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ヨセミテ エル・キャピタンの「The Nose」を登るのに必要な道具とは? – 個人装備編

2019年2月24日

文と写真 = 石鍋 礼/CLIMBING-net編集部

第1回目の記事ではThe Noseの概要と歴史を紹介を、前回の記事ではThe Noseを登るのに必要な共同装備の一例を紹介しましたが、今回は筆者がThe Noseを登る際に使用した個人装備の一例を紹介します。


リード用の全装備を装着した様子。総重量は10kg前後に(ロープの重さを含まず)

ハーネス

ハーネスは、カラダにフィットし、太腿や腰にかかる負荷をうまく分散できるものであれば、普段のフリークライミング用に使っているハーネスも使用可能です。

ハーネスには、レッグループの大きさを調整できるバックル付きのタイプのハーネスとそうでないものがありますが、レッグループに多少の余裕があれば、大きさを調整できないタイプも使用可能です。トイレや夜の就寝も、慣れてくればハーネスを履いたままこなせるようになります。

私はThe Noseの登攀の際、普段のフリークライミングで使用しているハーネスよりもパッドが分厚く、レッグループの大きさを調整できるタイプのハーネスを使ったのですが、結果としてはこれが失敗。The Nose用に用意したハーネスのウエストベルトの位置が自分の体型にあっておらず、荷揚げ中にハーネスのウエストベルトが肋骨を圧迫し、それ以降ずっと肋骨の痛みに苦しみました。次回チャレンジする機会があれば、パッドが薄くても自分のカラダによりフィットしているハーネスを使おうと思います。

ビレイデバイス

The Noseは1ピッチが30m〜45mと長く、1ピッチ登るのに1時間以上かかる場合もあるので、リードのビレイにはPetzl Grigriなどブレーキアシスト機能付きビレイデバイスを使用します。また万が一の敗退の際には、ロープ2本を使って懸垂下降する必要がありますので、ロープ2本で懸垂下降できるデバイスも持っていく必要があります。

私はPetzl Grigri 2とDMM Pivotを使用しました。

アブミ

The Noseでの人工登攀によるリードの際には、アブミと呼ばれる簡易はしごを使用し、カムやボルトにアブミを掛けながら登り、フォロークライマーはアッセンダーと呼ばれる器具にアブミを組み合わせてリードクライマーが固定したロープを登っていきます。

アブミには様々な種類がありますが、人工登攀初心者へのおすすめはアブミの最上段にプラスチックのバーがセットされているタイプ。The Noseの人工登攀中はアブミの最上段に立たなければ前進できない場面がたまにでてきますが、プラスチックのバーがないタイプのアブミだと荷重によってアブミがひしゃげてしまい、最上段に足を入れるのが困難です。ただこのタイプの難点はその重さ。フォローの場合は、アブミが重いとアッセンダーを引き上げる腕も疲れてくるので、アブミの最上段を使う必要のないフォロー用には軽いアブミのほうが便利です。


プラスチックバー付きのアブミ(左)


プラスチックバーがないタイプのアブミは荷重をした際に最上段の部分が変形し、足を入れにくくなる

The Nose登攀の際は、リードクライマー用にYates Bigwall Ladderというプラスチックバー付きのアブミを、フォロークライマー用にMetolius 8ステップラダーというやや軽量のアブミを持参し、リード交代の都度アブミを交換しながら登りました。

Yates Bigwall Ladderは日本国内では販売されていないようですが、ヨセミテのマウンテンショップ等で購入可能です。

デイジーチェーン

アブミはデイジーチェーンと呼ばれる道具を使って、ハーネスに連結をします。デイジーチェーンはリード中、誤ってアブミを落としてしまうリスクを減らすとともに、アッセンダーを使って固定されたロープを登る際にアッセンダーとハーネスの間の長さ調整にも使います。

デイジーチェーンにもいくつか種類がありますが、おすすめはダイニーマ製で長さが140cmのもの。長さが115cmのものだと、アブミを手の長さいっぱいまで十分伸ばすことができないので人工登攀の際に支障が生じます。私は最初115cmのものを買ってしまい、失敗しました。マルチピッチクライミングなどで便利なPASも、長さが足りないので人工登攀には向きません。

The Nose登攀の際は、Black Diamond 12mmダイネックスデイジーチェーン140cmを左右色違いにして使用しました。

フィフィフック

フィフィフックは人工登攀の際に、プロテクションとハーネスの距離を調整するために使用します。私はBlack Diamondのフィフィフックを使用しました。

アッセンダー

通常数日をかけておこなうThe Noseの登攀では、フォロークライマーはリードクライマーが固定したロープに、アッセンダーと呼ばれる道具を装着して登っていきます。またフォロークライマーが固定ロープを登ってくる間、リードクライマーは並行して、アッセンダーを使って荷揚げ作業をおこないます。そのため、アッセンダーはリードクライマー、フォロークライマーそれぞれが1組ずつ持参する必要があります。

私はPetzl Ascentionを左右1組セットで使用しました。

ナットツール

フォロー中にリードクライマーがセットしたギアを回収するためにナットツールも持参します。

ビレイグローブ

何日も連続で登っていると手のひらや指先がボロボロになっていくのでビレイグローブは必須です。私はリード中は素手で登りましたが、ビレイ中やアッセンダーでのフォロー中、懸垂下降中はずっとビレイグローブを装着していました。

