ウィル・ボシ、Return of the Sleepwalker(9A)第2登

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訳=羽鎌田学

2月19日、イギリス人クライマー、ウィリアム・ボシが、米国ネバダ州レッドロックスのブラック・ベルベット・キャニオンでダニエル・ウッズが2021年3月に初登しV17(9A)とグレーディングしたReturn of the Sleepwalkerを初めて再登した。

ウィルはReturn of the Sleepwalkerの再登に、同課題のスタンドスタートであるSleepwalker(8C+)を登ってからわずか1ヵ月足らずで成功したが、彼はSleepwalkerを8C+から8Cにグレードダウンすべきだと提案していた。

 
 
 
 
 
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ウィルがReturn of the Sleepwalkerの完登に成功したのはセッション12日目で、その前のセッションでは最後から2番目のムーブで3度フォールしていたが、そこはそれまでの最高到達地点ではあった。彼は完登までに、スタンドスタートで3セッション、シットスタートで9セッション、計12セッションを費やしたのだが、そのうちシットスタートでの2セッションでは雨が降り出したため、すぐに登るのをやめたという。

Return of the Sleepwalkerの完登により、ウィルは、3本の9A課題を登ったわずか2人のうちの1人として、ベルギー人クライマー、シモン・ロレンジと肩を並べた。

ウィルにとってのその3本の9A課題とは、2022年10月に登ったAlphane(スイス、キロニコ、2022年4月ショーン・ラブトゥ初登)、2023年4月に登ったBurden of Dreams(フィンランド、ラップノール、2016年10月ナーレ・フッカタイバル初登)、そして今回登ったReturn of the Sleepwalkerである。(シモン・ロレンジにとっての3本は、ウィルも登ったAlphaneとBurden of Dreamsに加え、シモン自身がフォンテーヌブローで2021年2月に初登したSoudain Seul*)

ウィルは、Return of the Sleepwalkerを最終目標、スタンドスタートのSleepwalkerは中間目標として、1月中旬にラスベガスに向かった。Sleepwalkerのセッション初日にはすべてのムーブを個別にこなすことができ、セッション2日目にはスタートから繋げトライを始め、セッション3日目の最初のトライで完登してしまった。

そして次のセッションからはReturn of the Sleepwalkerのトライを開始し、自身にとっての核心は4手目の左手ガストンであることに気づき、初登者のダニエル・ウッズとはわずかに異なる手順を組み立てた。セッション5日目には、ウィルは課題を中間部で重なり合う前半と後半の2つのパートにわけて、それぞれのパートのムーブをすべて繋げて登ることができた。その前半のパートでは、シットスタートからスタンドスタートの3手目である右手ピンチまで繋げることができたのだ。

セッション6日目から、ウィルは自らSleepwalkerプラスと名付けた、Sleepwalkerをもう少し低いところから登り始めるバージョンにトライし始め、最終的には9日目のセッションでこのバージョンを登り切り、その時点から本来のスタート地点からのトライを開始した。

セッション10日目にはウィルはスローパーを取りに行くムーブで4度落ち、セッション11日目にはそのスローパーを4度捉えて、その後3度リップまで手を伸ばすことができたが、ホールドを保持することができずにフォール。そしてセッション12日目の最初のトライでボルダーのトップに立ち、彼はReturn of the Sleepwalker(9A)の初の再登者となったのだ。

完登直後に、ウィルは次のようにコメントした。

「ラスベガスに来たのはいいのですが、私は砂岩ではあまり登ったことがなかったし、Sleepwalkerは一見私のスタイルの課題ではなかったので、今回のツアーの結果がどうなるかまったく分かりませんでした。でも、Sleepwalkerをわずか3日で再登できたことには、自分自身すっかり驚いてしまいました。そんなこともあり、またツアーにはまだまだ長い時間が残っていたので、Return of the Sleepwalkerの完登にはかなり自信がありました。

完登直前のセッションでは、すべてがうまくいきました。ですから、次には登り切る自信はあったのですが、天気予報は嵐の接近を告げ、あまりかんばしいものではなかったので、次のセッションまでに1日しか休むことができませんでした。ですからその日は前回の疲れがまだ残っていて、完登トライをするかどうか最初は迷っていました。

でも、ウォーミングアップをすると、体の動きも素晴らしかったので、トライしてみることにしました。最初のトライでスローパーまでは完璧に進みましたが、次のスロットへのムーブでミスをして、危うくそれを取りそこねるところでした。しかし何とか態勢を立て直し、最後のハードなムーブも完璧に決めることができました。すべてを足元にして最後のスラブを登るのは信じられない気持ちで、ボルダーのトップに向かって登り出す前に少し息を整えなければなりませんでした」

グレードに関しては、ウィルは次のように語った。

「グレードは、スタンドスタートのSleepwalkerは8C(V15)しかないと依然として考えていますが、シットスタートは9A(V17)のままで十分だと思います。これまでに登ったこのグレードの他の課題と比べた場合、Return of the Sleepwalkerはグレードの範疇の最下部に位置すると思います。Burden of Dreamsのほうがより難しかったですが、そもそもスタイルが全く異なります。また、Return of the Sleepwalkerは、おそらくAlphaneよりも難しいとは思います。

現時点では、8C+と9Aの区分についてはあまり自信がありません。その区分を正しく理解するには、ある程度の時間がかかり、このレベルを登るクライマーのより広範なコンセンサスが必要になると考えます」

現在、ウィルはヨーロピアン・プロジェクトとする、イタリア、アルコにあるステファノ・ギゾルフィ初登の9b+(5.15c)ルート、Excaliburとチェコ、モラフスキー・クラスにあるTerranovaの2つに焦点を当てているが、後者のアダム・オンドラが2011年に初登したボルダー課題は再登されることもなく未だ8C+のままである。

「次のプロジェクトは状況次第ですが、アルコにもう一度行ってExcaliburを仕上げるか、チェコのブルノ市近郊のモラフスキー・クラスでTerranovaにもっと時間をかけてトライしようと考えています。また、スコットランドで新しいラインを見つけるのに時間を費やしたいとは思っていますが、なかなか天気がそうさせてくれないのです」

*Soudain SeulはV17よりV16と表記されることのほうが多い

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