ルートとみなされています。)

The Noseは、エル・キャピタン南面のほぼ中央部に走る数々のクラックを、振り子トラバースなどでつなげて登っていくルートで、現在でもエル・キャピタン上で最も人気があります。初登時は、34ピッチに区切られて登られましたが、現在では30〜31ピッチで登られるのが一般的です。

The Noseが初登されたのは、いまから約60年前の1958年。ウォーレン・ハーディングらによって、足掛け約1年半、のべ45日間のトライの末、完登されました。初登には、125本のボルトと、約500mのフィックス・ロープが使用されました。

第2登はロイヤル・ロビンズ、ジョー・フィッチェン、チャック・プラット、トム・フロストの4人。ウォーレン・ハーディングらの膨大なフィックス・ロープを使った包囲法による攻略に批判的だったロイヤル・ロビンズらは、事前にロープをフィックスすることなく、ワンプッシュ、7日間で完登しました。

このあたりの話は、ドキュメンタリー映画『Valley Uprising』でも詳しく描かれていますので、興味のある方はぜひご覧ください!

関連リンク:
【動画紹介】『VALLEY UPRISING』オフィシャルトレーラー
『Valley Uprising』 (Netflix/日本語字幕あり)

日本人初登は1976年

日本人によるThe Noseを初登がおこなわれたのは1976年。吉野正寿、林泰英ペアにより3ビバークの末、完登されました。日本人第2登は1978年に藤原雅一、新島孝司ペアにより4ビバークでおこなわれています。(山と渓谷社 「岩と雪」135号より)

オールフリーでの初登は25年前

The Noseがオールフリーで登られたのは今から25年前の1993年。アメリカの女性クライマー、リン・ヒルによって成し遂げられました。オールフリーで登った場合、グレートルーフ (5.13d) とチェンジングコーナーズ (5.14a) の2つのピッチが最大の核心と言われています。

The Noseのオールフリートライをするリン・ヒル

リン・ヒルによるオールフリー初登以降、25年経った今も、The Noseのオールフリーに成功したクライマーは、世界でわずか6人。

昨年2018年11月には日本の倉上慶大氏がオールフリーに成功した5人目のクライマーとなりましたが、倉上氏は世界で始めてロープソロでのオールフリーを達成しました。

関連記事:倉上慶大、The Nose オールフリーにソロで成功

ロープソロとは、ビレイヤーの代わりに、各ピッチの出発地点のアンカーにリードロープを固定して、ブレーキアシスト機能のあるビレイデバイスなどの用具で自らロープを繰り出し、クリップしながら単独で登るスタイル。ビレイヤーを使わないため、墜落時の危険性が非常に高まります。また各ピッチを登った後で、一旦懸垂下降し、出発地点のアンカーの回収、途中にセットしたプロテクションの回収、そして荷揚げのすべてをひとりでおこなわなければならないため、通常のスタイルに比べて3倍以上の労力がかかると言われています。

このオールフリーかつロープソロという倉上氏の記録は、世界中のクライマーを驚かせました。

The Noseのスピード記録

初登の際は、合計45日をかけて登られ、いまだにほとんどのクライマーが3〜5日をかけて登るThe Noseですが、現在のスピード記録はなんと2時間を切っています。

The Noseのスピード登攀が意識され始めたのは、1975年。ジム・ブリッドウェル、ジョン・ロング、ビリー・ウェストベイの3人パーティが、17時間45分という記録で、はじめてワンデイ(=24時間以内)での完登に成功しました。

1986年にはジョン・バーカーとピーター・クロフトのペアが10時間5分で完登。1990年にはハンス・フローリン、スティーブ・シュナイダーのペアが8時間6分で完登しますが、この頃から徐々に競争が激しくなっていき、同年ピーター・クロフト、デイブ・シュルツのペアが6時間40分という記録で始めて7時間切りを達成。1991年にはおなじくピーター・クロフト、デイブ・シュルツのペアが4時間48分で5時間切りを達成します。

その後、記録が大きく動いたのは2001年。ディーン・ポッター、ティミー・オニールのペアが3時間59分35秒の記録で4時間切りを達成。そして翌2002年には、ハンス・フローリン、平山ユージのペアが2時間48分55秒の記録で3時間切りを達成。その後、ハンス・フローリン、平山ユージペアは2008年に2時間37分5秒で記録更新に成功しています。

現在のスピード記録保持者は、トミー・コールドウェル、アレックス・オノルドのペア。2018年5月から数回のトライを経て、2018年6月6日に1時間58分7秒の記録で、ついに2時間切りを達成しました。

The Noseのスピード記録を語るときに欠かせないのがハンス・フローリンの存在。いままでにThe Nose自体を100回以上登り、過去に8回 The Noseのスピード記録を更新しているThe Noseの代名詞のようなクライマーです。そんなハンス・フローリンも、初めてThe Noseにトライをしたときは、出だしの4ピッチを登るのに13時間かかってしまい、敗退を余儀なくされたそうです。詳しくはハンス・フローリンの著書『On The Nose』に詳しく書かれていますが、こちらもおすすめの一冊です。(英語のみ)

関連リンク:
『On The Nose』Hans Florine (amazon.co.jp)

次回はThe Noseを登るのに必要な用具類について一例を案内したいと思います。

石鍋 礼

1975年生まれ。14歳でクライミングを始め、16歳で5.12a、19歳で5.13cまで登るも、大学卒業後、就職と同時に社会の波に揉まれ、クライミングから疎遠に。。。その後、20年のブランクを経て「ビッグウォールを登ってみたい」という夢をふと思い出し、2016年からクライミングを再開。2018年3月末でサラリーマンをやめ、5月に渡米。現地で1ヶ月半のトレーニング後、6月末に念願のThe Noseを完登。2018年8月からCLIMBING-net編集部にてアルバイト中。

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