The Nose登攀時は手のひらの部分が合成皮革でできたフィット感の高いグローブを使用しましたが、連日の登攀で穴が空いてしまいました。次回チャレンジすることがあれば、より耐久性の高い本革製のグローブを使用すると思います。


連日の登攀でビレーグローブに穴が空くことも

クライミングシューズ

The Nose登攀の際は、半日程度でリードとフォローを交代するのが一般的です。そのためクライミングシューズは半日程度、履き続けていられるものが必要です。また長時間アブミに立ったり、クラックの中に足をねじり込んだりする必要があるため、ある程度、底が固く、くるぶしが保護されるタイプがおすすめです。私はジャストフィットサイズよりも半サイズ上のSportiva TC Proを使用しました。ヨセミテではTC Proが大人気で、The Nose登攀中に出会ったクライマーのほぼ全員がTC Proを履いていました。

アプローチシューズ

The Nose登攀の際、フォロークライマーは固定ロープをアッセンダーで登るため、クライミングシューズは履かずに、より快適なアプローチシューズを履いて登るのが一般的です。私は普段から履いているSportiva TX4を使用しました。

チョークバッグ

The Noseのルート上には人工登攀に頼ることができず、フリークライミングでしか突破できない箇所もでてきます。そのため、チョークバッグも持っていったほうがよいと思います。

懸垂下降バックアップ用コード

The Noseの登攀で万が一敗退が必要になった場合には、巨大なホールバッグや大量のギアとともに懸垂下降をする必要があります。そのため、プルージック結び等による懸垂下降のバックアップが必須です。私はBeal Jammyという予めループ状に縫製されたコードを現地で購入し、使用しました。

安全環付きカラビナ

共同装備用とは別に、個人装備として安全環付きカラビナも4〜5枚程度必要です。安全環付きカラビナはセルフビレイ用に1枚、ビレイデバイス用に1枚、アブミとデイジーチェーン、アッセンダー等を連結するのに2枚程度使用します。

クライミング用ヘルメット

ヘルメットをしないでものすごい速さで登ってくるローカルクライマーもいますが、基本的にはヘルメットはしたほうがよいと思います。

シュラフ

The Noseなどのエルキャピタンのルートは、登攀中に雨が降ってくるとルート上が滝のような状態になると言われています。そして過去に、突然の降雨による低体温症に陥ってしまったことによる死亡事故が複数件発生しています。こういった状況に対処するため、エルキャピタン登攀時に使用するシュラフは、濡れに強い化繊のシュラフが推奨されています。私は濡れに強いと言われているファイントラック ポリゴンネスト6×4を使用しました。また万が一の降雨に備え、防水性の高いシュラフカバーも持参しました。

スリーピングマット

スリーピングマットは空気を注入する必要のないクローズドセルタイプのマットを使用するのが一般的です。The Nose登攀中のビバークは岩棚でおこないますが、空気を注入するタイプですと岩角にこすれて穴が空いてしまう可能性があります。またクローズドセルタイプのマットは、ホールバッグの内側に広げることで、緩衝材にもなります。私はリッジレスト ソーライト Sサイズを使用しました。

その他

The Nose登攀中は朝から晩まで強烈な日差しに晒される為、日焼け止めとサングラスは必携です。またヨセミテは非常に乾燥しており、唇や指もすぐかさかさになるため、リップクリームやハンドクリームも必要です。私は普段日本ではリップクリームもハンドクリームもほとんど使いませんが、ヨセミテ滞在中は毎日念入りに使用しました。

なお細かいことですが、ペースト状のものは容器がワンタッチキャップではなく、スクリューキャップになっているものがおすすめです。ワンタッチキャップのものですと、荷揚げ中、ホールバッグにかかる圧力でキャップが空いてしまい、中身が飛び出してしまうことも。我々が登っていたときも、ジッパー付きビニール袋の中に入れておいてワンタッチキャップ式の歯磨き粉の中身が飛び出してしまい、ビニール袋の中が悲惨な状態になってしまいました。

なお個人装備、共同装備ともに以下のサイトを参考にして、試行錯誤しながら準備を進めました。あわせて参考にしてみてください。
http://www.supertopo.com/a/The-Best-Yosemite-Big-Wall-Climbing-Rack-and-Gear-List/a10980n.html

そして繰り返しになりますが、今回紹介した装備はあくまで一例です。いろんな書籍やサイトを参考にしながら、自分たちの実力や予算に見合った装備を準備していくのも、クライミングの醍醐味のひとつだと思います。ぜひいろいろ試してみてください。

次回はThe Noseを登るためにおこなったトレーニングを紹介したいと思います。

石鍋 礼

1975年生まれ。14歳でクライミングを始め、16歳で5.12a、19歳で5.13cまで登るも、大学卒業後、就職と同時に社会の波に揉まれ、クライミングから疎遠に。。。その後、20年のブランクを経て「ビッグウォールを登ってみたい」という夢をふと思い出し、2016年からクライミングを再開。2018年3月末でサラリーマンをやめ、5月に渡米。現地で1ヶ月半のトレーニング後、6月末に念願のThe Noseを完登。2018年8月からCLIMBING-net編集部にてアルバイト中。

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